2021年初旬に東京都港区で賃貸中の区分所有マンションに投資しました。物件をどのように探し、分析して、購入に至ったかを紹介していきます。
投資の目的と今回購入した物件の概要
投資の目的
資産ポートフォリオが株式や債券などの金融商品に偏っていたことから、分散投資の必要性を感じていました。更に、インフレヘッジや円資産の安定運用も可能なことから、現物不動産に投資することを決めました。
資産運用を目的としていたので、以下のような物件に投資したいと考え、以下の条件を満たすのは「都心の区分マンション」が適しているという結論に至りました。
- 長期保有が可能な物件
- キャッシュフローが安定している物件
- いざという時に換金しやすい物件
購入した物件の概要
- 所在地 東京都品川区高輪(地下鉄駅徒歩3分)
- 金額 5,300万円
- 利回り 約3.5%
- 面積 55㎡
- 築年数 18年
- 間取り 1LDK
1.物件探しと基準設定
物件探しは、インターネット・業者からの紹介・新聞チラシなど、さまざまなルートがありますが、情報が早く、手軽に多くの物件を見ることができるので、今回は、インターネットでSUUMO、野村不動産のノムコム・プロ、東急リバブルの投資用不動産のサイトなどを活用しました。
その中で興味がある物件の案内予約をして現地を見せてもらったり、賃貸中であれば、部屋の中には入れないので、自分で外部から見てきたりしていました。
最初は、気になった物件を手当たり次第に検討しましたが、物件を見ながら、段々と選定基準を作り、途中から選定基準に沿ってスクリーニングし、効率的に物件探しをすることができました。
私が決めた購入基準とその理由は以下の通りです。
基準1:利回り基準
投資ですので、まずは利回りが基準となります。不動産の値上がりによるキャピタルゲインは期待せずに、今回は物件のキャッシュフローのみで以下の取り設定しました。
- 表面利回り:4.5%以上
- ネット利回り:3.3%以上
ネット利回りの計算方法は、人によって少しずつ異なりますが、今回は以下の計算式を用いています。
ネット利回り=(家賃-管理費・修繕積立金-固定資産税)÷(購入価格+諸費用)
表面利回り・ネット利回りとも、おおよそ市場の平均水準です。
基準2:立地
次に立地です。長期にわたって賃貸需要が高いと期待できる、いわゆる都心5区(港区、渋谷区、新宿区、目黒区、世田谷区)で駅から徒歩5分以内と、厳しめに設定ました。
基準3:価格帯
購入する物件の価格帯は、4,000~6,000万円としました。
基準4で設定した面積以上の物件ですと、都心5区で更に他の基準を満たそうとすると、4,000万円以内のものは出てきません。
また、何かあった時に売却しようとする場合、6,000万円を超えてしまうと、ローンの支払いの関係で、購入者が年収の高い方に限定されてしまうので、何とか、5,000万円台で抑えたいと考えました。
基準4:面積と間取り
面積は50㎡以上で1~2LDK(ワンルームは不可)としました。
こちらも、もしもの時の売却を想定し、50㎡以上で空室となれば、自分で住みたいという需要も取り込め、更に、住宅ローンも利用しやすいというメリットがあります。
間取りに関しては、在宅ワークも増えていますので、なるべく部屋数が多い方が賃貸需要が高いと考えました。
基準5:築年数と自然災害リスク
地震や洪水などの自然災害リスクを避けるため、築年数25年以下、更に、ハザードマップにかからない地域の物件としました。
新耐震基準である1984年頃以降であれば地震のリスクはある程度回避できますが、あまり古いと、将来的に金融機関の担保評価額が落ちてしまう懸念があるので、築年数は25年までとしました。
基準6:建物と管理状況
分譲業者(デベロッパー)及び建設業者(ゼネコン)が東証一部上場企業またはそれに準ずることを基準としました。
最近は建築費が高騰していることから、コスト優先でゼネコンを決める傾向にあり、比較的値段が安い中小ゼネコンが手掛ける新築物件が増えてきています。
しかし、長期にわたって保有するのであれば、信用力の高い業者が開発・建築・分譲した物件の方が安心感があります。
また、管理状況で建物の様子は大きく変わって来ます。管理状況を外からチェックするとともに、検討が進んでくれば、管理組合の決算の状況についても確認し、財務状態が良好であることも基準としています。
2.物件調査に関して
上記の基準に概ね沿った物件が見つかれば、まずは、物件資料を取り寄せたり、物件を実際に見に行き候補物件を絞って行きました。実際に行った物件調査方法を紹介していきます。
