不動産と聞くと何だかとても危ない気がしますね。ましてや不動産投資となれば、投資金額も大きく、更に、多額の借金を背負うことになります。
しかし、不動産は消えることなく存在し続けますし、リスクと回避策が予想しやすい投資商品です。不動産投資を始める前に、リスクと回避策を理解したうえで、投資物件、不動産会社、管理会社を探していきましょう。
ここでは、不動産投資のリスクとその回避方法について解説して行きます。
不動産投資のリスク
不動産投資のリスクは、以下の3つに分類されます。
- キャッシュフロー(収支)に関するリスク
- 不動産の価値そのものに関するリスク
- 不動産投資固有のリスク
それぞれのリスクの内容と回避策について説明していきます。
キャッシュフロー(収支)の関するリスク
その1:空室リスク
空室リスクとは、投資物件に賃貸人がいなく家賃収入が入らなくなるリスクで、不動産投資における最大のリスクです。
家賃収入が入らなければ、借入金の利息・元金の返済などを自己資金で負担することになります。空室リスクの発生を防ぐには、一にも二にも好立地(賃貸人気のある立地)での物件選びが大切になります。
もちろん、賃貸に強い賃貸管理会社選ぶも重要ではありますが、好立地の物件であれば賃貸管理会社の力量に関係なく空室リスクを回避することはできます。
但し、空室となる期間をなるべく短くしたい、また、より高い賃料を取りたい、更に、信用力の高い法人に貸したいなどのニーズをより満たしてくれるのは賃貸に強い賃貸管理会社です。
また、サブリースという家賃保証の制度を利用して、空室リスクを回避する方法もありますが、これは一種の保険ですので、月々受け取る家賃はその保険料分安くなります。収支に余裕があったり、リスクを絶対回避したいと思われる方はサブリースを活用することも検討されるべきでしょう。
その2:家賃滞納リスク
家賃滞納リスクとは、入居者が家賃の支払いを滞納するリスクです。滞納に関する詳しいデータは他の記事で紹介していきますが、うっかりした払い忘れなどもあるようで、滞納率はゼロではありません。
家賃の滞納があれば、空室と同じ状況です。滞納が発生した際に自身で入居者に連絡して支払いを督促することは手間なので、多くの方は、賃貸管理会社に家賃回収業務を委託していますが、滞納処理に強い賃貸管理会社を選ぶ必要があります。
最近では入居条件に保証会社への加入を義務付けているような物件も多くなってきています。保証会社は延滞が発生しても、入居者に代わって家賃を支払ってくれますので、投資家にとっては安心な制度です。中古物件を購入する際には、できるだけ保証会社利用の物件を選ぶようにしましょう。
そうでない場合は、入居者の勤務先や収入の状況、これまでの滞納の有無を確認しましょう。もちろん、サブリースであれば、家賃滞納リスクはありません。
その3:金利上昇リスク
金利上昇リスクとは、ローンの金利が上昇し、月々の支払利息が増加してしまい収支が悪化してしまうリスクです。
2,000万円のローンに対して、金利が1%上がれば、利息負担は年間で20万円増えます。利息が増えたからといって、賃料を上げることはできません。
金利上昇リスクを抑えるには、固定金利で借りたり、手元資金に余裕があれば繰り上げ返済をして、ローンの残高を減らすという方法があります。
固定金利は変動金利に比べて元々金利が高いことと、現在の社会状況を考えれば低金利がまだまだ続くと考える方が多いことから、変動金利を選択する方は多いですが、金利上昇リスクを潜在的に抱えていることに注意をする必要があります。
その4:修繕リスク
修繕リスクとは、修繕・設備費用が発生するリスクです。
新築物件であれば修繕リスクは低いですが、中古物件であれば、エアコン、温水洗浄便座、給湯器の修繕がすぐに必要となることもあります。また、入居者の退去にともない、壁紙・床などのリフォーム費用がかかる場合もあります。
各設備の耐用年数を確認し、入れ替えのタイミングを予測し、資金シミュレーションを作成するとともに、不動産購入時には過去の修繕履歴なども確認するようにしましょう。
最近では、賃貸管理会社が修繕・設備費用を負担するサービスをしていたり、修繕・設備費用をカバーできるような保険も出てきていますので、それらを上手く活用して修繕リスクをコントロールしましょう。自身で負担する予定であれば、シミュレーションに従い、手元資金として確保しておきましょう。
その5:管理費・修繕積立金に関するリスク
管理費・修繕積立金に関するリスクは、投資対象がマンションである場合、管理組合の収入が不足し、管理費・修繕積立金が増額されるリスクです。
投資用のマンションだけでなく、ファミリータイプのマンションでも管理費・修繕積立金が足りなくなることはあります。当初の見込みが甘かったり、物価上昇により修繕工事費用が想定外にかかったりするなど、原因はさまざまです。
機械式駐車場のあるマンションは、自家用車を保有する世帯の減少に伴い、駐車場収入が予算より少なくなり、更に、メンテナンス費用が想定外にかかるといったことで、組合収益を圧迫しているケースがよく見られます。
