リタイアとは引退することを意味しますが、セミリタイアは、会社を辞めて、最低限の仕事をしながら収入を得て、自分の時間を有効活用するライフスタイルです。
この記事では、そもそもセミリタイアとは何か、セミリタイアするのに適正な年齢、セミリタイアのために必要なお金について解説して行きます。
セミリタイヤとは何か?
リタイアといっても、いろいろと種類があります。ここで紹介するセミリタイア以外にも、アーリーリタイアや完全リタイアなど、混合してしまいがちなので、ここではまず、セミリタイアの定義について解説して行きます。
セミリタイアの定義
セミリタイヤは早期に会社を退職し、リタイヤ後も生活の足しになる程度の簡単な仕事で、一定の収入を得て行く生活スタイルを指します。
セミリタイアの生活を送るには、在職中に貯えた資金を切り崩しながら、週に数回のアルバイト、もしくは投資活動やアフィリエイトなどから収入を得ることが求められます。
セミリタイアを実現するには、在職中にまとまった生活資金を確保することと、退職後に、収入を得られる方法を見つけておく必要があります。
アーリーリタイアとの違い
セミリタイアはアーリーリタイアの一種です。
アーリーリタイアは会社を早期退職することですが、その後、全く仕事をしない「完全リタイア」、最低限の仕事をする「セミリタイア」、期間限定で働いたり休んだりを繰り返す「ミニリタイア」に分類されます。
ミニリタイアは、海外ではよく見られますが、夏は働かずにサーフィンを楽しみ、冬場だけ働くようなスタイルです。
しかし、アーリーリタイアというと、全く仕事をしないイメージがあるので、アーリーリタイア=完全リタイアと一般的には捉えられています。
FIREとの違い
最近よく耳にするFIREですが、「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった言葉であり、直訳すると「経済的自立と早期リタイア」という意味になります。
FIREも早期退職ですが、リタイア後はそれまでの貯蓄を切り崩して生活することから、セミリタイアのように、働くことは想定していません。
FIREは年間支出の25倍の資産額を蓄えることを指標としています。この年間支出額は、リタイア後の節約した生活費をベースにしています。
セミリタイアのメリットとデメリット
セミリタイアにはさまざまなメリットがありますが、大きくは以下の2つとなります。また、当然ながら、デメリットもあります。
メリット1:社会との距離感を保ったまま自由な時間を増やすことができる
当然、セミリタイア生活に入れば、自由な時間を増やすことができます。この自由な時間を活かして、自分のしたいことをしたり、家族と一緒に過ごすことができます。
また、完全リタイアですと、社会との接点が無くなってしまうこともありますが、セミリタイアですと、社会との接点はそのまま保つことができます。
社会との接点は仕事だけでなく、地域活動やボランティア、更には自分の趣味に関することなど、自由な時間を活かして広げることができるでしょう。仕事オンリーの生活ですと、仕事以外のコミュニティを作ることはなかなか難しいものです。
メリット2:仕事によるストレスを減らすことができる
仕事の時間が短くなれば、当然、ストレスを受ける時間も短くなります。セミリタイア後の仕事は、収入は低くなるものの、責任や役割などからは解放されるので、心理的な負担は減ります。
自分に向いていなかったり、その仕事や職場が気に入らなければ、変更する自由がセミリタイア生活にはあります。会社に縛られ、いわゆる「社畜」の生活を余儀なくされ、精神を病んでしまうような方も少なくありません。セミリタイアにより、金銭面での不自由は発生するかもしれませんが、心の自由を得ることはできるでしょう。
デメリット
サラリーマンは、会社に縛られているというストレスがありますが、実は会社に所属しているメリットがあったことに、セミリタイアして初めて気づくものです。
例えば、マイホームを購入しようとすれば、会社員であると社会的な信用があることから、マイホームローンを借りることができますが、アルバイトでは、マイホームローンを借りるのは難しくなります。クレジットカードを作るのでさえ一苦労するでしょう。
また、病気になれば、サラリーマン時代は有給が使えたり、組合から見舞金が出たりなどのサポートがありましたが、セミリタイア生活には、有給などはありません。
以下、セミリタイアのデメリットをまとめてみました。
- 収入が不安定になる
- 社会的信用が得づらくなる
- 保証や福利厚生がなくなる
- 年金が少なくなる
- 健康面に特に注意が必要になる
セミリタイアに必要な条件
セミリタイアするのに一番重要な条件は、セミリタイア後の生活費が、ある程度確保で来ているということでしょう。その観点から言うと、セミリタイアに適している年齢は40代後半から50代と考えられます。
40代を越えてくればそれなりの貯蓄をすることも可能ですし、早期退職制度により割増退職金を得られる場合もあります。また、結婚・マイホーム・子育てなど、お金のかかるライフイベントも一巡して、これからかかるお金の計算もしやすくなります。
しかし、セミリタイアは条件が整えば、何歳からも可能です。最近では、20代や30代でもセミリタイアをする若者もいます。
では、ミリタイアを実現するために必要な条件とは、どのようなものでしょうか?
