不動産投資を失敗して自己破産になってしまった失敗談などをネットでも見ることができます。
不動産投資はローンを活用できる資産形成のために有効な手段ですが、投資金額やローンの金額も大きいことから、失敗してしまうと破産につながりかねないため、とても危険な投資であると感じられる方も多いでしょう。
確かに不動産投資で破産する可能性はゼロとは言い切れません。
しかし、実際には、不動産投資で破産してしまった方はとても少ないと思います。金融機関も積極的に融資している分野ですので、それほど、危険があるとは考えにくいです。
では、その少ない確率でも破産してしまわないようには何を気を付けたら良いのでしょうか。
ここでは、不動産投資で破産する流れ、破産したらどうなるか、また、破産しないための対策について説明していきます。
不動産投資で自己破産になることはあるか
不動産投資ローンの利息や元金を支払うことができずにいると、最終的に自己破産になることはあり得ます。
もし、全額自己資金で不動産を購入していれば、自己破産になることはありません。もちろん、他の投資やギャンブルなどで借金があれば別ですが。
不動産投資ローンの利息や元金を支払えなくなるのは、以下のパターンが多いでしょう。
- 空室や家賃の値下がりで、賃料収入が大幅に減少し、本業の給与収入を足しても、利息や元金が支払えなくなる。
- 毎月ある程度の自己資金を充当し、不動産経営をしていたが、働いていた会社の業績が芳しくなく、給与が減少してしまい(もしくは解雇になってしまい)、利息や元金が支払えなくなる。
- ローンの期限が到来したものの、一括返済や借り換えができない。更に、物件を売却して返済しても、ローン残債の一部しか返済することができず、借金が残ってしまう。
不動産投資で自己破産になるまでの流れ
不動産投資によって自己破産までに至ってしまう経過は以下の流れとなります。
- 空室発生、家賃減額、サブリース先の倒産などによって、家賃収入が大幅に減少
- 不足分を給与収入や手元資金にて対応
- 給与収入や手元資金で追いつかなくなり、ついには延滞
- 延滞発生により、期限の利益喪失。元金と利息、遅延損害金の返済を求められる
- 金融機関(保証会社)からの督促を何度も受ける
- 金融機関(保証会社)もしくは債権を買い取ったサービサー(債権回収会社)が物件を差し押さえ、競売などの手続きを経て物件を売却
- 売却代金で元金と利息、遅延損害金が支払い切れない場合は、自己破産申請を余儀なくされる
ローンの返済が滞ると、金融機関もしくは保証会社から督促が来ます。督促を受けても支払いをすることができなれば、担保処分の手続きが取られてしまいます。
金融機関によっては、自社では行わずに、一定期間返済がない債権に関しては、サービサー(債権回収)に債権自体を売却しますので、そのサービサーが担保処分の手続きを取ることもあります。
担保物件は、差し押さえや競売などの手続きを経て売却されますが、それでも債務が残る場合は、給与収入などで長期間にわたって返済していくことになります。
毎月の支払いも相当な負担になりますので、返済計画が行き詰れば、自己破産の申請をせざるを得ないことになります。
借金と引き換えに不動産を渡しておしまいなら良いですが、あくまでも担保物件ですので、売却して足りない部分があれば、返済していくしかありません。
不動産投資による自己破産は、いくつかのプロセスを経ることになります。ある程度の自己資金があれば、繰り上げ返済を利用して、ローンの残高を減らすといった手もありますし、予防法や対策を取ることは可能です。
不動産投資で自己破産になる原因3例を紹介
ここでは代表的な事例をいくつか見てみましょう。
失敗例1:目先の利回りの高さに騙されてしまう
提示された利回りが高いと、どうしても他のものが見えにくくなってしまいます。
サブリース付きの物件、築古物件、地方物件、ウィークリーマンションなど特殊な方法で運用する物件は、比較的利回りが出やすい物件もあります。しかし、相場家賃に比べると高かったり、すぐに退去してしまい、その後家賃が大幅に下がってしまう場合も良く見られます。
築古や地方の物件などは、実は市場利回りはもっと高く、利回りが高いと思って買った物件が、実はかなり割高で買っているケースもあります。
