不動産投資は、ミドルリスク・ミドルリターンに位置付けられ、株式投資やFxに比べるとリスクは低く、毎月の安定した家賃収入を得られる手堅い投資と言われています。
しかし、不動産投資にもリスクはあります。空室が続けば、家賃収入は入って来ませんし、物件が古くなれば、修繕で大きな費用が必要となる場合もあります。このように、不動産投資のリスクを知らずに、良い部分だけを見て投資をしてしまうと、思わぬ失敗をしてしまうことがあります。
ここでは、不動産投資初心者にありがちな失敗事例と、その原因、また、失敗を防ぐ方法を紹介していきます。
投資初心者にありがちな失敗事例4選
失敗事例1:サブリース家賃を信用してしまった結果
サブリースとは、所有している物件を不動産会社に貸して、その会社は更に第三者に貸す方式です。「長期家賃保証」といった広告を目にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
所有者は、契約の相手方が不動産会社なので、空室リスクを心配する必要が無く、安定した家賃収入を得ることができます。更に、入居者の管理など煩わしいことも、全て、不動産会社が請け負ってくれるメリットがあります。
半面、所有者が受け取る家賃は、市場家賃の80~90%と安くなるという短所もありますが、空室リスクの保険料と考えれば、妥当な金額でしょう。
Aさんは、アパート業者から、新築アパートへの投資を勧められて7,000万円のアパートを都内で購入しました。資金はアパート業者の提携金融機関からフルローンを借りることができました。
賃貸については、販売した不動産会社がサブリースで長期家賃保証をしてくれるというので、安心です。また、都内の物件ですので、多額の投資にはなりましたが、資産価値は高いという説明を受けていました。
しかし、最初の数カ月は家賃は入金されましたが、その後、不動産会社からの家賃入金が滞り、最後は倒産したとの知らせが入りました。
サブリース先が倒産してしまえば、サブリース契約は終了し、現入居者と直接の契約になりますが、ふたを開けてみれば、ほとんどの部屋が空室で、また、入居者の賃料もサブリース賃料より安いことがわかりました。
結局、自分で他の不動産会社に入居者の募集をお願いしましたが、サブリース契約の家賃よりもかなり低い金額であったため、ローン返済のために、毎月10万円以上の持ち出しが発生しています。
売却してローンを返済して終わらせてしまおうかとも考えましたが、付近の不動産屋に相談したところ、売ったところでローン残高の6~7割にしかならないようで、売却したところで残債がかなり残ってしまいます。
サブリース付きなので確定利回りで安心と思いましたが、物件価格も家賃設定も市場よりもかなり割高であったようです。
Aさんは、弁護士に相談して、自己破産も視野に入れて、債務整理の準備をしています。
失敗の原因
- サブリースなら安心と思い、価格や設定家賃を調べなかった。
- サブリース契約の相手先の信用力を調べていなかった。
失敗事例2:郊外のマンションに投資してしまった結果
郊外のマンションは、空室リスクは高くなりますが、値段も安く、利回りが高いものも少なくありません。
Bさんは、神奈川県で1,000万円の中古マンションを購入しました。築年数も30年近くで、駅からも少し遠かったのですが、近くに大手自動車メーカーの工場があり、社員数も多いことから賃貸需要には困らない地域でした。
また、その大手自動車メーカーは、賃貸で住んでいる社員に、家賃補助を出していたこともあり、賃料も高く取ることができたので、10%近くの表面利回りを取ることがで、とても良い投資のはずでした。
しかし、数年後に大手自動車メーカーが工場を移転してしまい、大部分の社員も引っ越すことになり、一気にその地域の賃貸需要は冷え込みました。
Bさんの物件は、もともと駅から少し遠く、築年数も古かったので、新たに入居者を探すのは大変で、結局、一年近く空室のままでした。その後、ようやく入居者が見つかったものの、前の家賃の7割程度です。
大手自動車メーカーがあるから安心と思い、立地などの条件はあまり気にせずに投資をしてしまいましたが、企業や学校などは移転するリスクがあります。
最初はローン返済をしても、毎月1万円以上が手元に残っていましたが、今は逆に持ち出しの状態になっています。Bさんは、このまま、残り20年以上、支払いを続けて行く予定です。
失敗の原因
- 価格と利回りだけ見て投資をしてしまった。
- 賃貸需要を一つに頼ってしまった結果、物件本来の実力を見誤ってしまった。
失敗事例3:利回りだけ見て築古物件に投資してしまった結果
築年数が古いマンションには数百万円で購入できるものもあります。Cさんは、築40年近いワンルームマンションを600万円で全額自己資金により購入しました。家賃は毎月6万円入ってきますので、表面利回りは12%の投資です。
しかし、築古の物件はいろいろと修繕が必要になります。まず、購入後、入居者からエアコンが壊れたとのクレームが入り、エアコンを交換し、10万円近い修繕費用がかかりました。
更に、その後、ユニットバスに不具合が生じ、全交換が必要と言われ、40万円以上の費用がかかってしまいました。
購入後半年もたたないうちに、50万円以上の修繕費用がかかりました。家賃換算すれば、8ヶ月分以上です。
