積立投資というと地味な方法に聞こえますが、実は、有効な投資方法です。特に個人投資家にとっては、積立投資は、長期的な時間を味方にできるとても有利な方法です。この記事では、積立投資による資産形成について解説して行きます。
積立投資とは
積立投資とは一定の金額を定期的に投資していくことです。「投資を始めたいけれども大きな資金が無い」という方、「投資はしたいけれどもリスクが怖い」という方には、初めやすい投資方法です。
積立投資のメリット
①少額でスタートできる
積立投資は、毎月の給与の一部からスタートできます。ワンコイン100円、または数百円から開始できる金融機関もあります。
その意味では、サラリーマンが20歳代、30歳代から老後に向けた資産形成を行う上でとても有効な投資方法だと思います。
例えば、毎月3万円を20年間積立投資したと仮定すると、投資元本だけでも720万円になります。更に、それが金利や配当収入を複利効果で産み出しますので、その元本をさらに大きく膨らますことができる可能性があります。
②投資に関する労力不要
投資を開始しようとすると、どの銘柄をどの時期に投資するべきかなど、多くのことを考えなければなりません。しかし、日常の生活や本業の仕事が忙しい方は、自分の余暇時間にとてもそのようなことをやっている時間も気力も少ないと思います。
積立投資は金額と時間を分散した投資ですので、投資する商品を決めてしまえば、あとは継続的に自動的に投資を続けることができます。
もちろん、投資対象を間違えると元も子もないので、長期的に見て上昇するであろうと考えられる投資対象を最初に選ぶことが肝心です。
③複利運用は資産増加率が高い
積立投資のメリットは、投資した金額だけでなく、利息や配当金などが元金に加算されて元金が膨らみ、それがさらに投資利益を産むという、複利運用の効果を得られることです。
例えば年間10%の収益が出るとして、利息も含めた複利で運用仮定すると、投資2年目は元金が110%に増えて、3年目は121%、4年目は133.1%、5年目は146.41%となります。
もし、単利であれば、2年目は110%と同じですが、以降、120%、130%、140%と、長期運用であればあるほと、複利運用の効果は出てきます。
この複利効果を繰り返していくと、10年後には、単利運用に比べて、10%以上の収益の差が出ます。
積立投資のデメリット
積立投資は継続して長期的に積み立てて増やしていくことが大切です。大きな金額を投資するのではないので一度に大きなリターンを得ることは難しいです。
これはFX(外国為替証拠金取引)の様に、少額の投資でも、25倍ものレバレッジをかけて、大きくリスクを取って大きな利益を求めたい投資家にとっては、とてもつまらない投資に見えます。
積立投資は小さなお金を時間の経過とともに積み上げる投資です。途中でマイホーム購入や結婚などのイベントでお金が必要になった際、やめてしまおうかと思うかも知れません。しかし、長期で継続していくことが必要ですので、ある程度の根気が必要ですし、無理な金額で積み立てることはやめて、様子を見ながら増減させていくのが良いでしょう。
「貯蓄型」積立投資
それでは、金融商品別にによる積立投資の方法を紹介していきます。まずは、貯蓄型積立投資です。
これは、銀行の積立預金に代表されるような、元金が保証される投資方法です。商品としては、「社内預金」、「財形貯蓄」、「定期預金」などがあります。
ただし、預金金利自体、大口定期預金であっても金利は0.01%くらいと、とても低く、利息による資産の増加はなかなか見込むことはできません。
しかし、社内預金であれば会社が利息分を補助していて、これよりは高い利回りになる場合もありますし、財形貯蓄は目的に応じて利息が非課税になる優遇制度があります。
積み立てた金額は必ず残りますので、運用リスクを全くとりたくない人には、向いている積立方法と言えます。
外貨預金であれば、金融機関によっては、円よりも高い利息を得ることができます。特に、新興国通貨であれば、利息が高い国もあるので、貯蓄型積立投資で金利収入を狙うこともできます。
