多くの方が、20歳代に社会人となり、給与をもらって生活を始めます。そうなると、学生時代とは違い、自分の稼いだお金で生活し、自分の生活に責任を持ち始めます。
入ってきたお金全部を使うのではなく、急な何かのため、そして将来の自分や家族の生活のためにも、貯蓄を意識すると思います。
昔から、「若い時の経験は人生の宝になるから、お金を出し惜しまずにどんどんチャレンジしていこう」と言われたものです。近年でもその通りだとは思いますが、今の時代は若い時からしっかりと資産形成を考えておくこともとても大切なことだと思います。
日本の年金制度は、少子高齢化の影響を受け、年金受給者が増えて支払者が減少するとても厳しい時代に突入しています。今の現役世代の将来の年金受給額は、支給金額に制限を受ける可能性が高いことから、その不足分は自分で手当てをしておかなければなりません。それでは、20代はどのようの資産運用・形成を始めればよいのでしょうか?
基本的な投資運用商品に関して
すべての運用商品の中で一番安心なのは銀行預金です。年利0.1%以下と利息はとても低いですが、元金が保証されるからです。しかし、これでは毎年10年間利息をもらっても1%にしかなりません。
資産を増やすためにはやはりリスクを取っても、もう少しリターンをよくする投資が必要です。そのためには、債券、外貨預金、投資信託、株式、不動産など代表的な投資商品に投資していく必要があるでしょう。ここでは、代表的な運用商品を紹介していきます。
①預金
銀行の預金には、は普段の出し入れに使う普通預金と一定の期間を拘束する定期預金があります。給料の入金、光熱費やクレジットカードなどの引き落としなど、生活に直結するのが普通預金です。
定期預金は貯蓄性のある預金で、普通預金より金利は高いのですが、現状の低金利の下では銀行によって差がありますが利息は年率0.1%にもなりません。
預金はいざという時の資金のリザーブとして、また日々の決済用として使用するのが妥当と思われます。
②債券
債券には国債、企業が発行する社債、普通社債より支払い順序が劣後する劣後債、一定の条件下で株式に転換する転換社債型新株予約権付社債、新株予約権部分と社債部分を分離譲渡できる新株予約権付社債などがあります。
一般的には国債、通常の社債が投資の中心となります。これらの債券は発行企業の格付け、支払いの優先順位によって金利などの条件が変わります。また既発の債券は発行時の金利などの条件によって価格が変動します。
例えば発行時に金利が高く設定されていて、売却時に市中金利が低くなっていると現状の金利水準に合わせて売買されますから、表面金利は高いですが価格は上がっているので実際の金利は低くなります。
また、債券は金利が高い時に買うほうがメリットがありますが、満期まで保有し続ければ市中金利に関係なく期日までの金利を享受することができます。
③外貨預金
日本円のほかに、米ドルやユーロなど、世界にはいろいろな通貨があります。それぞれその国の経済状況や金融政策によって、為替レートは日々変化します。
世界の基軸通貨は米ドルが中心ですが、その次にユーロとなりますので、日本円だけでなくそれらの通貨を保有することはリスク分散にもなります。
また、新興国の通貨は乱高下が激しいデメリットもありますが、長期的にみると国の成長に合わせて徐々に通貨も強くなってきますから、成長力のある国の通貨は上昇することが期待できます。
さらに世界の株や債券などの商品は基軸通貨の米ドルで発行されているものが圧倒的に多く、米ドルを保有することで、運用の選択肢を多く持つことが可能となります。
また、各通貨によって金利はまちまちですが、一般的に新興国通貨は金利が高く、現状では先進国の中でも米ドルは金利が高い傾向にあります。
運用としては生活圏通貨の円と米ドルを一定レベル保有して、その時の状況に応じて魅力のある通貨を一部保有するなどの戦略は良いと考えます。
④株式
株式は投資において最も市場が大きく、かつ選択肢が多い投資商品です。証券取引市場は、日本の東京証券取引所以外にも世界中に市場があります。主な市場は米国のニューヨーク証券取引所、ナスダックの他、香港、上海、ロンドン、パリ、フランクフルトなどです。米国などの大きい海外市場には日本の証券会社を通じて、非居住者として投資をすることができます。