検討方法1:現地調査
自分が住まないからと言って、現地を見ずに投資をすることはできません。書類だけでは分からないこともあります。まずは、現地調査です。
空室、または売主が居住している場合は、部屋の中を見ることができるので、室内の内見の他、共用部分である、エントランス回り、駐車場、ゴミ置き場、外構などを案内してもらいました。
賃貸中の物件は、部屋の中には入ることができませんので、室内の設備機器(エアコン、給湯器など)の交換有無、その他、修繕などの履歴を不動産業社から口頭で聞き、現地では、上記と同様の共用部分を確認しました。
共用部分の掃除や修繕など、管理状況についても細かく確認しました。
検討方法2:書類調査
書類調査については、大体、以下の資料を仲介会社などから取り寄せて確認しました。
部屋の間取り図
部屋の向き(東西南北)、水回りの配置、部屋の導線などについて確認しました。
コロナ禍で在宅勤務の人が多くなり昼間に家にいることもあるため、以前に比べると、部屋の向き、部屋数など、使い勝手についても注意が必要でした。
建物の敷地図
道路付けや、敷地のどの方向に大きな建物が建つ可能性があるかなど、部屋からの眺望や日当り風通しが確保できるかどうかを確認しました。
謄本
謄本を確認すれば、これまでの所有者の変遷を確認することができます。抵当権の金額を見れば、だいたいの売買金額も類推することができます。
あまり頻繁に売買がされている物件は何かしらの理由があるかも知れないので、避けるようにしました。また、現所有者の取得経緯や売却理由についても仲介会社を通じて確認しました。
分譲当時の資料(存在すれば)
分譲時のパンフレットは概要がわかりやすく掲載されているのでとても役立ちます。もし価格表もあれば分譲時の価格がわかります。
また、当時分譲したデベロッパーがその物件についてどこを特徴として(例えば駅に近いなど)宣伝したかも、その内容でよくわかります。
他にも分譲したでデベロッパーと建設会社もわかります。総戸数と各階の部屋の配置図もありますし、室内もどのような設備にしたかも書いてあります。他にも参考になることがいろいろ記載されているので、大変有意義な資料です。
賃貸借契約書(賃貸中の場合)
賃借人の氏名など、個人情報は、通常、消した状態で提示されますが、どのような条件で賃貸しているか、いつから賃貸されているかがわかります。
例えば、15年間ずっと入居していて、設備や壁紙などを取り換えていない場合ですと、退去となれば、次の入居者募集にあたり、所有者の負担でエアコンなどの設備や壁紙などを交換しなければなりません。交換費用は多額になる可能性もあります。
また、その賃借人の背景(勤務先、年収、勤務歴、家族構成、保証人)なども、できるかぎり聞くようにしました。
修繕、改装があった場合はその履歴
購入前にどこまで設備交換、修繕などがされているかがわかれば、購入後、どのくらいの期間で設備交換、修繕などの費用が発生するのかが予想できることから、修繕履歴に関してはわかる範囲で仲介会社に調べてもらいました。
長期修繕計画書・組合決算書
マンションの管理組合で長期修繕計画書・組合決算書を作成しています。
マンションによっては、当初の修繕計画があまく、修繕積立金が不足していたり、外部から借り入れているケースもあります。
これらは、すべて所有者の負担になりますので、長期修繕計画書が妥当で、管理費・修繕積立金が急に上がることが無いか、組合の財務諸表が良好な状況かなどを確認しました。
3.候補物件を絞って条件交渉へ
内見や現地実査に加え、各種資料を確認したうえで、候補を数物件に絞りました。さすがに、全ての条件を満たしている物件はありません。
だいたいが、利回り、つまり価格の部分がネックとなっていたので、仲介会社には希望価格を伝え、そのラインまで下がるのであれば交渉可能として、売主の反応を待つことにしました。
新宿の物件で価格交渉が進みましたが、入居者の状況について、より詳しい情報開示をしてもらったところ、繁華街に近いこともあり、入居者の勤務先や居住年数を考慮すると、本人が住んでいない(転貸している)可能性があったので、取りやめることにしました。
並行的に進めてきた品川の物件に関しては、売主から価格交渉可能との回答が仲介を通じてきましたので、こちらを優先して交渉をすすめることにしました。売買交渉に関して、特に留意した点について紹介していきます。
その1:価格交渉のポイント
価格については、それほど大きな開きがありませんでしたが、値引きが必要と考えたポイントは以下の二点です。
