不動産投資を始める際、どれくらいの初期費用を準備したら良いのでしょうか。また、将来的に不動産投資を始めたいのだけれでも、だいたいどの程度の初期費用を貯めることを目標にしたら良いのでしょうか。
この記事では、不動産投資に必要な初期費用について、具体的に説明してきます。また、初期費用を抑えるためのコツについても解説して行きます。
初期費用が必要な理由
投資用の不動産を購入する際、金融機関からのローンを利用する方がほとんどだと思いますが、金融機関は不動産投資をするための資金を全額貸してくれるというわけではありません。
また、スーパーで食品を買うのであれば、表示された金額を支払えば買うことができますが、不動産は不動産本体の金額に加えて、さまざまな諸経費を支払わないと購入することができません。
金融機関のローンも不動産本体部分については全額を融資を行う「フルローン」と、諸経費分まで含めて融資してくれる「オーバーローン」というのがありますが、借りるための条件は厳しく、簡単に借りることはできませんので、通常のローンであれば、不動産本体部分の一部と諸費用は自分で準備する必要があります。この合計金額が「初期費用」です。
よく「頭金」という言葉を聞きますが、頭金は契約時に支払う金額のことで不動産価格の10~20%が目安となっています。諸費用は、契約時でなく、残金を支払って不動産の権利を移転する際(決済といいます)に同時に支払うことが多いので、一般的には、頭金と諸費用の合計額が初期費用ということになります。
不動産購入に必要な諸費用
では、投資用不動産購入に必要な諸費用にはどのようなものがあるでのでしょうか。
- 仲介手数料(売買代金の3%+6万円)
- 金融機関への融資手数料、保証料
- 収入印紙代金(売買契約書、ローン契約書)
- 火災保険・地震保険料
- 司法書士報酬(登録免許税、司法書士の手数料)
- 不動産取得税
- 振込手数料など
ほとんどの費用は、残代金の支払いと同時に必要になりますが、不動産所得税だけは、所有権移転登記(決済)後、3~6か月後くらいに、納付書が郵送で届き納付手続きを行います。
また、中古物件であれば、売主が支払う(既に支払った)固定資産税・都市計画税、売主が受け取る(既に受け取った)入居者からの家賃、入居者からの敷金を精算しますが、こちらは、受け取りになる場合が多いので、あまり考えなくて大丈夫です。
不動産会社から直接購入する場合は、仲介手数料はかかりません。仲介手数料の3%+6万円は、最大金額なので、これより安くなることもあります。
諸費用は、不動産の売買金額、固定資産税の評価額、ローンの借入金額によって、それぞれ計算しますので、一概にいくらということはできません。目安としては、不動産価格の3%を目安とすると良いでしょう。例えば、2,500万円であれば、2,500万円×3%で75万円です。(仲介手数料が必要な場合は、これに加算してください)
初期費用としていくら必要か
先程、初期費用は頭金と諸経費の合計金額が一般的と説明しましたが、頭金は不動産価格の10%が一般的で諸経費は3%が目安ですので、合計13%程度の初期費用が必要ということです。2,500万円の物件であれば、2,500万円×13%=325万円ということになります。
初期費用を抑えるコツ
初期費用を抑える第一のメリットは、不動産投資に関する経費を削減できるということです。次に、初期費用を抑え、手元に残る資金を多くすることで、今後発生するリスクに備えるほか、次の投資に回すことができるということです。
では、初期費用はどのように抑えればよいのでしょうか。
コツ1:ローンを多くする
金融機関から借り入れるローンの金額を増やせば、初期費用は少なくて済みます。金融機関によっては、オーバーローン(諸費用も含んだ融資)、フルローン(不動産価格いっぱいの融資)を組んでくれるところもあります。
金融機関が融資金額を決めるポイントは、購入する物件の担保価値と借入人の信用力です。新築や築浅で、立地の良いワンルームマンションは担保価値が高くなる傾向にあります。そのような物件は空室リスクや修繕リスクが低く、安定して家賃収入が入ることが期待できるからです。逆に築古であったり、郊外の物件は担保評価が出にくくなってしまいます。
つまり、ローンを多く借りられるように金融機関の担保価値が出やすい物件に投資をするというのも一つの方法です。
