資産管理会社とは、不動産や株式、証券といった保有する資産の管理を目的として設立する法人です。
個人の資産を管理する法人であるため、「プライベートカンパニー 」とも呼ばれています。
主に投資家や富裕層が設立する会社であり、基本的に資産管理以外は行いません。
資産管理会社を設立する6つのメリット
資産管理会社を設立するメリットには、以下の6つが挙げられます。
メリット1:節税効果
資産管理会社を設立するメリットには、まず節税効果が挙げられます。
不動産や株式、証券といった資産を個人で所有する場合と、法人として所有する場合とでは、不動産所得や株式の配当金などに課税される税金の種類や税率が異なります。
個人に課せられる税金は、所得税や住民税などで、累進課税の適用となるため、所得が増えるほど税率は高くなり、最高税率は45%になります。
住民税のうち所得に応じて課税される所得割は、課税所得に対して一律で10%です。これらの所得税と住民税を合わせると、最も高い場合は税率55%にもなります。
一方、法人に課せられる税金には、法人税や法人住民税などがあります。
法人税の税率は、最大23.2%です。法人住民税を含めても30%程度の税率になるため、課税所得によっては、法人化による節税効果が見込めます。
メリット2:所得の分散
資産管理会社を設立した場合、親族を役員に就任させて役員報酬を支払い、所得を分散させることが可能です。
たとえば4,000万円の所得金額に対しての税率は45%ですが、この所得を3,000万円と1,000万円というように分散させることで、それぞれの税率は40%、20%となり、節税効果が得られます。
また、役員報酬は給与所得として扱われるため、給与所得控除が適用されます。さらに、役員報酬は経費としても計上できるため、法人税の負担を減らすことも可能です。
メリット3:必要経費の範囲
資産管理会社を設立して法人化した場合、必要経費として扱える範囲が広くなります。
個人の場合、事業に直接かかる費用のみが経費となりますが、法人の場合は、一部の間接経費も経費として認められます。
たとえば、車両関連費にあたるガソリン代について、個人事業主の場合は、事業利用とプライベート利用の割合を算出して、事業利用の分だけを経費に計上します。
これに対して法人の場合は、車を法人名義にすることで、原則全額を経費として計上できます。
メリット4:欠損金の繰越控除の期間延長
欠損金の繰越控除の期間が、青色申告を行っている個人事業主は最長3年であるのに対し、法人では最長10年と長期に延ばせます。
欠損金とは、その年の収入から必要経費などを引いた金額がマイナスになっている赤字金額のことをいいます。
欠損金の繰越控除とは、事業で損失が発生した際に、翌年以降に繰り越し、所得から控除できる制度です。赤字金額を翌年以降の黒字と相殺することで、課税所得を減らし、法人税の納税額を抑えることができます。
メリット5:スムーズな相続
資産を資産管理会社で保有しておくと、贈与や相続をスムーズに行えます。
これは財産を資産管理会社の株式に一本化できるため、株式の分割のみを考えればよいからです。また、資産を管理会社に移しておくことで、相続や贈与に伴う登記費用は発生しません。
メリット6:社会保険への加入
資産管理会社の役員に就任すると、給与所得者となるため、社会保険に加入できるようになります。
社会保険に加入することで、将来、厚生年金の受給が可能です。厚生年金は、個人事業主が加入する国民年金よりも受け取れる額が多くなり、親族も一緒に加入できます。
その他
マイクロ法人
資産管理会社をマイクロ法人として設立することは可能です。
マイクロ法人とは、役員が1名で経営する会社をいい、かつての有限会社と同じ要素を持っています。
会社員が資産管理会社を設立する時の年収について
会社員の給与と副業を合算した個人の課税所得が700万円を超えた場合は、個人の所得税(住民税)率の方が、会社の法人税率を上回るため、資産管理会社を設立するメリットが大きくなります。
資産管理会社設立における注意点
注意点1:設立コスト
設立手続きを自分で行う場合、株式会社の設立を自身で行った場合は約25万円、合同会社の設立を行った場合には約10万円の費用がかかります。
注意点2:維持コスト
資産管理会社の会計は、個人で行う確定申告よりも複雑になるので、税理士や公認会計士等の専門家へ依頼をすることになります。
資産管理会社への資産移転の際にもコストがかかります。
まず資産を譲渡した個人に譲渡所得税がかかります。また資産を管理する会社(法人)が資産を所有する時点で登録免許税、不動産取得税、登記費用などが掛かります。
注意点3:保有資産を個人で自由に使用できない
資産管理会社で管理される土地や建物、お金や株式などの資産は会社の所有物となるため、個人で自由に使用できません。
注意点4:その他
資産を個人で使用するには、会社からオーナー個人に対して「役員報酬」や「配当」という形で資産を移転させなければなりません。
その場合、役員報酬や配当には所得税が課税されます。また、役員報酬の金額は、取締役会または株主総会の決議によって決定する必要があるので、コストや時間もかかります。
資産管理会社設立の手順
資産管理会社設立時の手順は以下となります。
その1:会社の基本情報を定める
資産管理会社を設立するにあたり、まずは以下の会社の基本情報を定めます。
- 社名
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金
- 決算月
会社を設立する際は、どのような事業を行うかを明確にし、事業目的は定款に記載します。
定款とは、会社の基本情報をもとに作成される「会社のルール」で、会社設立時には、必ず作成します。
罰則の対象となるわけではありませんが、基本的には定款に定められていない事業を行ってはなりません。
また、定款に定められる事業目的は「営利性」「明確性」「適法性」の3つがポイントです。
その2:必要なものを用意する
会社の基本情報を決めたら、設立に必要な以下のものを用意します。
- 印鑑:会社実印(代表者印)、銀行印、角印(社印)、ゴム印
- 定款
- 登記申請書
- 就任承諾書
- 開業届
- 青色申告承認申請書
その3:法務局へ登記申請を行う
法務局へ登記申請書類を提出すると提出後、1~2週間を目安に設立登記完了となります。