ただし、為替は変動しますので、投資する通貨によっては下落する可能性もあります。更に、外貨預金は為替手数料などもかかりますので、通貨や金融機関をよく調べてから始めるようにしましょう。
「投資型」積立投資
「投資型」の積み立ては、「貯蓄型」と同様に定期的にお金を積み立てて行きますが、お金の預け先が株式や債券、投資信託など、元本が保証されていない投資商品を使って投資します。預金ではなかなか資産を増やすことはできませんが、少しでもリスクはとっても良いので、少しづつは資産を増やしたいという人には向いている積立投資です。
①株式の積立
株価は短期的に見れば、業績や経済環境によって乱高下しますが、毎年、安定して利益を出すことができる企業や、今後、成長が期待できるような企業などは、長期的には株価は上がっていくことが期待できます。
そのような企業の株式を長期的に、価格が高い時期、価格が安い時期に限らず、一定金額で投資をしていくと、取得価格の平均化ができて、高値の時期だけ買ってしまうような失敗を避けることができます。
ただし、長期的に特定少数の銘柄に投資すると、大きく利益を狙うことができる可能性もありますが同時に投資対象が偏るので、その分、リスクも大きくなります。銘柄を分散することでリスクを軽減することも大切です。
②債券の積立
債券の積み立ては、国が発行している国債や、企業が発行している社債を定期的に少額ずつ購入していくものですが、現在の低金利の状況では、預貯金と利息はほとんど変わりませんので、こちらも資産が増えることはあまり期待できません。
銘柄数も株式よりは少なく、最低投資金額もそれなりに大きいので、毎月数万円を積み立てるのは、国債などに投資をするか、債券で運用する投資信託を購入していく方法になります。
③投資信託の積立
投資信託は積立投資に最も適した商品であると考えられます。
投資信託は、運用をプロに任せることができますし、個別の株式だけではなく、多くの銘柄の株式や債券に対して複合的に投資されている商品なので、投資の分散をすることができます。投資信託を長期で積立投資をすれば、投資時期の分散・投資銘柄の分散を図ることができ、投資リスクを減少させることができます。
特に積み立てに向いていると思われる商品は、市場連動型のETF(上場投資信託)や投資信託です。具体的には米国の主要500社の時価総額による加重平均から算出した「S&P500指数」に連動した商品や日本の代表的な225社に時価総額加重平均から算出した「日経225」などに連動した商品です。
これらは、多くの企業に投資をするのでリスクを分散することができ、かつ、その市場の主要な会社を網羅して投資をするので、その国の経済の成長に合わせて価格は上昇していく可能性が高いと考えられます。
もちろん、個別銘柄への投資と違って、短期間で急激に上昇することは期待できませんが、企業業績が確実に上昇すれば、長期的にはそれに追随して株価も安定的に上昇に向かうことが期待できます。
これらの投資は、つみたてNISAやiDeCoの制度を使えば、限度額はあるものの一定の金額までは、投資収益が非課税となります。初心者の方は、まずは、このような非課税枠を利用して積立投資を始めることをお勧めします。
④保険型積立
保険というと、損害保険や生命保険というイメージがあるかも知れませんが、保険会社では、貯蓄型の保険も取り扱っています。保険型積立は保険商品を使ってお金を積み立てて行きます。
将来の解約時や満期時に償還金を受け取ることができますので、いざというときの備えをしながら、資産も増やせるという効果があります。
積立投資としての利回りは、貯蓄型積立と同様に高くありませんが、払い込んだ保険金は所得控除を受けられる場合がありますので、よりメリットは大きくなります。しかし、中途解約すると返戻金が払い込んだ金額を下回るリスクがあります。
では、貯蓄型の保険商品を紹介していきます。
終身保険
