最近、「みんなで大家さん」の広告をよく目にしますが、これってどうなのでしょうか?利回り7%でそれなりに実績もあるようなので、良い投資のような気もしますが、そんな良い話しには裏もある気がします。
ここでは、「みんなで大家さん」について、ファンドマネージャーなりのアドバイスをしていきますが、結論から先に申し上げますと、利回りを目的に不動産小口化商品に100万円を投資するのであれば、REIT(リート)がお勧めです。
成田プロジェクトは、土地の取得価格が周辺相場などに比べると、途方もなく高いことから、配当だけを目当てに投資してしまわない方が良いでしょう。
みんなで大家さんの概要
まずはみんなで大家さんの会社概要を調べてみました。本社は千代田区にあり、また資本金は1億円となっています。不動産会社としては、決して大規模な会社というわけではないですが、30年以上の営業実績があり、会社としては信頼できる会社だと思います。
会社名 | みんなで大家さん販売株式会社 |
代表者氏名 | 柳瀬健一 |
本社所在地 | 〒102-0083 東京都千代田区麹町5丁目3番地 第7秋山ビルディング5階 |
電話番号 | 03-3556-1674 |
設立年月日 | 1998年8月 |
資本金 | 1億円 |
従業員数 | 56名 |
上場 | 未上場 |
みんなで大家さんの事業内容
みんなで大家さんは、不動産特定共同事業法に基づく、不動産投資の小口化商品の販売を行っている会社です。不動産特定業同事業法は、1994年6月に施行された、複数の投資家が出資を行い共同事業として不動産を取引・運用し収益を分配する「不動産特定共同事業」に関する法律です。
この商品に関しては、「共生バンク」の子会社である「都市綜研インベストファンド」が営業者として、不動産の取得・保有・運営・売却などを行います。いわゆるファンド運営会社と言ってよいでしょう。投資家は、一口100万円を出資金として営業者と匿名組合契約を締結し、出資(投資)しますが、投資家と営業者の間は、同じく子会社である「みんなで大家さん販売」が販売会社として関与します。
みんなで大家さんは、2007年の事業開始以来、オフィスビル、ホテル、農業施設などに投資を行い、累計で約1,000億円に近い資金を集めた実績があるようです。
そして、現在は成田空港周辺で開発中の大型施設(ホテル・飲食店・コンベンションセンターなど)「共生日本ゲートウェイ成田(仮称)」の底地に投資をする、「成田9号」の出資を募集しています。
成田9号概要
- 出資総額 63.4億円(うち、優先出資額約50億円、劣後出資額約13億円)
- 募集金額 約50億円(上記優先出資額分)
- 契約期間 令和4年2月1日~令和9年1月31日(5年間)
- 募集単位 100万円(1口)
- 予定利回り 年率7%
- 資金使途 共生日本ゲートウェイ成田(仮称)プロジェクト底地の一部取得(3,705.5㎡)
みんなで大家さんのメリット・リスク
みんなで大家さんのメリットや失敗するリスクについては、販売資料などにも記載されていますので、ここでは簡単に紹介していきます。
みんなで大家さんのメリット・強み
- 年7%と高い想定利回り
- 優先劣後構造により投資家の出資元本の安全性を高める
- 二カ月に一回の配当で年金のように配当を受けることができる
- 約14年の運用実績があり、元本割れが一度もない
- 途中解約に関しては、手数料がかかるものの、営業者か第三者への譲渡で対応可能
- 不動産特定共同事業法許可業者
- 三井住友カードVJAギフトカードが貰えるなどキャンペーンを実施している
みんなで大家さんのリスク
みんなで大家さんのリスクを挙げておきます。投資で損をしたり、後悔しないためにも、起こるべきリスクはしっかりと把握しておきましょう。
- 元本保証でない
- 利回りも想定であり、保証されていない
- 投資した不動産が売却できなかったり、再度の資金募集ができない場合は、出資金が予定通りに戻ってこない場合がある
みんなで大家さんの口コミ・評判
みんなで大家さんに関して、ネット上の口コミを調べてみました。良い口コミと悪い口コミが両極端です。
良い口コミ
みんなで大家さんの、これまでの配当支払いと元本償還の実績と利回りの高さから、投資を促しているものが、かなり多く見られます。だいたいが、みんなで大家さんへのホームページへのリンクが貼られていることから、広告目的のアフィリエイトサイトでしょう。
「みんなで大家さんは危ない」「やめておけ」などの題名は付いていますが、内容としては安心できる投資と紹介しているパターンは、ほぼアフィリエイトサイトと考えて良いと思います。
