全額自己資金で不動産を投資を始める方はそんなに多くないでしょう。ほとんどの方が自己資金に加えて、足りない部分は金融機関からの融資を利用して不動産を購入しています。頭金は10万円程度で残りの2,000~3,000万円を借入で賄う場合も少なくありません。
また、複数の物件を購入して年収の8~10倍の借り入れをしている猛者もいます。この異常とも言える低金利の状況下、金融機関のローンを利用して不動産を投資を行えることは、他の投資商品にないメリットです。
しかし、誰もが融資を最高の条件で融資を受けられる訳ではありません。当然、各金融機関は投資家の属性(年齢、年収、勤務先など)や取得する不動産によって条件を変えてきます
。最悪の場合は、投資をしたくても審査が通らない、いわゆる審査落ちという事態もあります。せっかく不動産投資を決意して、良い物件を見つけても、融資落ちとなれば、それまでの手間や時間が無駄になってしましいます。ここでは、審査落ちを防ぐための事前知識を解説していきます。
不動産投資用ローン
金融機関は融資の際に、資金使途を細かくチェックします。納税資金、賞与資金、工場建設資金などさまざまですが、不動産投資用ローンはアパートローンとも呼ばれ、投資用の不動産を取得する目的のための融資です。
投資用不動産を仲介業者を通じて購入する場合は、自身で金融機関を探すことになりますが、多くの方は不動産会社から直接物件を購入し、その不動産会社が提携している金融機関を利用することになります。
提携している金融機関は、不動産投資用ローンを専門に扱っている場合が多く、オリックス銀行、ジャックス、クレディセゾンなどノンバンク系の金融機関が多いのが特徴です。
金融機関は融資対象となる不動産を担保に、不動産の収益性・市場価値と借り手の信用力を審査して融資の可否を判断します。不動産会社はあらかじめ提携金融機関に対して、販売する不動産が融資対象となるか、また、どの程度の条件で融資を付けることができるか確認している場合が多いので、物件が原因で審査落ちとなることはほとんどありません。
審査落ちが起きる原因
不動産会社の提携金融機関のローンが、物件が原因で審査落ちとなることはほどんどありませんが、借り入れを申し込んだ方を審査することによって審査落ちとなることはあります。金融機関はどのような観点で審査をしているのでしょうか。
属性
一番大切なのは借り入れを申し込んだ方の属性です。個人の信用力を目に見える形で審査する方法は、その方の属性から判断するしかありません。
具体的には、年齢、勤務先、勤続年数、年収などです。いくら年収が高くても、新入社員のように年齢もまだ若く勤続年数も短ければ、融資を利用することは難しくなります。逆に、50歳を超えていれば、今後継続して給与収入が安定して入る可能性は低くなりますので、融資期間は短くなりますし、融資自体が利用できない場合もあります。
一般的には、年齢(25~50歳)、勤務先(上場会社、そのグループ会社、もしくは資本金1億円以上の会社の正社員、公務員、医師、薬剤師、弁護士、公認会計士などの資格職など)、勤続年数(3年以上)、年収(500万円以上)をクリアしていると安心です。
細かい条件は各金融機関によって異なり、勤続年数が短くてもキャリアップのための転職であればOKな場合ありますし、年収が高くても、営業職でインセンティブ部分の占める割合が大きい場合はNGとなる場合もあります。
自己資金・借入
金融機関からの融資条件が良く、自己資金が10万円程度で済んでも、自身の貯蓄が少ない場合は融資落ちとなってしまうこともあります。
いくら年収が高くても手元資金が少ない場合は、計画的に貯蓄する能力が低いとみなされたり、空室リスク等に自己資金で対応できなとみなされてしまいます。
また、持ち家であれば住宅ローンの支払い、賃貸であれば月々の家賃が多額な場合は、収入から控除されて、結果、年収不足と判断される場合もあります。更に、複数の投資物件を保有していて借入金額が多い場合は、追加での借り入れができません。
年収800万円で年収の10倍くらいまでの借り入れは可能なようですが、年収と総借入額は金融機関によって基準は異なってきます。
団体信用生命保険に加入できない
不動産会社投資用ローンを利用する場合、団体信用生命保険に加入することによって、借入人の重篤な病気や死亡が発生した場合、保険金が支払われ、ローンの残債全額の返済に充当されます。