代表的な積立型の保険で、毎月一定の保険料を予め決めた期間(一定年齢もしくは一定期間など)、払い込み、その後、死亡や高度障害などが発生したときに保険金を受け取ります。
この商品の大きなデメリットは、払い込み期間まで行かず、短期に解約した場合に、解約返戻金が保険料払い込み額を下回ることがあることです。
ある一定の期間を超えると、総払い込み金額を上回りますが、短期の運用には不向きです。また、銀行預金とは違って保険会社によって条件が結構違いますので、よく比較して加入するほうがよいでしょう。
最近では、銀行の窓口などでも、外貨建てで運用するものを勧めてきます。円よりも外貨の方が利息が高いので、予定利率が高く、保険料も安くなるメリットがありますが、為替リスクや手数料もかかりますので、メリット・デメリットをよく比較して始めるようにして下さい。
学資保険
学資保険とは、子どもの学費を貯めるための保険で、契約時に決めた保険料を払い込むことで、子どもが一定の年齢になったときに、「祝い金」、「満期金」という名目でまとまった額の給付金を受け取ることができます。
学資保険には、「貯蓄型」と「保障型」があります。保障型であれば、子供や親の万が一に備えることができますが、払い込んだ保険金額より、受け取る満期金が少なくなる場合があります。
「貯蓄型」は、払い込んだ保険金額より受け取る満期金が多くなるので、より積立投資に近い性格を持ちます。
生命保険会社が提供する商品によって、返戻率や保障内容が異なりますので、自分がどのような目的で学資保険に加入するかによって、どの商品が合っているかを判断しましょう。
年金保険
年金保険は一定の保険金額を毎月払い込み、老後に一定の期間または終身において一定額を毎月または毎年年金として受け取りができる、私的年金的な性格を持ちます。
国民年金しか加入していない自営業者など、公的年金だけでは老後の生活資金が心もとない方には向いている保険です。
ファンドマネージャーからのアドバイス
積立ては、資産形成において大変役に立つ一つの方法です。ある程度の資金がたまるのを待って資産運用を始めるよりも、まずは、少額から半ば強制的に始めると、いつの間にか貯まっていることを実感できるでしょう。
投資をするには、金額・銘柄・投資のタイミングを決める必要があります。毎回、毎回、そのようなことを考えるのは手間ですし、なかなか時間もかけられないと思いますが、積立投資であれば、一度最初に決めてしまえば、後は自動的に投資をすることができます。
ここまで、「貯蓄型」「投資型」「保険型」の3種類の積立投資を紹介してきましたが、どれを使うかは貯める目的で使い分けるのが良いでしょう。
元本割れなどのリスクは絶対取りたくない、運用収益は、も自身の収入増でカバーできる自身がある方は貯蓄型お勧めです。
ある程度リスクをとっても運用収益も含めて増やしたい、また、お金が必要になるまで、まだ時間的に余裕がある方であれば投資型お勧めです。
子供の教育資金や老後資金など、お金を使う目的が決まっていて、途中で引き出す予定がないのであれば保険型が良いでしょう。
投資初心者の20代から30代なりたての方であれば、つみたてNISAがお勧めです。つみたてNISAは、積立に適した、ETFやETFに連動した商品が対象となっていますので、ある程度の運用収益を狙いながら、分散投資を図ることができます。
つみたてNISAや他の積立投資を始めるのであれば、ネット専業銀行、ネット証券、ネット保険会社では、手数料も安く、更に、商品ラインナップも豊富なので、隙間時間を利用して、スマホなどで調べてみてください。
まとめ
積立投資は、お金をしっかり貯める最良な手段です。ある程度お金が貯まるを待つよりも、積立投資で早めに資産形成を始めるのをお勧めします。ただし、無理の無い範囲で始めるようにしましょう。
積立投資は、貯蓄型・投資型・保険型の3種類がありますが、かけられる時間や目的によって、どれにするかを決めてください。
とりあえず始めるということであれば、まずは「つみたてNISA」がお勧めです。ネット証券では、幅広い投資商品揃っています。