リスクは?デメリットは?フルローンを利用する前に確認しておくべきこと

不動産投資は多額の投資となることから、金融機関からのローンを利用する方が大部分です。頭金を使わずに、諸費用だけ自分で準備する「フルローン」を活用すれば、自己資金がほとんど使わずに不動産投資を行えます。メリットも大きい分、当然、借入金額が大きくなるリスクもありますので、フルローンを利用する場合のメリット・デメリットなどを解説して行きます。

フルローンとは何か?

一般的には、不動産投資で融資を利用する場合は、契約時に頭金(通常であれば契約金の10%程度)、引渡し時にローン金額で賄えない部分の残金に加えて、諸費用を自己資金として支払います。フルローンは頭金と残金までがローンでカバーされる状態のことで、諸費用のみを自己資金で賄い、その他の資金は全てローンで物件を購入します。最近は売主である不動産会社が諸費用を負担(サービス)してくれる場合もありますので、そうなると、必要な自己資金は「ゼロ」となります。また、新築・中古ワンルーム市場では、フルローンまでは行きませんが、頭金10万円程度で諸費用サービスという販売方法も良く見られ、実質的に「フルローン」化しています。

オーバーローンとは何か?

オーバーローンとは、諸費用部分までも借りてしまうことです。ちなみに諸費用は以下の項目です。

①収入印紙代(不動産の売買契約書、金融機関との融資契約書に貼付)
②金融機関への融資手数料、保証料
③所有権移転もしくは保存登記費用(司法書士報酬、登録免許税)
④抵当権設定費用(司法書士報酬、登録免許税)
⑤固定資産税・都市計画税
⑥不動産取得税

売主である不動産会社が諸費用をサービスする時は①~⑤(2,000~3,000万円の物件であれば100万円弱程度)までの場合が多く、不動産取得税は通常、不動産取得後2~3か月後に納付通知書が来て納付しますので、こちらは自分で支払っているケースがほとんどです。

フルローンのメリット

①レバレッジ効果を高めることができる

投資における収益率の考え方で最も主流なものは投資利回りです。例えば、年間収入が120万円で、経費が20万円かかる物件を2,000万円で購入すれば、
(120ー20)万円÷2,000万円=5%
投資利回りは5%となります。この投資利回りを物件の選定基準にされている方も多いでしょう。
もう一つの考え方として、資金利益率というものがあります。この2,000万円の物件を全額自己資金で購入するのであれば、利金利益率はやはり5%です。しかし、2,000万円のうち、1,500万円を年率2%のローン(年間利息30万円)で調達し、自己資金は500万円とすると、
(12ー20ー30←利息)万円÷(2,000-1,500←ローン)万円=20%
つまり全額自己資金であれば、自己資金2,000万円に対するリターンは5%ですが、2%のローン1,500万円利用して、自己資金を500万円に減らせば、この500万円の自己資金に対するリターンは20%とほぼ4倍となります。このように、物件収益よりも低利な外部資金を利用して自己資金を少なくしていくと、資金収益率はどんどん上がっていきます。これがレバレッジ効果(てこの原理)と呼ばれるものです。
こうしたレバレッジ効果によって、小さな投資で大きなリターンを得ることができます。投入する自己資金がよりゼロに近づくほど、レバレッジ効果は大きくなります。

②自己資金を確保しておける

フルローンを組む最大のメリットは自己資金を確保しておけることです。自己資金があれば、運用中のランニングコストに充てることもできますし、他の物件・投資に使うこともできます。また、生活上の突然の出費(病気、事故、学費など)に備えることができます。

③団体信用生命保険(団信)の効果を最大限活用できる

団信とは、投資用ローンの債務者が返済期間中に死亡または高度障害状態になったときなどに、その保険金で投資用ローンの残高が完済される保険です。保険が支払われた後は、ローンが無い状態の不動産が残りますので、売却すれば売却資金がそのまま手元に残りますし、保有し続ければ家賃収入がそのまま手元に残ります(諸経費、税金などはかかります)。最近では、3大疾病付き特約(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)や8大疾病付き特約(3大疾病、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)を付けることが可能な団信も出て来ています。

フルローンであれば、ローン金額も大きくなるので保険で補填される金額も大きくなります。保険金額が大きな団信を利用できるというのも、フルローンのメリットです。

フルローンのリスク・デメリット

①キャッシュフローリスク

最も大きなデメリットは、月々のキャッシュフローが圧迫されるという点です。歴史的な低金利とは言え、ローンを多めに借りれば、その分、月々の利息や元金返済の金額は大きくなります。スタート時の持ち出しはほとんど無くても、毎月の持ち出しが発生すれば、年間トータルでかなりのキャッシュアウトがあったなんてこともよく耳にします。

不動産投資では、空室リスクや修繕リスク等、キャッシュフローに大きく影響を及ぼす事態が発生しかねませんので、ある程度の自己資金を確保しておかないと、資金がショートしてしまう危険があります。この自己資金が月々のキャッシュフローのマイナスで無くなってしまわないよう、自分の収入や生活費のやり繰りも考える必要があります。築古で比較的利回りが高くフルローンが使える場合、月々の収支に余裕が生じるケースもありますが、築古の物件は空室や修繕などのリスクが更に高くなりますので、注意が必要です。月々の収支だけで判断しないようにしましょう。

②借入リスク

フルローンは借金が多くなるということですので、追加で物件を購入し更にローンを借りようとしたり、または、マイホーム用の住宅ローンを借りようとしたりする際、審査が厳しくなります。また、変動金利の場合は、金利上昇リスクを受けやすくなります。

フルローンを利用するためのポイントとは

フルローンは、利用することができれば、レバレッジ効果に期待でき、投資を有利に利用できます。しかし、ローン金額が大きくなることは金融機関にとってもリスクが高くなるため、誰でもフルローンを利用できるというわけではありません。そこで、フルローンを利用するためのポイントを解説します。

属性を良くしておく

金融機関や銀行は借入人の属性(収入、勤務先など)と投資する不動産の担保価値を審査して、フルローンでの融資が可能か判断します。フルローンを受けたいという場合は、例えば上場企業だったり、医師など、収入が安定している方が有利です。また借入金も少ない方がいいでしょう。フルローンの審査を受ける前に、出来るだけ属性をよくしておきましょう。

担保評価が高い物件を選ぶ

ローンの金額などの条件は、属性と合わせて担保評価が一つの基準となります。そのため、購入する物件は、ワンルームや一棟マンションなどがありますが、新築だったり、立地がいいなど、出来るだけ担保評価が高い物件の方が有利となることを覚えておくといいでしょう。

フルローンが受けやすい金融機関を選択する

フルローンをどうするかを決定するのは、金融機関です。当たり前ですが、フルローンを受けられるかどうかも、金融機関が決めます。そのため、出来るだけローンを受けやすい金融機関を選択するといいでしょう。経験上、日本政策公庫などはフルローンを受けやすいです。

まとめ

不動産投資でフルローンが使えると、手軽に始めることができるというメリットがあります。自己資金ゼロで始められるケースもありますので、若い方でもフルローンを活用して不動産投資を始める方が増えています。歴史的な低金利の状況下、借りられるだけ借りたほうがメリットが大きいことも確かです。ただし、フルローンの結果、毎月の利払いと返済で、キャッシュフローが3~5万円マイナスになってしまっているような方もいらっしゃいます。不動産投資ではそれ以外に資金が必要になることがありますので、「保険金だと思えば安い」というセールストークを真に受けずに、自分の収入や貯蓄とのバランスを考えて、フルローンでの不動産投資を始めることができるかどうか判断しましょう。

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