投資用マンションでは、最初から〇年後には管理費・修繕積立金を増額することを決めているような物件も多くあります。物件購入の際には、管理組合に借入金があるか、また、修繕積立金がどの程度確保されているかなどを確認しましょう。
その6:家賃下落リスク
家賃下落リスクとは、募集家賃が下落し、賃料収入が減少するリスクです。
賃貸期間、家賃が下落することはほとんどありませんが、更新時期であったり、退去にともない新たに入居者を募集する際、賃貸管理会社から賃料の引き下げを提案されることがあります。もちろん、その提案を拒否して、自分の希望賃料で募集をかけることもできますが、空室期間が長くなったり、入居者の質が落ちるリスクもあります。
一般的には建物や設備の経年劣化にともない、家賃は下落します。また、近隣に新築物件ができれば、そちらの方が人気がでますし、需給の関係で賃料は下落します。
賃料の下落を防ぐためには、やはり立地の良い物件であることが重要です。また、間取り・設備、管理状況なども家賃を決定する要因となりますので、候補物件が出てきたら、近くの賃貸管理会社にセカンドオピニオンを聞いてみることもお勧めです。
その7:賃貸管理会社倒産リスク
貸管理会社倒産とは、賃貸管理を委託している会社が倒産するリスクです。
管理会社が倒産すれば、代わりの会社を探して引き続き管理業務を委託することになりますが、倒産した管理会社が受け取って所有者に送金する前の家賃や入居者が管理会社変更後も誤って倒産した管理会社に支払ってしまった家賃は受け取れない場合もありますし、受け取れたにしても時間がかかる場合もあります。
賃貸管理会社は業態的に倒産しにくいものの、他に自ら不動産投資を行っていたり、不動産開発・販売を手掛けるなどをしていたりすると、その業務が不振で連鎖して倒産してしまう場合もあります。企業の規模もありますが、できれば賃貸管理を専業で行っている会社の方が安心といえます。
不動産の価値そのものに関するリスク
その1:不動産価値下落リスク
所有している不動産の建物・設備は経年劣化により、その価値は下落していきます。なるべく下落幅が抑えらるよう、管理状態が良く、修繕計画がしっかりとした物件を選ぶようにしましょう。
建物の構造に関しても、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が劣化のスピードは遅いので、マンションはアパートに比べて、建物自体の価値は下がりにくいと言えます。
部屋の設備に関しては、トイレ・風呂・洗面所が一緒の、いわゆる3点ユニットは段々と少なくなり、それぞれが独立している少し広めの物件が主流になって来ています。
利回りで考えた場合、家賃が下がらなければ、不動産価値下落を防ぐことができますので、将来的にも賃貸人気を保てる仕様・設備の物件がどのようなものか、賃貸のサイトを覗いておくことも必要です。
不動産価値は景気動向で上昇・下落をします。また、物件が立地する地域の経済的な価値が上昇すれば、不動産の価値も上がります。再開発や都市開発計画のある地域は物件価格の上昇が期待できますし、逆に駅から遠かったり、暮らしにくいような地域は物件価格の下落が心配です。
物件が位置する地域の将来性をよく吟味して、物件を探しましょう。
その2:災害(火災・地震・水害)リスク
火災や地震が発生すれば、室内や建物が被害に遭ってしまいます。
そのため、マンションであれば、所有者・入居者が専有部分に対して保険に加入します。また、共有部分に関しては、管理組合が保険に加入することで、火災・地震に対するリスクに備えます。
ただし、専有部分に関する地震保険の金額は、火災保険の金額に比べると格段に少なくなるので、地震保険に関しては、多少不安が残ります。
地震リスクを少なくするには、地盤の弱い地域を避けることと、新耐震基準で建設された建物を選ぶことが重要です。
新耐震基準とは、1981年(昭和56年)に決められた耐震基準で、震度6強・7に耐えることを想定しています。築年数40年を超えるマンションは、一部、耐震工事を施しているものもありますが、地震リスクに弱いという特徴があります。
最近では気候変動により、集中豪雨によって水害が頻繁に発生しています。水害が発生しやすい地域はハザードマップで確認できますので、該当する物件であれば、水害がしっかりとカバーされる火災保険を選択しましょう。
不動産投資固有のリスク
その1:流動性に関するリスク
金融商品は売買する市場が整備されていたり、取引価格が日々更新されていることから、ほとんどの商品の流動性は高く、すぐに売却して換金することができます。
しかし、不動産はいざ売却しようにも、買い手を探すのに時間がかかりますし、どのくらいの価格で売却できるかも分かりません。
もともと不動産投資は長期投資が前提なので、頻繁に売買することは想定されていませんが、何かしらの事情で売却する場合、売却しにくいというリスクがあります。
多少なりとも流動性が高い物件に投資したいということであれば、買い手にローンが付きやすいタイプの物件がお勧めでしょう。
一つは都心のワンルームマンションです。ワンルームマンション向けの投資用ローンは各金融機関とも積極的に取り組んでいますし、小規模な物件で投資金額もそれほど大きくなく、買い手候補もその分多くなるのがメリットです。
