人生100年時代となって、最近では定年を70歳まで引き上げようという意見も出ています。
しかし、大学を卒業して、定年まで働き上げるという人生観もここにきて変化が見られ、働き方や人生観は多様化して来ています。
人生をいわゆる「社畜」として生きるより、出世や社会的な地位にはこだわらず、自分らしく自由に生きたいという思いから、セミリタイアを目指す方も増えてきています。では、思い切って20代でセミリタイアするのは可能でしょうか?
この記事では、20代でセミリタイアするための方法や必要なお金について解説して行きます。
セミリタイアとは
リタイアといっても、いろいろと種類があります。ここで紹介するセミリタイア以外にも、アーリーリタイアや完全リタイアなど、混合してしまいがちなので、ここではまず、セミリタイアの定義について解説して行きます。
セミリタイアの定義
セミリタイヤは早期に会社を退職し、リタイヤ後も生活の足しになる程度の簡単な仕事で、一定の収入を得て行く生活スタイルを指します。
セミリタイアの生活を送るには、在職中に貯えた資金を切り崩しながら、週に数回のアルバイト、もしくは投資活動やアフィリエイトなどから収入を得ることが求められます。
セミリタイアを実現するには、在職中にまとまった生活資金を確保することと、退職後に、収入を得られる方法を見つけておく必要があります。
アーリーリタイアとの違い
セミリタイアはアーリーリタイアの一種です。
アーリーリタイアは会社を早期退職することですが、その後、全く仕事をしない「完全リタイア」、最低限の仕事をする「セミリタイア」、期間限定で働いたり休んだりを繰り返す「ミニリタイア」に分類されます。
しかし、アーリーリタイアというと、全く仕事をしないイメージがあるので、アーリーリタイア=完全リタイアと一般的には捉えられています。
20代でセミリタイアは可能か?
セミリタイアに適切な年齢は何歳でしょうか?
一般的には40代~50代といわれています。この年代であれば、セミリタイアまでに十分時間があるので、しっかり資金を蓄えることが出来ます。
更に、結婚、マイホーム購入、子育てなど、お金が必要となるライフイベントが一巡し、老後までのお金の計算がしやすいことも理由としてあげられます。
また、40代~50代であれば、会社によっては早期退職制度により、退職金を割り増しして支払ってくれることもあり、セミリタイアを後押ししてくれる要因となります。
このように、40代~50代が適正年代と考えられるセミリタイアですが、必要な資産やセミリタイア後の収入が確保出来るのであれば、年齢に関わらず何歳でもセミリタイアは可能です。
当然、40代~50代に比べれば、人数は格段に少なくなりますが、若い内から多額の資産を得てリタイアする20代もいれば、セミリタイアまでに一定の資産を蓄え、その後は、田舎などで生活費のかからない生活を送りながら、必要最低限のアルバイトなどで過ごすような20代もいます。
ただし、20代の場合ではセミリタイア後の人生は、人によっては70~80年と、とても長いものです。更に、結婚、出産、子育てなどのライフイベントも多く残っていますので、それなりのお金が必要になるでしょう。
更に、セミリタイアまでの資産形成の準備期間も短くなるので、セミリタイアをクリアするためのハードルは決して低いとは言えません。
20代でセミリタイアを達成するのは、簡単ではありませんので、セミリタイア後の資金計画をきちんと立て、それを実行していくとともに、資産運用で効率よく稼いで行くことが必要となります。
20代でセミリタイアするために準備するべきこと
では、20代でセミリタイアするために、事前に準備しておくことは何でしょうか?
- セミリタイアの目的とセミリタイア後にどのような暮らしをしたいかを考える。
- セミリタイア後に必要な生活費と、それまでに貯めておくことができるお金を計算する。
- 資産運用でどれくらいの生活費を稼ぐことができるか計算する。
セミリタイア後もかかる生活費について
まず、セミリタイア後に必要は生活費について考えてみましょう。
2022年2月8日に総務省から2021年の家計調査が発表されました。この調査結果によると、単身者の月の消費支出は平均で154,937円とのことです。
では、内訳を見てみましょう。
費用項目 | 金額(円) |
食料 | 38,410 |
住居 | 22,117 |
光熱・水道 | 11,358 |
家具・家事用品 | 5,687 |
被服及び履物 | 4,606 |
保健医療 | 7,625 |
交通・通信 | 18,819 |
教育 | 7 |
教養娯楽 | 17,082 |
小遣い・交際費・美容院等 | 29,226 |
消費支出計 | 154,937 |
ちなみに、二人以上の世帯ですと平均支出は279,024円となるようです。
セミリタイア時に必要なお金はいくらか?