- 長期修繕計画はしっかりと作成され、その計画自体は妥当性がありました。
しかし、数年後から修繕積立金が数千円程度上がるようでしたので、その分、利回りが低くなるので、その分は値引きが必要と判断しました。 - 現入居者が10年を超えて居住していましたが、ヒアリングした結果、エアコンや給湯器などの設備機器を交換していないことが分かりました。
面積も50㎡を越えてくれば、設備機器の交換費用もそれなりにかかりますので、その金額分は値引きが必要と判断しました。
価格交渉は、ただ値引いて欲しいというよりも、値引きして欲しい金額と具体的な理由を明示する方が、説得力がありますし、こちらの購入意欲も伝わりやすいです。
今回は、仲介会社が売主でもあり(ちょっと複雑ですが、大きな会社なので、別部門で取り扱っていました)、大企業であったので、論理的に交渉をすすめることができました。
その2:入居者と売買経緯の確認
前項でも少し触れましたが、当時の所有者は不動産会社でした。しかも、取得時期からそれほど経過していません。明らかに転売目的での投資のようなので、取引コストを考えると、それほど大きな値引きはできないだろうと思われました。
しかし、仲介会社と売主が同じ会社なので、仲介手数料分くらいのバッファーがあることは期待できました。
不動産会社の前の所有者は、現在の入居者でした。新築時から住んでいたようですが、高齢になったため、物件を手放して住宅ローンを返済し、賃貸住まいにしたとのことです。
実質ワンオーナーで、分かりやすい物件でしたが、入居者がご高齢であるため、賃料の支払いなど心配点も出てきました。しかし、保証会社による家賃保証が付いていて、かつ、士業である娘様が連帯保証人になっていることが確認できたので、入居者の問題はクリアできました。
4.購入決定
仲介会社を通じて売主にはこちらの希望金額を伝え、あとは回答を待つだけになりました。正直、こちらの希望する値引き幅だと、売主にとってはあまりメリットが無いので、この話は流れるかもしれないと覚悟していました。
投資物件の購入に関しては、のめりこまず、この条件であれば購入、その条件にならなければ見送るという淡々とした姿勢が、必要だと思います。売り物件は、他にもたくさんありますから、これがだめなら次へと考える方が良いでしょう。
所有者は、見込んだほどの売却益は得られなかったようですが、保有物件を回転させたいという事情があったようで、当方からの条件で取引可能との回答がありました。
こちらが、すぐに決済できる状態にあったことも、売主が決断する材料になったようです。ローンや自己資金に不安があるような買主であれば、そこまでの譲歩はしてこなかったでしょう。
そして、すぐに契約・決済を済ませました。
5.購入後の管理
投資した物件は区分マンションなので、共用部分の管理は、そのまま管理組合を通じて、外部業者に委託することになります。
賃貸管理(滞納時の督促、更新業務、トラブル対応など)については、当初は、管理会社を使わずに、自分で行うことも検討しました(いわゆる「自主管理」)。
家賃も月額20万円を超えることから、管理手数料だけでもそれなりの金額です。しかし、最終的には現在の管理会社を引き続き利用することにしました。
理由は以下の通りです。
- 20万円以上の家賃を取っているということは、それに見合う対応を提供する必要があるが、自主管理では限界がある。そもそも、24時間対応することは不可能。
- エアコン・給湯器などの設備が更新時期に来ていることから、故障する可能性もあり、その場合、すぐに対応できない。
- 管理会社を引き継げば、入居者にとっては利便性が高いこと。
- 他の管理会社にも見積もりを取ったところ、現在の管理会社のプランがサービス水準・値段面で一番良いと判断できたこと。
6.取引を総括して
この品川区の物件に決めた最大の理由立地です。地下鉄の駅に近く交通の便も良いことと。部屋位置が良く、前面に大きな建物が無く、今後も建設される可能性が少ないことです。
この物件は、10年以上は保有を続ける予定です。不動産は取引コストがかかりますので、そうでないと諸費用が吸収できません(仲介料、税金など入れると売買代金の3~6%ぐらいはかかっていると思います)。
現物不動産の取引コスト、更に、管理の手間を考えれば、株式、債券あるいはREIT(上場不動産上場信託)への投資の方が良いという考え方もありますが、現物不動産には現物不動産なりの良さもあります。
分散投資という観点からも、今回は現物不動産への投資に踏み切りました。