株式と預金の大きな違いは、投資元本が保証される投資ではなく、時には損失が生じるということです。しかし、企業の成長とともに利益が上がり、株価に反映するので、一企業だけでは無く市場全体をとらえていけば、リスクは軽減出来て、長期的にみれば上昇する確率は高くなります。
株式は長期投資で見なければなりませんが、年率10%内外を目指したい投資家であれば、どうしても株式投資をポートフォリオの中に組み込むことが必要になってきます。
⑤不動産
不動産は、日本人にとって最も身近で安心感があり投資のしやすい資産の一つと言えます。
戦後日本の急激な経済成長とともに、不動産もその流れで上昇してきました。バブル崩壊時には、大きく値下がりはしたものの、長い年月を経て、近年は底堅く推移しています。
そもそも、不動産は生活に密着しています。特に居住用不動産であれば、自分がいくらで家を借りているのか、また、自分がいくらで家を買ったのかを実体験している方が多く、相場の感覚を掴みやすいので、投資もしやすいでしょう。
日本の金融機関は、不動産融資には比較的積極的に取り組んでいるので、流動性のある大都市近郊の物件を担保にできるのであれば、掛け目も高く、かつ低金利で不動産投資ローンを調達することもできます。つまり、自己資金が少ない方でも、ある程度の頭金があれば投資することができるということです。
20代が資産形成のために考えるべきこと
確かに、投資運用も大切ですが、最も大切なのは就労による収入をしっかりと確保して、将来的に給与収入が上昇するように努力することです。
投資はあくまでその後のことで、投資を本業にすることはやめたほうがよいと思います。よく〇億円稼いだという話も聞きますが、これはごく一部の方ができたことで、万人が投資で安定的に稼ぐことは難しいでしょう。
毎年コンスタントに短期投資で稼いでいくことは、容易なことではありません。多くの金融機関のプロのディーラーが、日々努力をしていますが、すべてのプロディーラーが成功しているわけではありません。
ましてや個人投資家は、一日中相場を見ていることができませんので、プロのディーラーにかなうあわけがありません。
本業で稼いだお金をいかに有効に運用して増やしていくかという方針で投資していくべきです。
その中で一番重要なのは長期投資です。20代の最も有利な点は、資金を使うまでに時間があり超長期に投資ができるということです。
超長期は毎年の成績が求められるプロのディーラーにはできないことであり、高齢者にもできないことです。この最も有利な点を利用してそれを軸に運用を考えていくことが重要でしょう。その中で、最も良いと思われる分野は株式と不動産と考えています。
ファンドマネージャーから見た20代からの株式・不動産投資
ここでは、株式と不動産、それぞれの分野で、どのように投資していけば、安定性が高く、高い確率で利益を上げていけるのかを解説していきます。
①株式投資
20代から始める株式投資では、投資時期と投資対象を分散させるのが良いでしょう。また、投資期間については、投資資金を使い始めるのは60代と仮定し、約30年間の超長期投資ということで考えます。
それでは、その間にどのように投資をしていくのがよいのでしょうか。
20代であれば、当然、手元資金は少ないので、少ない金額からの積み立てから投資からスタートするのが良いでしょう。
大半の人は、まだ勤続年数も短く、給与もそれほどは高くないと思いますが、その給与を計画性をもって管理して、毎月少しでも定額で投資できる資金を用意してください。
因みに私自身は金融機関に就職した新入社員の時に、寮費や食費などを差し引くと、手元に残る金額は毎月約8万円で、そのうち4万円を貯蓄に回しました。当然、相当苦しい生活なので、ボーナスを楽しみに生活していたような気がします。幸いにもあまりに仕事が忙しく使う暇もなかったので、何とかやっていけました。
そのうちに徐々にではありますが、給与が上がったので生活は楽になり、毎月の貯蓄額も増えていきました。その資金は当初は株式や貯蓄になっていましたが、30代に入り独立するにあたっては事業資金となりそのおかげで事業がスタートできたと今は思っています。