では、20代でセミリタイア以後、一体どれくらいのお金を消費することになるでしょうか。単身者の毎月の支出をもとに計算してみましょう。
ぎりぎり29歳でセミリタイアするとして、日本人の平均寿命は約85歳ですから、30歳から85歳までの55年間のセミリタイア生活を送ると仮定します。
消費支出は約15万円でしたので、一年間の支出は15万円×12ヶ月で180万円ということになります。
これが55年間ですので、55年間×180万円は9,900万円で約1億円近くのお金がかかるという計算になります。
この金額だけ見てしまうと、20代でセミリタイアなんてとても現実的でないと思えてしまいます。おそらく、普通に貯蓄だけで準備するのでは、30代でのセミリタイアも難しいでしょう。
20代でセミリタイアを可能にする戦略
20代でセミリタイアするのは可能ですが、資金面でいろいろとハードルが高いことが分かりました。それでも20代でセミリタイアするためには、どうしたら良いでしょうか?ここでは、20代でセミリタイアを達成するためのいくつかの戦略をご紹介します。
戦略1:投資で資産を作る
セミリタイア時にある程度の資金を確保するには、投資で資産を作るのが早道です。
しかし、短期間で高い収益を上げようとする投資は、どうしてもハイリスクになってしまいます。場合によっては、元手がほとんど残らなかったり、逆に借金を抱えてしまうこともあります。
ここでは、短期間である程度の資産を作る方法を紹介しますが、リスクが相応に高いこともご承知おきください。
株式投資
株式投資は、長期投資が基本ですが、20代でアーリーリタイアを目指すのであれば、1~3年で値上がり益を狙うような短期投資が必要となります。
しかし、デイトレードのように、売り買いを繰り返して利益を稼ぐのは、本業に影響を及ぼしてしまいますので、不向きでしょう。
では、そんなに短期間で値上がりが見込める株はあるのでしょうか?
中小型株には、値動きが大きいものがありますが、なかなかそのような銘柄を探し出すのは難しいと思われますので、大型株に目を向けてみましょう。
例えば、トヨタ自動車はこの2年で株価は約2倍に上がっています。また、筆者のお勧めは米国株です。アップルやAmazonの株価も、この2年間で3倍以上になっています。
社会の変化により、電気自動車の普及やIT化は更に進むと予想されます。その流れをリードしていく大企業の株式が意外にもまだ上昇の余地があるようです。
不動産投資
不動産投資は、投資金額が大きくなるので、金融機関からのローンを利用しての投資となります。
20代でも、勤務先、年収、勤続年数などの属性が良ければ、金融機関の審査も通り、ローンを利用することができます。ローンを活用して、マンションを複数、もしくは、アパート1棟を保有すれば、セミリタイア後の収入の足しになるでしょう。
人気のある都心の好立地のマンションでは、投資利回りが低く、場合によっては、キャッシュフローがマイナスになるものもあります。このようなタイプの不動産は、老後の年金代わりとしての位置づけになりますので、セミリタイア対策には不向きでしょう。
むしろ、利回りが取れる、少し郊外のファミリータイプのマンションやアパートの投資の方がお勧めです。アパートであれば、セミリタイア後は、不動産管理を自分で行うことにより、管理費用を節約することもできます。
暗号資産投資・FX
暗号資産(仮想通貨)やFX(外国為替証拠金取引)は、ある種、ギャンブルのようになってしまいますが、値動きが大きく、更にレバレッジを利かすこともできますので、少額の投資で大きな利益を狙うこともできます。
半面、それ以上に損をする可能性もありますので、運用資産全額を投入するのではなく、一部の資産を入れてみるのが良いでしょう。
投資も、給与収入と同様に、稼いだ分だけ税金がかかります。それぞれの投資で、投資収益に対する税率が異なりますので、そのあたりも注意をしてください。
戦略2:年収の高い企業で働く
2019年の初任給を学歴別に見た厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」によると、大卒の初任給の平均は男性で21万2,800円、女性で20万6,900円でした。
日本の一般的な会社の給与体系ですと、20代でそれほど給与が増えることは期待できません。この平均的な給与であると、セミリタイアのための貯蓄を確保するのは、なかなか容易ではありません。
しかし、20代でも年収1,000万円を狙えるような会社や職種もあります。就職するのも難しいですし、仕事も大変かと思いますが、20代でセミリタイアするための資金を稼ぐ近道にはなるでしょう。
- 難関専門資格職(弁護士、医師、会計士、パイロットなど)
- 営業職(証券、生命保険、不動産など)
- 金融専門職(外資系金融機関、国内金融機関の投資銀行部門など)
- 海外駐在(総合商社、プラントなど)
- コンサルティング会社
- 大手外資系企業(IT企業など)
- マスコミ(テレビ局、出版社、広告代理店など)
戦略3:起業して安定した収入を持つ
就職した企業での収入がそれほど高くない場合は、在職中にセミリタイアを前提に起業をするという手もあります。もちろん、会社によっては副業を禁止しているところもありますが、最近は副業に対して寛容な社会になって来ています。
セミリタイア時に起業をしても、収益が安定するまでに時間がかかってしまいますので、在職中に時間的な余裕があれば起業に踏み切って、安定した収入が確保できる準備をするのも一つの手です。
WEBサイトを立ち上げたり、YouTubeのチャンネルを開設するなど、初期投資がほとんどいらないような副業もあります。アフィリエイトや広告料収入が少しでも入るようになれば、セミリタイア後の収入を安定させることができます。
戦略4:簡易労働と資産運用で収入を確保する
戦略1~3までは、それなりの運や才能が必要となりますので、万人向けとは言えません。
最も一般的な方法は、セミリタイア時までにある程度の資産を作り、セミリタイア後は、ある程度の仕事をしながら、資産運用収益で収入も確保することでしょう。
セミリタイア時の資産が多ければ、セミリタイア後の労働時間は短くて済みます。セミリタイアしていますので、仕事は「自由」に選び、やってみたいことにチャレンジしてみてください。
では、セミリタイア後の投資はどうしたら良いでしょうか?