その1:貯蓄や資産
人生100年時代と言われていますが、日本人の平均年齢である85歳くらいまでは生活できる貯蓄が欲しいものです。もちろん、足りない部分はあると思いますので、その不足分に関しては、アルバイトや資産運用で埋めることができる範囲である必要があります。
一般的にFIREを行う際、投資資金の 4%インカムゲインで生活がまかなえるようになると、うまくいくと言われています。セミリタイアを行う際も、参考になるでしょう。
もし、3,000万円の投資できる金融資産があれば、年間4%の運用で120万円(税引前)、つまり毎月10万円を得ることができます。毎月の生活費を15万円に抑えることができれば、残り5万円をアルバイトで稼ぐ計算になります。
その2:セミリタイア後の収入源
セミリタイア後、何かしらの労働により、資産運用では足りない部分を補う必要があります。セミリタイアする年齢が若くなれば、貯蓄も少なくなるので、より多くの労働からの収入が必要になります。
逆に、セミリタイア後の安定した収入源が確保できているのであれば、少ない貯蓄でもセミリタイアすることは可能です。
月に5~10万円稼ぐのであれば、簡単なアルバイトでも可能です。ちなみに、東京都の最低時給は1,041円です。
想定外の支出や資産運用が上手く行かない場合にも備え、収入源は複数用意する方が安心でしょう。アルバイト以外にも、ブログやYouTubeを運営て広告収入やアフィリエイト報酬を得ることにチャレンジしている方も多いようです。
セミリタイア後に収入源を探し始めるのではなく、会社で働いている段階から、その時の人脈やノウハウも活用して、収入源を確保する準備を始めておくようにしましょう。
その3:資金計画
次の章で、統計的な数字を用いてお金の計算をしますが、自分の数字で資金計画を計算することは大切です。セミリタイアを成功させるには、経済的な不安を少なくする必要があります。
支出については、削れる部分が無いか、投資に回せる部分が無いか、収入については、投資からの収入が思い通りに行かない場合も想定して、資金計画を組んでみましょう。
もし、そのような保守的な見積もりで作った資金計画がワークするのであれば、順調なセミリタイア生活を送ることができるでしょう。
その4:セミリタイア後の生きがい
忙しいサラリーマンの生活から逃げ出したいために、とりあえずセミリタイアをするのではなく、セミリタイア後の具体的な将来設計を描いたうえで、充実したセミリタイア生活を送るようにしてください。
逆に言えば、セミリタイア後の生きがいについて考えずにセミリタイア生活に突入するのはお勧めしません。
セミリタイア後は、これまでの忙しい生活とは違って、時間の経過も緩やかに感じるでしょう。最初は、開放感に浸ることができますが、何の目的も生きがいもないと、次第にセミリタイアに飽きてしまうこともあります。
若くしてセミリタイアを果たすと、残りの時間は、それまで生きてきた時間より長い場合もあります。この20年を考えてみると、携帯電話が普及し、今では誰もがスマホを持つ時代になりました。
このように社会の変化はとても早くなっています。セミリタイア後の生活環境も、セミリタイア時に比べて大きな変化があるでしょう。社会の変化に身を任せるのも大切ですが、セミリタイア後の目標や生きがいをしっかりと決めておくようにしましょう。
セミリタイヤのために必要なお金
お金が無いことにはセミリタイアをすることはできません。ここでは、セミリタイアに関するお金についてまとめてみました。
セミリタイア後もかかる生活費について
では、まずは、セミリタイア生活で必要なお金ってどれくらいなのでしょうか?
総務省の家計調査によると、単身世帯の平均的な支出は約15万円、二人世帯になると約28万円とのことです。
全くの貯金無しでセミリタイアを始めようとすると、単身世帯では20万円以上、二人世帯では35万円以上の収入が必要と考えられるので、それですと、アルバイトでは、ちょっときついでしょう。
セミリタイアでどういった生活を送るかにもよりますが、それなりの生活費がかかることを考えれば、貯金無しでセミリタイアをするのは現実的ではありません。
もちろん、セミリタイア後は、農村などで自給自足生活を送り、生活費を抑えるような方もいらっしゃいます。自分がどのような生活を送りたいかで、生活費の水準がおのずと決まってきます。
セミリタイアまでに必要な貯蓄
FIREにおいては、年間支出の25倍の資産が必要とのルールがあります。
例えば、月の支出が15万円であれば、年間支出は180万円、その25倍である4,500万円が必要になるということです。もともとこの4,500万円を4%で運用して、その運用益で生活しようというのがFIREであり、そこから、25倍という数字が逆算して出てきました。
この計算方法は一つの目安となるでしょう。
また、残りの人生から必要な資金を計算する方法もあります。二人世帯の方が、40歳でセミリタイアして、85歳まで生きるとなると、残り45年の人生で、毎月28万円×12ヶ月×45年=約1.5億円の資金が必要になります。
サラリーマンが、給与収入だけで40歳までに1.5億円の貯蓄を作るのは、ほぼ無理でしょう。
では、現実的な貯蓄額はどこにあるでしょうか?