横道に反れましたが、毎月の投資資金を確保したらどう投資するかが重要です。もちろん成長の可能性がある企業の株式に投資するのも悪くはないと思いますが、超長期で考えるならばなるべく分散して多くの安定した銘柄に投資すべきだと思います。
とてもつまらない投資とは思いますが、株式指数のインデックスに連動する投資をお勧めします。これは過去の実績を見ると(区切る場所にもよりますが・・・)、平均すれば、年間数パーセントは利益が上がっているからです。
インデックスに連動する投資としては、ETF(上場投資信託)を活用するのが一番だと思います。例えば、米国の代表的な500銘柄の加重平均の指数を算出したS&P500という指数に連動するETF、また日本市場の代表的な225銘柄の加重平均の指数を算出した日経225などに連動するETFなど、他にも世界の主要な指数に連動するETFが多くあります。
これらを毎月定額でコツコツと投資することで、高い時には購入できる口数が減りますが、安い時にはより多くの口数が購入できるので、平均して一定の価格で購入することができます。この投資時期の分散を利用しておけば高値掴みや安い時の買い逃しなどを防ぐことができます。
このように超長期、投資時期と投資対象の分散を行うことで世界や各国経済の成長とともに株価の成長を享受できることが可能になります。
②不動産
日本の不動産の価格は、2012年末から始まったアベノミクスの金融緩和政策とともに上昇し、現在も安定した価格推移になっています。
今後も安定した価格推移となるには、日本銀行が金融緩和を持続することが前提とはなりますが、現状では大きく分けて二つの要因で緩和を止めることは難しいと考えられます。
一つ目は、金融緩和を緩めて資金供給を減らすことで、国債の金利が上がってしまうことが挙げられます。ご存じのように日本国債の発行残高は1,000兆円に近づいており、もし金利が上がってしまうと国の金利負担が増え、国の財政を圧迫するからです。
二つ目は、これだけの金融緩和をしても物価指数は大きく上がらず、日本銀行が金利を上げて、資金供給を減らす必要がないからです。
そう考えると、日本の国債の信用度が落ちて、その金利が上がってしまい、結果、市中金利に跳ね返ってくるような事態にでもならない限りは、しばらくはローン金利も大幅に上昇することは予想しにくいでしょう。
今の都心近郊のワンルームマンションの家賃利回りは表面で4~6%/年、経費を差し引いたネットで3~4%ぐらいかと思います。ローンの調達金利が1~3%である以上は、投資していることでフローで利ザヤが発生しますので、投資として魅力があると思われます。
もちろん不動産は、地域や物件内容によって大きく変わりますので、その物件を選定して投資する必要がありますが、この超低金利の日本においては、不動産投資は、投資で利ザヤが稼げる数少ない分野です。
因みに金融機関の不動産投資ローンは、ほとんどが元利均等返済なので、毎月の利ザヤは元金返済にも充当され消えてしまいますが、ローン完済後は、家賃収入から、経費を差し引いた金額がそのまま収益になりますので、将来の収入と資産ということになります。
その点では、20代からでもローンをしっかりと活用して優良な物件に投資しておくことは将来の資産形成として有益な1つの方法と考えられます。
まとめ
社会人となった20代の方も、老後のことを考えて、資産運用・資産形成を行わなければならない時代となっています。投資運用商品は、預金を始め、債券や株式などがありますが、資産形成のためには、ある程度のリスクがあっても、投資をしないとなりません。
20代であれば、まだ、老後まで30年程度の時間がありますので、超長期投資が可能です。毎月手元に残るお金から、少しづつでも積立投資を行うようにしましょう。超長期投資には、分散投資がお勧めです。特に、株式の指数に連動したETFなどは、円だけでなくドルでの投資も可能ですので、通貨分散・銘柄分散にもなります。
不動産投資もさまざまなメリットがありますので、資産形成の一環として、立地の良い都心部の物件を低金利の不動産投資ローンを活用して購入することも、老後に備えた資産形成につながります。
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