この時期は、あまりリスクの高い投資はお勧めできません。FXや暗号資産などは、投資元本を大きく減らしてしまうこともありますので、よほど得意ではない限り、投資対象からは外すようにしましょう。
株式投資
株式投資は、長期投資が基本戦略となります。今後成長が期待できる産業分野(今ですと、ヘルスケアやITと言われています)に投資をして、長期での値上がりを期待するようにしましょう。
生活費の足しにしたい方は、高配当株へ幾分か投資を振り分けることも可能です。銀行や商社は、長期での成長産業ではありませんが、安定して高配当を出しています。
不動産投資
セミリタイア後は、金融機関からのローンが期待できませんので、不動産投資は、自己資金の範囲でできるものに限られます。
REIT(上場不動産投資信託)であれば、年率3~5%くらいの安定した配当金がを期待することができるので、値上がり益は狙えませんが、生活費の足しにしたい方には向いています。
また、DIYなどが得意であったり、興味がある方は、戸建て投資にチャレンジしてみることもできます。ボロ戸建てと呼ばれる築年数が古いものであれば、数百万円で購入可能なものもありますので、時間や手間をかけて自分でリフォームをして、売却益を狙う投資となります。
失敗例から学ぶ20代のセミリタイアで注意すべきこと
20代で目標であったセミリタイアを果たしても、その後失敗してしまうケースもあるようです。ここでは、よくある失敗例を3つほど紹介していきます。
失敗例1:途中で資金が足りなくなってしまう
どんなにきちんとした資金計画を立てても、突発的にお金がかかるハプニングやイベントが起きてしまうことがあります。
自分が病気で倒れたり、パートナーや両親が病気にかかれば医療費がかかります。会社勤めであれば、休暇制度など、見た目以上に福利厚生のシステムが充実していて、まさかの時に備えることができますが、セミリタイア後であれば、そうも行きません。
最初は、セミリタイア後は一人で気楽にと考えていても、途中で結婚したり、子供を持つこともあるでしょう。そうなれば、当初計画した2倍以上のお金がかかります。
頑張って稼ごうとしても、セミリタイア後の仕事ですと、なかなかそういう訳にもいきませんので、セミリタイア時の貯蓄に余裕を持たせるか、まさかに備えて保険に加入しておく方が安心でしょう。
失敗例2:セミリタイアに飽きてしまう
20代でセミリタイアすれば、その後の人生は、それまで生きてきた何倍もの時間が残されています。忙しい社会人生活から逃れて、数年はのんびり過ごすことを楽しむことができても、人によっては、それが苦痛になってくる場合もあるでしょう。
20代でのセミリタイアとなれば、ほとんどの方は、その後は比較的質素な生活を送ることになります。そのあたりも苦痛になり、もう一度、バリバリと働きたいと思っても、ブランクが長くなればなるほど、社会復帰も容易ではありません。
セミリタイア後のライフスタイルが自分の性格に本当に合っているのか、真剣に考える必要はあるでしょう。場合によっては、期間限定でセミリタイアしてみるというのでも良いでしょう。
失敗例3:人との繋がりが少なくなってしまう
20代でセミリタイアすると、どうしても同世代との繋がりが少なくなってしまいます。
セミリタイアやリタイアしているのは、自分よりもかなり上の世代となるので、必然的に繋がりができるのは、その世代になりますが、上の世代との付き合いが苦手な方は、セミリタイアにより、人との繋がりが少なくなってしまうこともあるでしょう。
セミリタイア直後は、職場などでの煩わしい人付き合いからの解放感に満足するかもしれませんが、その後は孤独や不安を感じるかもしれません。
セミリタイア後に何十年も田舎で人との繋がりを断ち切って過ごせる方というのは、かなり少ないと思います。何かしら社会と繋がっておくのが、最終的には精神的な安定につながります。
セミリタイア後に地域や社会とどのように繋がりを持って行くか、何を楽しみにするかも考えて、セミリタイアを実行に移すようにしましょう。
まとめ
20代のセミリタイアは、その後の人生は、50年から60年と長いものです。通常のリタイアであれば、40年くらい働いて残りの人生が20年くらいと準備期間はたっぷりありますが、20代でのアーリーリタイアですと、残りの人生50~60年に対して、準備期間は7~8年と極端に短くなってしまいます。
勢いだけでセミリタイア生活に突入してしまうと、残りの人生を持て余しかねませんので、20代でセミリタイアして、安定した生活を送りたいのであれば、セミリタイア前に、きちんとしたライフプランを立て、更に、余裕を持った資金計画を持つことが大切です。
決して低いハードルではありませんが、目標をもって20代を走りぬくのは、それだけで意義があると思います。