失敗例2:返済能力以上の融資を受けてしまう
不動産投資で毎月の収支がプラスといっても、修繕費用や固定資産税・都市計画税を支払ったらマイナスになるケースもよくありますし、新築ワンルームマンションであれば、そもそもがマイナスのケースがほとんどです。
マイナス自体が悪いということではありません。その金額が、ご自身の給与水準に見合っているかというのが重要です、給与収入がある程度の水準以上であり、更に、自己資金も持っていれば、マイナス収支であっても問題ありませんが、例えば、年収が500万円程度で自己資金もほぼなく、毎月の収支がマイナス3万円以上(固都税・修繕費用など除く)となってくると、毎月の支払いは結構しんどくなってきます。
20代であれば、結婚などのライフイベントも発生し、出費も多くなってきます。収入の方は、コロナ禍の影響で、思ったよりも増えなく、結果、資金に行き詰ってしまう場合もあります。
不動産会社も、購入時には資金シミュレーションを作成してくれますが、あまりにも楽観的なライフプランに基づいて投資を始めてしまい、その後、資金繰りが厳しくなってしまうケースようなこともあります。
不動産会社は、支払いを保証してくれませんし、元金や利息の支払いに困っても手伝ってくれません。
失敗例3:住宅ローンで不動産投資を行ってしまう
同じ不動産を購入するにしても、自分で住むのと人に貸すのでは、目的が違うので、利用できる融資の種類も異なります。投資用不動産の場合は、不動産投資ローンですし、自宅の場合は住宅ローンです。
融資の条件は、住宅ローンの方が良いことから、投資用不動産の購入に住宅ローンの利用を進めてくる不動産会社もあります。
しかし、これは契約違反ですので、もし金融機関にばれてしまえば、一括返済を求められることになります。他の金融機関で不動産投資ローンに借り換えられれば良いですが、そういう経緯で購入した不動産はローンが借りにくいので、結局、資金を調達できずに最終的に自己破産となってしまう場合もあります。
自己破産になるとどうなるか
では、自己破産してしまった場合、どうなるのでしょうか。
- 自分の財産(預金・自宅など)がほとんど処分されてしまう
- 資格が取り消しになり、失業する可能性がある
- 信用情報機関に登録されるので、クレジットカード、携帯電話などの利用も難しくなる
- 官報に掲載される
- 一応、借金は無くなる
自己破産により債務義務が全て免除され、督促などの行為もされないというのは最大のメリットではあります。今は自己破産に対する意識も変わってきて、抵抗なく受け入れる方もいらっしゃいますし、社会も寛容にはなって来ています。
しかし、それ以上に日常生活に支障をきたすようなことも起きてしまいます。全て現金で支払うのであれば、不自由は感じないかも知れませんが、ネットショッピングなど、クレジットカードないと、とても不便です。スマホの本体も一括で支払わなければなりません。
自己破産は借金を解決する有効な最終手段ではありますが、その状態に陥らないことが重要です。
対策
では、不動産投資で自己破産にならないためにはどうしたら良いのでしょうか。
対策1:キャッシュフローを重視する
毎月の不動産投資ローンの支払いを減らす方法は、以下の通りです。
- 頭金を多く入れて、ローン金額を少なくする
- 金利が低いローンを利用する
- 借入期間を長くする
フルローンやオーバーローンによるハイレバレッジは、それはそれでメリットがありますが、キャッシュフローを安定させるには、ローン金額自体を少なくする方が安全です。借入時はフルローンであっても、その後、資金に余裕ができれば、繰り上げ返済によりローンを減らすことも考えましょう。
また、ローン期間に関しては35年が最長で、金利は2%未満(変動金利)が一般的です。ローン期間が短いと、不動産投資の収支は黒字でも元金返済のスピードに追い付けなくて、黒字倒産となるケースもあります。
築20年を超えてくる築古の物件ですと、ローン期間が35年取れなくなってきます。利回りは高くても、返済スピードも速く、キャッシュフローが厳しくなる場合もあるので、注意しましょう。
