アパート経営で失敗して地獄を見ないためにはどうしたら良いか

不動産投資において、「アパート」は「区分マンション」と並んで人気のある投資対象です。しかし、数年前の「かぼちゃの馬車」や「レオパレス」の事件以降、金融機関によるアパート融資への審査は厳しくなり、アパート経営のハードルは高くなりました。

これらの事件は、アパート経営のリスクを浮き彫りにしましたが、一時期加熱していた物件価格もこの事件をきっかけに落ち着いて来ており、融資が利用できる方にとっては投資チャンスが到来したとも言えるでしょう。

ただし、アパート経営は簡単でない点もあります。ここでは、アパート経営で地獄をみた具体的なケースを参考に、失敗しないためのポイントを解説して行きます。

アパート経営で遭遇してしまった8つの地獄

その1:管理が忙しくて地獄

30代のサラリーマンAさんは、まず、新築ワンルームマンションを購入しました。新築ワンルームマンションですと、月々の持ち出しが発生しますので、毎月のキャッシュフローを改善するために、アパート業者に勧められ、次に中古アパートを購入しました。

新築ワンルームマンションは管理に手間がかかっていなかったため、管理費用を節約したいこともあり、購入した中古アパートも自分で管理することにしました

アパートは部屋数も増えますので、トラブルが発生する確率も各段に上がります。また、中古となれば、水漏れが発生したり、エアコンや給湯器などの故障が発生することもあります。

故障が発生すれば、業者の手配から、見積もりの確認など、いろいろと手間がかかります。

Aさんには、休日や深夜にも入居者から修理の依頼や、近隣へのクレームが入るようになりました。しかも、対応に緊急を要するようなものばかりです。

副業で始めた不動産投資ですが、入居者対応で心が休まることはありません

回避策

アパートは、区分マンションと比べると管理の手間が多くなります。管理会社に任せると、その分、管理費用が増えて、利回りが下がってしまいますが、副業としてのアパート投資であれば、管理は管理会社に任せるのがお勧めです

アパート投資の際には、管理費用も考慮して、収支の計算をするようにしましょう。

その2:管理会社が仕事をしてくれなくて地獄

40代の公務員Bさんは、初めての不動産投資で郊外に中古アパートを購入し、投資初心者でもあったので、アパートを購入した先の不動産会社に言われるがまま管理を任せることにしました。

しかし、その管理会社は空室が発生しても、なかなか次の入居者を見つけてくれなく、入居率はだんだんと下がってしまいました。

たまたま、休みの日にそのアパートの近くまで来たことから、実際に見に行ってみると、ごみが散乱しています。不動産投資経験者である職場の先輩に相談したところ、どうやら、管理状況が悪いので、入居者がすぐに出て行ってしまうのではないかということでした。

管理会社が入居者の募集に熱心でなく、管理状況も良くないため、入居率は当初のシミュレーションに届かず、思った通りの家賃収入が入ってきません。

回避策

全ての管理会社が管理業務をちゃんとしてくれるとは限りません。片手間で管理業務をしている会社もあれば、管理物件が多すぎて、手が回らないような会社もあります。

管理を任せる前に、管理会社の実績や体制を確認するようにしましょう。お任せしっぱなしではなく、時々、現地に行って管理状況を見てみることも大切です。

管理状況が悪ければ、管理会社を変えることも必要です。

その3:満室で購入したが、その後空室が発生して地獄

40代の外資系金融機関に勤務するCさんは、節税の目的もあり、中古アパートを購入しました。節税効果が高いという不動産会社の勧めで、郊外の土地価格が安い物件です。

郊外で利便性が低いことが心配でしたが、満室稼働であり、このあたりの住民はマイカーを利用するので、駅やバス停から離れていても大丈夫との説明でした。

しかし、購入から1年経過したところで、入居者の退去が少しずつ増えてくるようになりました。しかし、新しい入居者はなかなか見つかりません。2年経過したところで、半分以上が空室になってしまいました。