悪い口コミ
やはり年利7%の配当を出し続けることができるのは怪しいというものが多いです。自転車操業でないかなどの意見もありますが、実際に投資をした方の体験談ではありません。悪い口コミの中には、最終的には他の商品を勧めるアフィリエイトサイトのようなのも目立ちます。
悪い口コミとしては、更に、都市綜研インベストファンドが2013年5月に債務超過を原因に2ヶ月の業務停止処分を受けたことを挙げているものもあります。裁判という噂もありますが、あくまでも行政処分ですね。会社側は、ホームページでこのことを隠さずに、むしろその時に誠実に対応したことをアピールする材料としています。
良い口コミも悪い口コミもいろいろとありますが、あまり本質をつくものでなく、印象や噂に基づくものが多く、不動産ファンドとして分析しているようなものは見つかりませんでした。また、一部返金されないという噂がありましたが、過去に一度だけ遅延があったようですが、返金はしっかりとされているようです。
みんなで大家さんの疑問点
口コミでは、良く分からなかったので、実際に共生バンクグループや成田9号に関して、自分で調べてみたところ、配布されている資料やホームページ上で得られる情報から、いくつかの疑問点か出てきました。
疑問点その1:成田9号の土地取得単価に関して
成田9号は成田空港近くの土地約45.5万㎡という東京ドーム約10個分の広さに、ホテル、ショッピングセンターやコンベンションセンターを開発するプロジェクトの底地一部に投資をします。現在、当該土地は造成段階にあるようで、完成は、まだまだ先のようです。
ちなみに今回、3,705.5㎡(約1,121坪)の土地を63.4億円で購入するようですが、土地の購入単価はいくらになるか計算してみましょう。
63.4億円÷1,121坪=約565万円
成田の土地を坪565万円で購入するとのことですが、容積率や建ぺい率などの違いはありますが、坪500万円といえば、23区内でも結構良い場所の値段です。確かに、成田プロジェクトが大成功すれば、それくらいの価値になるのかも知れませんが、今はただの山林で、しかも、周りには空港しかない利便性に劣る土地です。
ちなみに、成田空港自体の土地の価値は、公示地価をベースに算出すると、坪7万円弱のようです。つまり、成田9号はこの80倍くらいの価値を見込んでいるということです。
更に、造成段階であるにもかかわらず、投資家に都心の好立地の場所と同等の坪単価で、ファンドを通じて土地(山林)を購入させるのはいかがなものでしょうか?
ちなみに、計画地全体45.5万㎡を坪565百万円で評価すると、7,700億円以上となります。おそらく、建物を合わせると1兆円を超えるということでしょうか?
疑問点その2:成田9号の賃貸利益に関して
成田9号は土地の造成・開発を行う事業者(共生バンク)に対象不動産を賃貸して、そこから得られる賃料を分配するとのことですが、開発中の土地ですので、本来であれば収益を生み出す力はありません。
賃借人である共生バンクは、会社の説明によると、ファンドに土地を売却して実現した利益を賃料として戻すようなことを言っていました。
不動産ファンドと言うと、マンションやオフィスビルのように、入居者や利用者からの家賃を収益源に投資家に配当するイメージを持つ方が多いと思いますが、成田9号は、これとはちょっと違って、投資家が投資した100万円を原資に、その中から毎年7万円が配当されるような感じでしょう。
ちなみに、賃料単価はどれくらいになるのでしょうか。想定賃貸利益約4.4億円から計算してみましょう。
443,000千円÷1,121坪=395,927円
賃貸の坪単価は、約39万円です。これも周辺相場を考えれば破格な金額です。万一、この成田の開発プロジェクトがとん挫してしまった場合、同じ条件でこの土地を購入したり、賃借する人は現れるのでしょうか?
疑問点その3:ファンドの構造に関して
成田9号に限らず、みんなで大家さんの各プロジェクトは、優先劣後構造により、営業者である都市綜研インベストファンドが20%を劣後出資することで、投資家の出資元本の安全性を高めることになっています。また、各プロジェクトごとに匿名組合決算を組んで配当や元本償還をすることになっています。
組合決算の内容までは分かりませんが、営業者である都市綜研インベストファンドの貸借対照表はホームページ上に開示されています。これを見ると、まずは劣後出資にあたる部分が見当たりません。本当に劣後出資はされているのでしょうか?