FIREの4%で運用というのも少し、ハードルは高いかもしれません。実際に4%で運用しても、運用益にも税金はかかりますので、手取りは約3.2%です。
今の投資環境であれば、税引き後で3%は現実的な数字と考えられます。そうなると、単身の場合、3,000万円あれば、運用で90万円稼いで、残りはアルバイトでもなんとかなるでしょう。できれば、4,000万円くらいあると、余裕が出ます。二人世帯であれば、その倍は必要となるしょう。
将来の年金受給開始年齢、受給額が不透明な中、元本を取り崩すことは、予定してない方が良いと考えられます。
そうなると、資産運用以外は、アルバイトなどの簡易労働による収入に頼る場合は、単身であれば3,000万円、できれば4,000万円の貯蓄があると安心ということになります。
セミリタイアを行うための注意点
充分に準備をせずにセミリタイア生活に突入してしまうと、思わぬ失敗やトラブルに合ってしまうこともあります。セミリタイアを行うための代表的な注意点2つについて解説します。
注意点1:資金不足に陥らないこと
セミリタイア後に必要な生活は確保できたとしても、病気や両親の介護など、収入が途絶えたり、思わぬ出費がかかることがあります。
また、節約生活に飽きて、少し贅沢をした暮らしが恋しくなってしまい、思わぬ浪費をしてしまうこともあるでしょう。
ぎりぎりの資金計画ですと、予定外のことが起きると対応ができません。サラリーマン時代であれば、一時的に借金することもできますが、実質無職になってしまいますと、借金もなかなかできませんし、できたとしても、利息が高くなってしまいます。
資金不足に陥らないよう、資金計画は余裕を持たせるとともに、保険などに加入し、まさかに備えるようにしましょう。
注意点2:セミリタイア生活に飽きてしまわないこと
日々仕事に追われていた生活から抜け出し、セミリタイアしてみると、時間の流れがゆっくりになると感じるでしょう。これを自由と感じるのは最初のうちで、だんだんと何をしたら良いか分からず、退屈に思える方もいらっしゃいます。
セミリタイアしてからやること見つけるのでなく、セミリタイア前に、何を生きがいにするかは、しっかり考えておくのが大切です。
定年まで働いてリタイアした方でも、リタイア生活に飽きてしまうと聞きます。余生を旅行などを楽しむ方もいますが、セミリタイアは基本的には節約生活ですから、レジャーに多くのお金を割くことはできません。
残りの人生は、更に長いものなので、何を楽しみに生きて行くかを改めて考えておくべきです。
セミリタイアして数年後に飽きてしまい、就職して元の生活に戻るのは、なかなか難しいものです。
セミリタイアについて経験者から学んでみる
セミリタイアやFIREでの生活を実際に送っている人の経験談は、ブログやYouTubeなどで知ることができます。いくつか紹介しますので、参考にしてみてください。
- アラサーdeリタイア
30代で3,700万円を貯めてセミリタイアされた、ちーさんのブログです。こまでの貯蓄方法や資産運用についても詳しく説明されています。合わせて、YouTubeのチャンネルもありますし、本も出版されているようです。
http://simple-hira.com/ - 45歳でアーリーリタイアして資産生活
奥様と二人暮らしで45歳でアーリーリタイアされたRanpaさんのブログです。生活費や運用など、お金について赤裸々に書かれています。
https://zz597.blogspot.com/ - セミリタイア失敗40代独身無職の末路
41歳でセミリタイアし、既にセミリタイア生活7年目に入ったくらげさんのブログです。セミリタイア生活の実際のところの苦労話を知ることができます。
https://neet3.hatenablog.jp/
まとめ
セミリタイアを目指す方は、日本のみならず、アメリカをはじめとした各国でも増えてきています。特にこのコロナ禍は、リモート勤務を経験したサラリーマンの方にとって、自分の生き方や会社と付き合い方を改めて考え直す良いきっかけになったでしょう。
しかし、セミリタイアを実現するには、その後のライフスタイルや資金計画などをきちんと決めて準備する必要があります。
当然、デメリットもありますので、家族や友人に相談したり、経験者の話しを聞いて、進めるようにしてください。