今の時代はローンも選ぶことができますので、金利が2%を超えるような場合は、物件や金融機関を変えることも視野に入れましょう。
対策2:家賃金額の妥当性を検証する
物件購入時に利回りが高く、キャッシュフローが安定しているように見えても、実は想定利回りだったり、契約時の入居者が退去後、次の入居者を募集しようとしたら、家賃を大幅に下げなければならないといったこともよく見られます。
アパートあれば、売主が、フリーレントなどのあらゆる手段を使って、とりあえず満室状態にしている場合もあります。
家賃が市場家賃より高ければ、更新のタイミングで引き下げ交渉も入りますので、物件購入時の家賃は保証されません。
購入しようとする物件の近隣相場は、ホームズやSUUMOなどの賃貸サイトでたいたいの感覚を掴むことができますし、物件近くの賃貸店舗に行けば、妥当な家賃を教えてくれます。
購入しようとする物件の本来の実力(家賃金額)は、必ず、事前に検証するようにしましょう。
対策3:自分の収入と支出を考える
不動産投資は、資産形成を目的とした投資をする方がほとんどですので、不動産投資ローンを利用して、毎月の収支が大幅にプラスとなることは、今の相場ではあまり期待できません。
不動産会社から、月々の収支がプラスになると提案を受けていても、固都税が考慮されていないことも多いですし、将来的には管理費・修繕積立金が値上がりすること考慮されていないケースもあります。
月々の収支は必ずしもプラスでないといけないという訳ではありません。これはあくまでシミュレーションの数字なので、ある程度のマイナスであっても、自分の収入の範囲内で吸収できるのであれば、大きな問題にはなりません。
年収1,000万円で独身の方が毎月5万円のマイナスであっても、それほど負担にはならないと思います。しかし、20代で子供が二人、まだ年収500万円の方であれば、毎月1万円のマイナスであっても、負担は大きいでしょう。
更に、空室が発生すれば、一時的に家賃収入が入らなくなり、自己資金で対応することになります。自分の支出と収入のレベルを保守的に予想し、不動産投資が可能かどうか判断するようにしましょう。
対策4:リスクに備えて手元資金を持つ
手元に資金があれば、空室や修繕などのリスクイベントが発生しても、余裕をもって対応できます。最低でも、家賃収入が半年入らなくても大丈夫やレベルの自己資金は持っておくようにしましょう。
一般的には、総投資額の10~30%の元手をもって不動産投資を始めると安心と言われています。
ファンドマネージャーからのアドバイス
普通の不動産会社であれば、販売した顧客が自己破産となるのは避けたいと考えています。ローンの審査をしたのは金融機関ですが、自社の販売方法が不適切であったと金融機関から疑われてしまうからです。
更に金融機関によっては、顧客が自己破産になりそうな場合は、不動産会社が顧客から物件を買い取って返済をさせることを提携の条件する場合もあるようです。
従って、普通の不動産会社であれば、自己破産につながるような販売方法は避けていますが、業歴が浅かったり、経営状況が良くない会社はなりふり構わず、あの手この手でリスクの高い物件を買わせようとする場合があります。
物件を購入する際には、相手のペースに惑わされずに、自分のペースでしっかりと、物件や相場を調べてから進めましょう。不動産会社には、あまり考える時間を与えてくれずに結論を迫ってくる会社もありますが、それは一種の販売手法です。
確かに、回答は早めにする方が良いですが、実際に物件やその周囲も見ずに、また、賃料相場も調べずに結論を出すことはしてはいけません。ちゃんと待ってくれる会社から買いましょう。
自己破産にはならなくても、毎月のキャッシュフローがギリギリであったり、手元資金を大きく切り崩すような事態になることも避けなればなりません。
まとめ
不動産投資に失敗して自己破産になる方はゼロではありません。かぼちゃの馬車やTATERUなどによる事件以外にも、自己破産になるケースもあります。
しかし、不動産投資のリスクや不動産投資購入時に気を付けるべきことを実践していれば、リスクを下げることは可能です。
他の記事も参考にしていただき、不動産投資に関する知識を深めていってください。