また、借入人の信用力は、年齢、年収、勤務先、勤続年数に加えて、借入も含む金融資産も審査の対象となります。そもそも、金融機関が決めている基準をクリアーしないと、ローン自体が利用できない可能性もあります。
なかなか、年収を上げたり、勤務先を変えたりすることは難しいので、自分の信用力を短期間で高めることは難しいでしょう。逆に、年収が1,000万円あったり、勤務先がしっかりしているなど、もともと信用力が高い方は、それを利用して、より多くのローンを借りることもできるでしょう。
諸費用分に関しては、諸費用ローンを別途提供している金融機関もありますが、金利は少し割高になります。
いずれにせよ、ローンを多く借りると、毎月の利息や元金返済の支払いが増えて、毎月のキャッシュフローは少なくなることには注意することが必要です。
コツ2:諸費用を少なくする
登録免許税、不動産取得税、印紙代などの税金を安くすることはできませんが、他のものは値段交渉が可能です。
例えば、司法書士の報酬は交渉することが可能です。ローンを提供する金融機関が司法書士を指定する場合もありますが、自分で決めることができるのであれば、何人かの司法書士に報酬を聞いてみるのも手です。
火災保険・地震保険は、不動産会社が自社が取り扱っている保険への加入を勧めてくるケースが多いですが、今はネットで契約する保険の方が保険料が安く済む場合が多いので、自分でネットで探してみましょう。
ここだけの話ですが、最近では「諸費用サービス」に応じてくれる不動産会社もあります。不動産の売買価格は値下げしてくれなくても、諸費用を一部または全額サービス(売主負担)してくれる場合もありますので、必ず、サービスしてもらえないか交渉してみてください。
初期費用以降に必要なお金
不動産投資は初期費用以降も、お金がかかります。大部分は家賃収入でまかなうことがはできますが、それだけでは足りなくなる場合もあります。従って、初期費用が抑えられたとしても、総投資額の10%程度の自己資金を確保してから、不動産投資を始めるべきと考えます。
それでは、投資後にかかるお金について、更に、こちらも抑えるコツについて解説して行きます。
投資後にかかるお金1:元金返済・利息
金融機関からのローンを利用すれば、すぐに元金と利息の支払いが始まります。多くの方が元利金均等返済という、毎月定額の支払いを選択しています。支払金額一定ですので、キャッシュフローは安定しますが、最初の数年間は、ほぼ利息に充当されるため、なかなか元本の返済は進みません。
もし手元の資金に余裕ができれば、繰り上げ返済により元本を減らせば、ローンの完済時期を早めることができます。
毎月の支払いを少なくするには、より金利が低かったり、期間が長いローンに借り換えることで可能になりますが、現在の金利はもともとが低いので、ここから更に条件の良いローンに借り換えるというのは、なかなか難しいと思われます。
投資後にかかるお金2:管理費・修繕積立金
区分所有マンションへの投資であれば、毎月、管理費と修繕積立金を管理組合に支払います。管理組合は集めた管理費で清掃を行ったり、廊下などの共用部の簡単な修繕を行います。
修繕積立金は、将来発生が見込まれる比較的大規模や修繕のために蓄えられ、5年後や10年後に外壁の塗装をしたり、屋上の防水工事を実施したりします。
管理費・修繕積立金は、計画時の経費見積もりが甘いこともあり、築年数が経過すると値上がりするケースが多くなっています。
管理組合の不要な経費をチェックして組合の総会で指摘することもできますが、自分の発言権・投票権は限られているため、他の所有者からの同意も必要ですが、現実的にはなかなか難しいでしょう。
投資後にかかるお金3:固定資産税・都市計画税
固定資産税評価額に基づき、毎年、課税額が決まり、5月から6月くらいに納税通知書と納付書が送られてきます。一括納付か年4回の分割納付のいずれかの方法で支払います。
投資後にかかるお金4:賃貸管理費
入居者の賃貸管理(家賃の集金やクレーム対応、更には、入退去や更新事務など)は、結構、手間がかかる業務です。サラリーマンの方が副業で不動産投資をされる場合、これらの業務は不動産管理会社に委託してしまう場合が多いでしょう。
