不動産投資においてどの程度の「頭金」を用意すれば良いかは、その方の自己資金の状態や購入物件にもよりますが、いったいどの程度の金額を考えておけばよいのでしょうか。まずは不動産投資に関する費用について考えてみましょう。
不動産投資に関する費用はどんなものがあるのか?
不動産購入費用には大まかに分けて下記の費用がかかります。
①土地購入費用
②建物購入または建築費用
③不動産仲介手数料
④売買契約書に添付する印紙代
⑤登記費用(所有権、抵当権設定などの登記費用)
⑥税金(固定資産税、都市計画税、購入後にかかってくる不動産取得税)
⑦火災保険・地震保険
このうち一番大きいのが①と②の土地・建物代金です。その他費用は土地、建物の3~6%ぐらいですからそれほど大きくありません。従って、投資総額は土地代金+建物代金+その他費用(投資総額の3~6%程度)と考えておけばよいでしょう。
投資物件のキャッシュフローはいくらぐらいか?
次に考えることは、購入物件のキャッシュフローです。これは単なる家賃ではなく、家賃から管理費用やその他修繕費用、固定資産税、保険料などを差し引いた純収入から、不動産取得税を引いて、減価償却費を足した額がキャッシュフローになります。
少なくとも、ローンの毎月返済額がこれを上回らないようにしたいものです。また、建物やその他設備投資額に対応するローンの金利は税額を計算する際に、コストとして計上することができますが、土地購入代金に見合う分は控除対象にはなりませんのでご注意ください。
不動産ローンはどの程度借りるか?
不動産を購入する時に、多くの方は金融機関からローンを借りると思います。物件の評価、借入人の属性や収入にもよりますが、通常は購入代金の70~80%ぐらい、場合によって100%近く借入できる場合もあります。
借入額が多いほどレバレッジが効いて、投資元本当たりの利回りは高くなりますが、その反面、毎月の返済額が大きくなり、キャッシュフローが収入を上回る場合もあります。これは、通常、ローンの返済方法は、元利均等返済型で毎月の支払額に一定の元本返済金額が組み込まれているためです。
結論として、ローン借入額は、家賃収入から経費や税金を差し引き、減価償却費を加算した純キャッシュフローの範囲内で、毎月の返済が可能な金額に収めるのが一般的には良いと考えられます。また、購入代金に対する借入比率(掛け目という)があまり高くなると、借入金利は高くなる傾向がありますから注意しておきましょう。
不動産投資のタイプと頭金の考え方
(1)不動産等投資で毎月のキャッシュフローを得たい場合
高齢者の方には、年金代わりのように毎月安定したキャッシュフローを不動産投資で得たい方も多くいらっしゃいます。その場合は、ローン返済額が多いと手元に残るキャシュフローは少なくなってしまうので、頭金を多く(不動産価格の20~30%)準備して、ローンを抑え目にしたほうが良いでしょう。
また、不動産収入を生活費に充てる場合は、さらに余裕を持った資金計画を立てておくほうが良いと考えられます。建物が古くなって修繕費用が発生したり、テナントの退去により家賃が一時的にストップすることも考えておく必要があるからです。
(2)将来的に資産を形成したい場合
若~中年層の方で、今はキャッシュフローを必要としないが、将来の資産形成をしたいという場合は、ネット収入のすべてをローンの返済に充当しても良いと思います。
また、本業の収入に余裕のある方は、場合によっては不動産のネット収入をローン返済額が多少上回っても大丈夫でしょう。
ローン返済期間が30年と仮定したら、その期間で返済が終われば、投資した不動産は借入が無くなった状態で資産として残すことができます。また、インフレが一定レベルで推移して不動産の価値が上昇すれば、その分、投資した不動産の資産価値が向上します。
従って、頭金は最大で不動産価格の10%、それより少ない金額でも構いません。ご自身の信用力を活かして、フルローンが利用できるのであれば、利用してしまっても構いません。
(3)転売益を狙いたい方
株式やFXのように、その時の市況や需給バランスで値動きする投資では、転売益を狙いやすいですが、不動産の場合は、通常は緩やかに上下しますので、それを目指す投資には向いていないかもしれません。
ただし、投資額に対してローンを組めれば、純投資金額は頭金だけになりますから、不動産価格が10%でも上がれば、純投資の金額に対しての値上がり率は大きく、投資利回り高くなります。経済情勢が良く、インフレ―ションが先行き見込まれる環境であれば、転売益を狙える可能性も十分あります。
この場合は、フルローンやオーバーローンを利用したハイレバレッジで、頭金は0~10万円となります。
ただし、フルローンやオーバーローンを利用するには、物件の担保価値や借入人の信用力が鍵となりますので、誰もが利用できるというものではありません。
不動産投資でやってはいけないこと、気を付けること
不動産投資は頭金が少なくても取り組むことができますが、全体で考えれば、借金を含めた投資です。当然、借金は返済しなければなりませんので、不動産投資にあたっては、さまざまなことに気を付ける必要があります。
(1)割高な物件を買わないこと
郊外のアパートなど土地代が安い物件は、都心物件に比べて利回りが高いので、割安に感じる場合がありますが、建物の減価償却費用も大きいので、実際の純収入はそれほど大きくなく、結局としては割安では無い場合があります。
不動産を購入する際は、その営業マンの言葉を鵜呑みにせずに、自らで周辺売買事例や家賃相場を検証して、金融機関の評価なども参考にして物件の価値をしっかりと査定することが大切です。
(2)家賃保証がついているからと言って安心しないこと
サブリースで賃料保証付きの物件は、安心して購入できるように感じますが、よく見ると10年などの期間付き保証であったり、有事の際には、家賃を変更できる条項などが付いている場合があります。
また、保証会社が倒産した場合、株式会社は有限責任ですからその保証行為は実質無効になります。
サブリースというビジネスモデルは、サブリースを請け負う会社が家賃保証のリスクを取るわけですから、通常の家賃よりは必ず低くして、その分を保証料として収益を上げないとそのビジネスは成り立ちません。もし高い場合は何か問題がないか、その理由は何かよく検証して下さい。
(3)無理をしないこと
不動産投資は一時的ではなく、投資したからには長く続けなければなりません。
自分の本業の収入や家族構成、経済状態を考えて無理のない投資をすることが大切です。もし、無理な借入をして不動産投資を行った後にテナントは入らなくなるなどのアクシデントが起こった場合は、ローン返済は待ってくれませんので、他の資金で支払わざるを得ません。どうしても支払えない場合は、物件を売却するほかないでしょうが、大きな損失が出る可能性があり、売却代金で借を全額返済することができないかもしれません。
投資はどのような投資でも、一定のリスクは伴います。ある程度の余裕をもって投資を始め、徐々に投資額を大きくしていくことも大切です。やはり全額ローンを借りて投資するよりは、一定レベルの頭金は用意して投資に臨むべきだと考えられます。
まとめ
今はフルローンやオーバーローンで、頭金が無くても不動産投資が可能な場合もあります。フルローンやオーバーローンであれば、不動産投資は始めやすいものの、その後のキャッシュフローリスクは高まります。
ご自身の不動産投資の目的、収入の状況によって、頭金をどの程度準備して、キャッシュフローリスクを抑えるかを決めましょう。くれぐれも無理のない投資はしないように!!
頭金としては利用しなくても、せめて、総投資額の10%程度の初期費用は準備しておくようにしましょう。
合わせて読みたい...
「フルローン」については、以下の記事で詳しく解説しています。
「初期費用」については、以下の記事で詳しく解説しています。
「元手」については、以下の記事で詳しく解説しています。