近隣の不動産業者に聞いたところ、このあたりの賃貸人気はもともと低く、それなりの空室率は覚悟する必要があるとのことでした。

自分が購入した物件は、不動産会社が高値で売却しやすいように、フリーレントなどのあらゆる手を使って、満室にしていたようです。

回避策

満室稼働の物件でも、満室状態が続くとは限りません。よほど立地が良くない限りは、物件が古くなれば、稼働率や家賃は下がってしまいます。

物件近くの不動産会社に候補物件の、本来の実力をヒアリングすることは大切です。また、売主に対しては、過去の入居状況などの資料を出してもらうようにしましょう。

その4:サブリースの契約内容を理解していなくて地獄

サブリースの「〇年間家賃保証」という甘い言葉に引っかかり、地獄を見てしまう人もいます。

サブリース(マスターリース)とは、不動産管理会社が、一定の期間、アパートのオーナーから物件をまるごと借り上げ、そのまま入居希望者に転貸(また貸し)をする管理契約形態です。

オーナーにとっては、面倒な募集や管理業務から解放され、空室の発生に限らず、契約通りの家賃が入ってきますので、キャッシュフローの計画が立てやすいというメリットがあります。

しかし、メリットもあれば、当然、デメリットやリスクもあります。契約更新のタイミングで、保証家賃が下がる場合もありますし、最悪、不動産管理会社がサブリースの継続を断ってくる場合もあります。

また、修繕や募集の経費に関しては、オーナーが負担するような契約もあります。

このように、サブリース契約があるからと言ってリスクフリーということではありません。空室や修繕が発生して、思わぬ経費を請求されたり、保証家賃が下がって、ローンの返済に困ったりする地獄もあり得ます。

回避策

まずは、サブリースの仕組みとリスク・リターンを理解したうえで、不動産管理会社とのサブリース契約の内容をよく確認することが必要です。

次に、物件周辺の家賃相場や物件の修繕履歴も確認しておきましょう。サブリースに頼らずとも、安定した収入が見込める物件であることが大切です。サブリースには、保険的な役割を期待するようにしましょう。

サブリースは、全てのリスクを回避してくれるような万能な契約ではありません

その5:修繕費用が多くかかって地獄

これは自らの体験をお話しします。以前、世田谷区の郊外に、中古アパートを購入しましたが、築年数が30年を超えていて、風呂もバランス釜という旧タイプのものでした。

古い設備品は、故障すると部品が無いことから、全交換が必要で、修繕の度に、家賃の数か月分が飛んで行くという修繕費用地獄に遭いました。

回避策

設備品の故障は瑕疵担保責任の対象外ですので、前のオーナーに請求できず、自分で費用を負担しなければなりません。アパートは、区分マンションに比べ、一室の家賃が比較的安めですが、設備はほぼ同等ですので、家賃収入の割には修繕費用が高くなる傾向にあります

修繕費地獄に陥らないため、物件を購入する前に、部屋の中の設備の更新状況がわかる資料を提出してもらったり、リフォーム業者に費用を見積もってもらうようにしましょう。

もし、修繕費用が見積もることが出来なかったり、多額にかかりそうな場合は、購入代金の値引き交渉をするようにして下さい。

その6:家賃滞納が発生して地獄

これも自らの体験です。築古のアパートで、入居者の方も長く住んでいただけていましたが、入居者の中には退職して年金暮らしになり、収入が減少してしまう方もいらっしゃいました。

そうなると家賃の支払いも滞りがちになり、中には隔月で入金される年金のタイミングに合わせて、家賃の入金も隔月となることもありましたし、もっと長期間にわたって滞納される方も出てくるようになりました。

家賃の滞納が発生しても、オーナーが取りえる手段はあまりありません。敷金を取っているいっても大体のケースが家賃の1ヶ月分ですので、それ以上の期間の滞納には対応できません。