借り入れる方にとっても、金融機関にとってもリスクを回避する手段ですが、もともとの疾病や病歴により団体信用生命保険に加入できない場合があります。金融機関によっては、団体信用生命保険の加入がマストになりますので、何かしらの事情で団体信用生命保険に加入できない場合は、審査落ちとなることがあります。
物件(補足)
不動産会社の提携金融機関を利用する場合、物件が原因で審査落ちとなる可能性は低いことは既に説明しましたが、自分で金融機関を探す場合の参考として、物件が原因となる場合の説明をします。
物件が原因となる多くの場合は耐用年数が挙げられます。建物は構造によって法定耐用年数が定められています。軽量鉄骨造19年、木造22年、鉄骨造34年、鉄筋コンクリート造47年ですが、金融機関によっては、この耐用年数を超えた融資期間を設定できないこともあります。
例えば、築20年の木造アパートであれば2年しか融資期間が取れないということですし、築30年なら、そもそも融資が利用できないということです。ただし、この数字は税法上の決まりですので、不動産自体の利用実態や市場価値とには当てはまりません。築30年のアパートでも普通に住めるものはたくさんあります。
他に物件の遵法性も求められることがあります。建築基準法に則って物件として検査済証が交付されている、使用用途に違反していないことが求められます。一階の駐車場が店舗として利用されていることがありますが、厳密に言えば法令違反で是正することが求められます。このような遵法性に問題が生じている物件は審査落ちとなる可能性があります。
審査落ちを避けるための対策
上記で審査落ちが起きる原因について説明してきましたが、どのように対策していったら良いでしょうか。
属性をアップする
同じ会社に長く勤めて年収がアップするようにしましょう。また、正社員としてインセンティブやボーナス部分にばらつきがない安定した収入形態が求められます。勤務先の状況(上場・非上場、資本金)、資格の取得なども大きく影響しますので、不動産投資を考える中で自身のキャリアップも考えていきましょう。
自己資金を多めに準備する
自己資金は多いに越したことはありません。逆に、いくら頭金が少なくて済む良い条件で融資が利用できるからといって、手元資金が少ない中で不動産投資を行うのはお勧めしません。頭金として利用するかに関わらず、総投資金額の20%、できれば30%を用意しておきましょう。資金に余裕があれば、繰り上げ返済を利用して、常にリスクを低減することを考えましょう。
事前相談・打診を利用する
自分がどのくらいの条件で不動産ローンを利用できるか、事前に金融機関に相談することは可能です。直接、問い合わせる事もできますし、不動産会社を通じて提携金融機関に確認してもらうことも可能です。もしその段階で融資が利用できないと分かれば、どのポイントを改善すれば良いか、どの程度の自己資金を準備すれば良いかなど、不動産投資を始めるたに必要な準備を知ることも重要です。
融資に強い不動産会社と付き合う
不動産会社によって、提携している金融機関は異なりますし、金融機関の審査基準・融資条件も異なります。また、金融機関によっては提携する不動産会社によって、金利などの条件を優遇する場合もあります。
各不動産会社が提携している金融機関は、ホームページなどでチェックできますので、提携金融機関が豊富な不動産会社とお付き合いすることは大切です。
ファンドマネージャーからのアドバイス
不動産投資の成功の条件は、良い物件を見つけることと、良い条件でローンを調達することです。不動産投資ローンは、審査がありますので、誰もが良い条件で借りられるということではありません。
不動産投資ファンドの運営をしていた際も、今どこの金融機関が良い条件を出してくれるのか、また、良い条件を出してもらうにはどのようにすべきか、更に、金融機関の審査傾向などもチェックしていました。
金融機関もローンに積極的な時期とそうでない時期があります。審査基準は常に一定ということでもありませんので、不動産の物件情報を得る時には、最近の金融機関の審査基準・融資事情なども合わせて聞いてみるようにしてみてください。
まとめ
不動産投資成功の鍵はもちろん投資物件の内容ですが、融資戦略も同じくらい重要です。不動産を探すだけでなく、そもそも自分が融資利用が可能なのか、また、より良い条件で融資を利用するために自分ができることは何なのかを事前に確認しましょう。
直接金融機関に相談することも可能ですし、不動産会社を通じて確認することもできます。気に入った物件を見つけても審査落ちとなってしまわないよう、正しい情報収集活動をお忘れなく!!