疑問点その4:グループ間の取引に関して
都市綜研インベストファンドは、ホームページ上で決算公告を開示しているので、貸借対照表を確認することができます。更に、親会社の共生バンクのホームページ上には、都市綜研インベストファンドの監査済みの決算資料も開示されています(最新のものは開示されていません)。
後半の個別注記表部分を見ると、グループ会社間で、資金や不動産の取引がかなりのボリュームで行われているのがわかります。ちなみに、2019年3月末時点でファンドから共生バンクに約77億円の預け金残高があります。
ファンドは個別の匿名組合契約ごとに資金管理などを行っているようですが、結局は親会社である共生バンクにまとめて資金移動されているようです。
みんなで大家さんの投資先は、ホテルや農場などがあるようですが、共生バンクグループの事業会社がテナントとして借り受けているものも少なくないようです。それぞれの事業が上手くいっているかどうかは良く分かりません。
そうなると、みんなで大家さんへの投資は、実は、不動産ファンドへの投資というよりも、共生バンクグループへの不動産担保融資をしているという方が適当かも知れません。
疑問点その5:自転車操業の可能性
みんなで大家さんですが、俗にいう自転車操業の可能性をネットなどで指摘されているようです。いわゆる、出資を次から次へと集めることで、先に配る配当金を充填しているという形ですね。正直にいって、決算書などから自転車操業状態かどうかはわかりません。ですが、さすがに30年自転車操業で営業を続けることは難しいですし、あくまでも噂ではないかと思います。
みんなで大家さんをやってみたブログ
また、みんなで大家さんを実際にやってみたという方のブログがありましたので紹介しておきます。
やってみたいな、と考えている方は参考にしてみてください!
みんなで大家さんの部屋
こちらは実際にみんなで大家さんに投資している人のブログです。なんと現在1200万円分をみんなで大家さんに投資しているとのことです。
みんなで大家さん始めてみた
こちらは、みんなで大家さんを始めてみた人のブログです。実際に分配金が振り込まれる様子も書かれているので、ぜひ参考にしてみてください。
ファンドマネージャーからのアドバイス
前項でみんなで大家さんに対する疑問点を挙げてみましたが、みんなで大家さん自体は、不動産特定事業法の方のもと、適法に運営にされているものだと思います(違法である証拠は特に見当たりません)。しかし、運営方法や開示の内容を見てみると、不動産特定事業法の限界も見えてきました。
成田9号の土地の購入価格は、外部評価(鑑定)に基づいて決めているようですが、坪500万円を超えて、周辺相場の80倍以上となる鑑定評価は、どの鑑定評価機関がどのような方法で価格算定して、それが妥当であるかどうかは分かりません。
不動産特定事業法では、そこまで開示することを求めていませんので、それ自体は違法ではありませんが、結局、こちらが疑問に思ったことは、わからずじまいです。これ以上、調べる手段はありません。グループ間の資金の流れや、それぞれの決算内容なども、全く分かりません。
不動産投資信託(REIT)も、スポンサー企業とパイプライン契約を結んで、スポンサーから不動産を購入していますが、鑑定評価機関や価格算定方法は開示されています。従って、REITのような商品であれば、疑問点が出ても、調べる手段はあります。
REITは金融商品取引法という法律のもとで運営されており、投資家保護のため、証券会社・公認会計士・弁護士・信託銀行などが運用に関与し、利益相反取引がないかなど、運用状況を厳しくチェックしています。
その結果として、不動産取得の際には、鑑定評価の内容も概略は公開されますし、ファンドの決算内容は有価証券報告書で、テナントの状況も含めて細かく開示されます。決算説明会も行われるので、ホームページ上で閲覧することもできます。
REITは確かに値動きもありますし、コロナ禍によって、ホテルリートの配当が大幅に減少するなど、減配のリスクもあります。しかし、5%を超える利回りの銘柄もあり、こういった銘柄を決算期を基準に分散投資すれば、みんなで大家さんほどの利回りとは行きませんが、それに近い配当利益を隔月や毎月、得ることはできます。
なにより、取引所に上場しているので、タイムリーな情報開示がされ、更に、売りたい時にいつでも売ることができます。
不動産特定事業法に基づく投資商品は、他にも高利回りのものもありますが、開示されている情報量が少ないので、期間が短かったり、金額が少ないものに限定して、ある程度の期間で多くの資産を投資する場合は、開示情報が充実している、REITが適当であると考えられます。
まとめ
みんなで大家さんは、実績のある不動産小口化商品ですが、運用規模も大きくなり過ぎてしまい、これまでの不動産特定共同事業法の枠では管理できなくなったと感じます。これだけの資金規模を投資家から集めるのであれば、金融商品取引法のもと、有価証券届出書を提出して、同法に基づく監査も受けるのが適当であると考えられます。
投資商品は、法整備が整っていない場合もあります。事件が起きてから、ようやく関係省庁が法整備に乗り出すことも多々あります。不動産特定共同事業法のもと、クラウドファンディング型の小口投資も始まりましたが、同法は、まさに過渡期にあるとの印象を持ちます。
資産運用として、ある程度のまとまった資金を不動産の小口金融商品に投資するのであれば、一番投資家保護の法整備や制度が整っている、不動産投資信託(REIT)を選択するのをお勧めします。