また、立ち退きを要求するといってもとても難しい作業です。年老いてお金の無い入居者を強制的に排除するのは、現実的ではありません。

回避策

家賃滞納への対応は非常に難しいものです。連帯保証人に請求もできますが、入居期間が長くなれば、連帯保証人の支払い能力も低下している場合もあります。

家賃滞納地獄に遭わない手段の一つとしては、保証会社を利用する方法があります。保証会社を利用すれば、家賃滞納リスクは保証会社が取ってくれます。

その他、物件購入の際には、入居者と保証人の属性(年収、勤務先、年齢など)をきちんと確認するようにしましょう。

その7:担保価値が低くて地獄

上場会社に勤める40代のDさんは、2,000万円に近い年収をもとに、不動産投資ローンを積極的に活用して、不動産投資を行おうと、まずは、都内に5,000万円の小規模な新築アパートを購入しました。

次に、都内の好立地で築浅の区分マンションに投資をしようと、複数の金融機関に相談に行きましたが、年収は高いものの、借入が多いという理由で融資を断られてしまい、物件の買い増しは断念しました。

どうやら、金融機関は、新築アパートの担保価値がほとんど無いという判断をしたようです。

Dさんは、1億円以上は物件を買い進めようと計画していましたが、いきなり、一件目で計画は頓挫です。

回避策

区分マンションに比べると、金融機関のアパートへの融資は依然として審査が厳しい傾向にあります。借りられとしても、他の金融機関からすれば担保価値が低いとみなされることもあるので(特に新築)、追加で融資を受けられないこともあります。

融資を活用して、物件を買い進めて行きたいのであれば、金融機関に事前にどの程度まで借りることができるか相談することが必要です。場合によっては、アパートは諦めて、区分マンションで買い進めて行くことも検討しましょう。

その8:融資条件が悪くて地獄

これもDさんの話しですが、新築アパート購入の際にようやく借りることができた融資も、期間は15年と短く、融資金利も3%台であるため、当然、家賃収入では足りずに、毎月、10万円近い持ち出しが生じているそうです。

住宅ローンの支払いも残っているDさんは、マイホームとアパートのローンの支払いで、年収が高いといっても、教育費などの出費もあり、ぎりぎりの生活を送っています。

融資条件が悪いため、日々、アパートローンのために働いているような感覚です。

回避策

アパートへの融資は利用ができたとしても、融資期間・金利とも区分マンションへのローンと比べて条件が不利になる場合が多いようです。

金融機関と条件の交渉は必要ですし、キャッシュフローが悪い状態で無理に進めるのは、お勧めしません。タイミングを待つようにしましょう。

アパート経営で失敗しないためのポイント

ポイント1:目先の利回りの高さで決めずに、立地を確認する

アパートは築年数が古かったり、駅からの距離が遠かったりすると、思いのほか利回りが高い場合があります。

このような物件は融資金利が高くなりがちですが、金利を支払っても手元に資金が残る収支計画となるため、魅力的な投資対象と感じられる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、このような物件は入居率と募集家賃が今後低下しやすい、リスクが高い物件です。物件の選定にあたっては目先の利回りでなく、立地を優先して考えましょう。立地が良い物件は、目先の利回りが多少低くても、安定した収入がもたらされることが期待できます。

また、アパート経営のメリットは底地を手に入られることがありますが、底地の価値がどのくらいかも確認しておきましょう。

著しく底地の価値が低い物件は避けるべきです。駅からの距離もありますが、道路付けが悪かったり、土地の形状が悪い底地は価値が低くなります。

ポイント2:満室想定を信じない

中古アパートの広告で利回り〇%(満室想定)と書かれているものをよく見ます。アパートは全室空室になるリスクは低いものの、ある程度の空室が発生することは想定しておきましょう。

賃貸の契約期間は2年であっても、事前通告により途中解約で退去する方もいらっしゃいます。築年数、立地、管理状況にもよりますが、入居率は90~95%でシミュレーションしておくと安心です。