もう一つの手段として、敢えてファミリータイプの物件を購入するという手もあります。ファミリータイプの物件は空室になった際は、自分で住むために購入する方も候補となりますので、買い手候補はぐんと増えます。
また、投資用ローンに比べると住宅ローンの方が年収や勤務先などの属性に関するハードルは低くなります。しかし、人気のある物件は空室になりにくいので、タイミングが合うことはなかなか無いでしょう。
その2:入居者とのトラブルリスク
自分が所有していると言え、賃貸中の物件は入居者の許可なしに入ることはできません。従って、入居者がどのような使い方をしているかを知る手段はありません。
賃貸管理会社もチェックしにくいので、他の人に又貸ししていたりとか、友人と一緒に住んでいたなんてこともあるようです。繁華街に近い物件はこのようなことが発生する傾向がありますので、注意が必要です。中古物件を購入する際には、入居者の属性を確認しましょう。
また、エアコンや給湯器など所有者に修繕義務のある設備が故障した際、修繕の対応が遅れてしまうと、その間、その故障を原因として入居者が負担した費用を所有者が支払わなければなりません。
入居者からのクレームにすぐ対応してくる賃貸管理会社を選びましょう。賃貸管理会社によっては、24時間、入居者からの問い合わせを受け付けてくれるような会社もあります。
リスク回避方法
ここまで、不動産投資のリスクとそれへの対応策について紹介してきましたが、ここからは、更に、リスクの回避方法について解説して行きます。
回避方法1:とにかく賃貸が付きやすい好立地の物件を選ぶ
不動産投資は、まずは立地です。立地が良ければ、さまざまなリスクを減らすことができます。賃貸人気が高い地域、都市開発計画などで今後人気が出そうな地域などを選ぶようにしましょう。また、繁華街が近かったり、道路付けが悪いような物件は注意が必要です。
回避方法2:なるべく現地に行って建物と管理状況は確認する
自身の居住地域から離れていない限り、投資を検討している物件は必ず現地を見に行くようにしましょう。賃貸中の物件は室内を見ることは出来ませんが、周辺の住環境、建物や管理状況を確認することは必要です。自分が住みたいと思える物件かどうかはとても大切です。
回避方法3:信頼できる管理会社を選ぶ
まずは、入居者とより良い関係を築いてくれる管理会社を選ぶようにしましょう。その他、経営が安定している(それなりの管理戸数を有している管理会社)、賃貸募集に強い会社であれば、なお安心です。
回避方法4:物件検討時のチェック項目を作っておく
地域、築年数、構造、間取りなど、予め自分でチェック事項を作っておきましょう。例えば、山手線内側、徒歩5分、鉄筋コンクリート造、築25年以内、風呂・トイレ別などです。
賃貸物件をインターネットで探した経験がある方は、他にもいろいろな条件があることをご存知だと思います。自分のこだわりを持って物件探しをすることは、リスクマネジメントに繋がります。
回避方法5:収益シミュレーションをする
収入項目として家賃、支出項目として管理費・修繕積立金、修繕費(給湯器、エアコンなど)、利息、借入金返済などを盛り込んだ長期の収支計画を作成しましょう。
シミュレーションの中で、家賃の減少や管理の上昇などを想定したものも作成し、ワーストケースとしてどの程度の手元資金が必要になるかを確認し、自身の収入と貯蓄の状況に照らし合わせて、耐えうるリスクかどうか判断することが必要です。
回避方法6:自己資金を多めに準備する
収益シミュレーションで、まずは、投資後に必要な資金を確認しましょう。不動産取得税の他にも、入居者が退去すれば、クリーニング費用・入居者の募集広告費用が必要な場合もあります。
フルローンを利用すれば、手元資金が少なくて済みますが、その分リスクも高くなりますので、なるべく自己資金は多めに準備して、ローン金額を減らしておくか、もしくは、何かあったときの手元資金として置いておくようにしましょう。
ファンドマネージャーからのアドバイス
確かに不動産投資にはさまざまなリスクが伴いますが、そもそも投資にリスクは付きものです。株式投資であれば、激しい値動き以外にも、投資した企業が粉飾決算が発覚し株価が暴落してしまうなんてこともあります。
それに比べれば不動産投資のリスクは予期しやすいですし、予めの回避策を講じることができます。不動産投資がミドルリスク・ミドルリターンと言われる所以です。
しかし、金融商品と違って不動産は流動性が低いことから、失敗したから買いなおしをするといったことはなかなかできません。失敗してしまうと、なかなか挽回がしにくい投資ですから、まずはリスクを把握したうえで、信頼できる相談相手となる不動産会社を見つけて、後悔しない物件選びをしていきましょう。
まとめ
不動産投資には様々なリスクがあります。しかし、投資家のこれまでの経験から、ある程度のリスクは予想できますし、その回避策もあります。
準備をしっかりして取り組めば不動産投資も怖いものではありません。不動産投資を始める前に、投資全般、不動産投資に関する知識をつけ、また、投資する不動産の選定にはしっかりと時間をかけるようにしてください。