賃貸管理費は家賃の3~5%程度が相場です。もし、この費用を節約しようとするのであれば、業者に任せずに自分で管理しましょう。ただし、クレーム対応などが遅れてしまうと、思わぬ費用が発生してしまうこともありますので、そういうことが苦にならない性格の方が向いています。
投資後にかかるお金5:修繕費用
給湯器やエアコンなど、居室内の設備が壊れた場合、通常はオーナーの負担で交換する必要があります。賃貸管理を不動産会社に委託していれば、その会社が代わりに業者の手配などを行ってくれます。
もし自分で管理しているのであれば、自分で業者の手配から商品の選定までを行う必要があります。
どの設備も高額で、家賃の数か月分になる場合があります。それほど頻繁に交換が必要なものではありませんが、価格だけでなく耐久性も確認して商品を選びましょう。
また、管理会社の見積もりに関しては、インターネットで給湯器やエアコンなどが適正価格かどうかを調べるようにしましょう。
投資後にかかるお金6:入居者募集費用
入居者募集に際しては、まずは、退去後の居室をクリーニングが必要となります。壁紙を張り替えたり、水回りを修理したりなどです。賃貸管理を不動産会社に委託している場合は、その会社が見積もりを出し、退去者とオーナーの負担割合を計算して精算してくれます。
もし、クリーニング費用を節約したい場合は、自分でインターネットで業者を探して相見積もりを取りましょう。自分で実際に部屋を見て、不要と思われる交換は省略してしまっても構いません。
ただし、あまりにも汚いままですと、新たな入居者が入りにくい場合もありますので、専門家の意見を聞きながら決めましょう。
次に、新たな入居者を探す活動に入りますが、通常、入居者を探してくれた業者には仲介手数料を支払います。仲介手数料は、賃料の一ヶ月分が上限となります。
賃貸人気が高い物件であれば、入居者から礼金を受け取ることができますので、受け取った礼金を仲介手数料に充当することができます。
しかし、不人気な物件であると、仲介手数料以外に広告費として別途費用を支払ったり、礼金は無しにして募集しなければならないなど、条件が不利になってしまいます。
自分で入居者を探したり、賃貸契約の事務を行うのは難しいので、入居者募集活動は不動産会社にすべて任せるしかありません。
投資後にかかるお金7:火災保険
火災保険は一年契約で毎年保険料を支払い、契約更新される方が多いです。支払金額が大きくなりますが、5~10年間の長期契約もあります。一括先払いですので、資金負担は大きくなりますが、1年分の保険料は、一年契約よりも割安になり、かつ、途中解約も可能です。
ファンドマネージャーからのアドバイス
「わずかな初期費用で不動産投資を始められますよ!」なんてセールストークに乗って、気軽な気持ちで不動産投資を始めてしまう方もいらっしゃるでしょう。現在、金融機関は不動産投資ローンに積極的に取り組んでいるので、かつてないほどの好条件でローンを借りることができます。
この時期を逃してしまったら借りられないかも知れないと思い、準備不足なまま不動産投資をスタートさせてしまうことはせずに、初期費用が少なく済むとしても、せめて、総投資額の10%程度の資金が準備できるまで待つことが必要です。
不動産投資は投資してからも、資金が必要になることがあります。給与収入を充当することもできますが、それでも足りなくなるケースもありますので、ある程度の資金を準備しておくことも必要です。
初めての投資であれば、フルローンではなく、ある程度レバレッジを低くして、毎月のキャッシュフローを安定させる方がお勧めではありますが、これだけ各国が競うように金融緩和を進め、資産インフレが起こりつつある状況では、レバレッジを高め、手元資金を残し、その資金を換金性の高い他の投資に回しても良いと思います。もし、資金が手元に残れば、繰り上げ返済することも可能です。
まとめ
1.不動産投資に関する初期費用は契約時の頭金と諸経費の合計金額が一般的で、売買価格の13%程度が一つの目安になります。
2.ローンを多くしたり、諸経費を少なくすることで、初期費用を抑えることはできます。ただし、ローン金額増えれば、毎月のキャッシュフローは厳しくなります。
3.売買価格の値引き交渉ができなくても、諸費用に関して、値引きや売主が一部(または全部)負担してもらえるケースもありますので、必ず、値引き交渉はしましょう。
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