新築であれば、全室満室になるまで時間がかかる場合もあります。特に引っ越しシーズンの1~3月以外に竣工する物件は動きが遅くなりがちです。

また、中古販売業者によっては、販売しやすくするために、長めのフリーレントを設けたり、入居審査を甘くしているなどの手法で、無理をして満室にしているケースもあります。

レントロールで契約時期が一時期に集中していないかを確認してみましょう。また、インターネットで近隣物件の募集条件を調べたり、物件付近の不動産屋さんに意見を聞いて、投資候補物件の本当の賃貸実力を確認することも大切です。

ポイント3:保証会社を利用する

新築のアパートであれば入居者募集の条件として、保証会社への加入を条件としましょう。

また、中古物件であれば、保証会社が付いている物件が好ましいですが、保証会社が付いてない場合は、入居者の入れ替わりの際は保証会社への加入を条件に加えましょう。

ただし、保証会社への加入は入居者の負担となるため、賃貸募集にマイナスの影響を与える可能性があります。事前に管理会社に保証会社付きで募集が可能かどうか確認し、難しければ投資を見送るのも選択肢の一つです。

ポイント4:設備の更新状況を確認し、設備修繕計画を作成する

建物の管理はなるべく管理会社に委託し、設備の更新状況を確認してもらうとともに、今後の設備投資の計画を作成してもらうようにしましょう。

そのためには、信頼できる管理会社を見つけることが大切です。

管理費用はかかりますが、アパート管理は入居者からのクレーム対応や法定点検への立ち合いなど、結構手間がかかります。管理状況の良いアパートは入居率アップにもつながりますので、物件の取得の際には、相応の管理費がかかることを考慮しておきましょう。

ポイント5:融資条件については妥協しない

アパート融資が厳しい状況の中、ノンバンクの方が調達はしやすいものの、金利は高くなってしまいます。

さすがにメガバンクから調達することは難しいですが、地方銀行・信用金庫であれば金利は安くなりますので、いくつかの金融機関と粘り強く交渉して、なるべく低利で長期間の融資条件を引き出すようにしましょう。

金融機関もさまざまなアパートを見ていますので、参考になる意見も聞いてみることができます。また、政策金融公庫もアパートローンを取り扱っていますので、一度、相談に行ってみてはいかがでしょうか。

ポイント6:シミュレーションを作成し自己資金を準備する

アパート投資でもマンション投資でも、不動産投資にあたっては、事前にシュミレーションを作成し、自己資金を準備し、リスクに備えることは必要です。

まとめ

アパート経営はさまざまなメリットがありますが、いろいろな落とし穴が待ち構えています。販売業者の説明を鵜のみにせずに、アパート経営で地獄を見ないよう、自分で入居状況、周辺状況、設備の更新状況をチェックしましょう。

この点は、マンション投資に比べてより慎重になる必要があります。目先の利回りの高さだけを見て物件の購入を決めずに、周辺地域の状況をよく見て判断しましょう。

アパートはマンションに比べると立地に劣るものが多いので、家賃収入についてはより保守的に考える方が安全です。

合わせて読みたい...

chartprofit

アパート経営を成功させる利回り計算方法!最低ラインを見極めるコツとは

アパート経営を成功させるうえで欠かせないのが、正しい利回りの計算です。利回りの計算を正しくすることで、どれくらい利益をだせるのかがわかります。アパート経営に失敗することは利益が上手くだせないこと。つ...

apartblog

アパート経営するなら絶対見ておきたいブログ5選

アパート経営を成功させたいなら、絶対に見ておきたいブログを紹介します。アパート経営で心配なのは、やはり失敗しないのかということだと思います。ブログでは、それぞれの大家さんのそれぞれの体験が描かれてい...

select-apartoffice-eye

アパート経営を成功に導くお勧めの不動産投資会社5選

アパート経営を始めたいと思った時に、まず考えたいのが不動産投資会社です。物件選びからローンのサポート、その後の管理まで、アパート経営をするにあたり、強い味方になってくれるのが不動産投資会社です。今日...

不動産投資の無料相談受付中
不動産投資の無料相談受付中