建物全体も老朽化しているため、エレベーター交換や防水工事など、これから大規模修繕が必要になるようですが、現行の修繕積立金では不足するようで、管理費・修繕積立金とも値上がりするという話しも出てきています。
折角、利回りが良いと思って購入した物件ですが、築年数が古いことから、修繕や管理に関する費用が思いのほかかかってしまい、実際の利回りはかなり低くなってしまいました。
これならば、REITなどの金融商品に投資すべきであったと、Cさんは後悔しています。
失敗の原因
- 価格や利回りだけを見て、修繕費用などのことを考慮しなかった。
失敗事例4:入居者の契約内容を見ずに物件を買ってしまった結果
Dさんは、都内の比較的築浅のワンルームマンションを3,500万円で購入しました。毎月の家賃が14万円も取れるので、表面利回り4.8%と、都内・築浅としては良い条件だと考え、思い切って投資をしました。
投資をしてから1年くらいたってから、入居者からの家賃入金が滞るようになってきました。入居条件を確認すると、保証会社もなく、更に、連帯保証人も付いていませんでした。
前の所有者が、とりあえず、高めの家賃で入居させてしまおうということで、かなり緩い入居条件でOKを出してしまったようです。
毎月14万円の家賃は、それなりの収入が無いと支払い続けて行くのは難しい金額です。入居希望者にとっては、築浅で好立地のマンションなので、多少家賃が高くても何とかできると思ったようですが、コロナ禍で給与も減ってしまい、家賃の支払いができなくなってしまったようです。
家賃滞納が発生すれば、契約を解除して立ち退きを請求できますが、入居者が応じない場合は、裁判などの手続きが必要となり、手間も費用もかかります。
結局、入居者は他に転居する資金もないことから、とりあえず、支払えるだけの家賃を支払ってもらうようにしています。結局、表面利回りは3%以下になってしまいました。
オーナーチェンジ物件は、前のオーナーからの賃貸契約をそのまま引き継ぎますので、契約内容を見ることも大切です。
失敗の原因
- 価格や利回りだけを見て、入居者の属性(年収、勤務先など)や賃貸条件を見なかった。
投資初心者が失敗を防ぐためのポイント
ここまで、投資初心者が陥りがちな失敗の具体例を紹介してきましたが、これらはしっかりと事前の準備や知識があれば防ぐことができます。では、何に注意したら良いのでしょうか?
ポイント1:目先の収益に惑わされない
最終的には、どの程度儲かるかによって投資を判断する方がほとんどだと思いますし、それは正しい考え方です。投資をするなら、儲けを気にするのは当然です。
利回りが何パーセントなのか、ローン支払い後手元にどの程度のお金が残るのかというのは、とても大切なことです。
しかし、そこだけを見てしまうと、罠にかかってしまうことがあります。儲かるには、当然、理由があります。自分にだけ儲かる物件が紹介される訳はありません。なぜ儲かるか、その裏にはどのようなリスクがあるのかを一旦落ち着いて考えてみましょう。
今は良い条件で家賃が取れていても、周辺相場よりも高ければ、いつかは相場に近づきます。また、相場自体が変化することもあります。
安定した家賃収入を確実に得るためには、利回りや月々に収支だけで判断するのではなく、「家賃は周辺に比べて適正かどうか」、「今の入居者が退去した場合、次にどれくらいの家賃で貸すことができるか」、「一つの企業や大学に賃貸需要を依存していないか」などを確認する必要があります。
ポイント2:不動産は古くなれば修繕が必要になることを認識する
不動産は築年数が経過すれば、それ自体も古くなり修繕が必要になりますし、また、居室内の設備(給湯器、エアコン、水回りなど)も老朽化して修繕や交換が必要になります。
マンションであれば、長期修繕計画に基づき、所有者が修繕積立金として、修繕のための資金を時間をかけて積み立てて行きますが、もともとの計画が甘かったり、最近では資材価格が高騰していることから、修繕積立金が不足してしまうこともあります。
給湯器やエアコンなどの設備は、家賃が5万円だからといって、20万円の部屋の四分の一の価格にはなりません。従って、家賃単価が低い部屋は、設備の経費率が高くなってしまうことを認識しておく必要があります。
修繕費用が心配な場合は、修繕費用もサポートしてくれるような管理プランもありますのでそちらを利用するか、もしくは、新築や築浅の物件を購入するようにしましょう。
ポイント3:オーナーチェンジ物件であれば契約内容と入居者を確認する
オーナーチェンジ物件は、購入後すぐに家賃収入を受け取ることができますので、ローンの支払いなどを考えると、キャッシュフローが見えやすく、投資初心者には安心できる投資と言えるでしょう。
しかし、前のオーナーが契約した賃貸契約をそのまま引き継ぎますので、契約や入居者については、購入前にしっかりと確認する必要があります。
また、入居者がすぐに退去して、新たに入居者を募集する可能性も頭の中に入れておかなければなりません。その場合の募集にかかる経費や設定家賃についても確認しておきましょう。
ファンドマネージャーからのアドバイス
ここまで投資初心者にありがちな失敗例と、それを防ぐためのポイントを解説してきました。
投資前にいろいろと確認すべきことが多くて、不安になってしまい、投資自体をやめてしまいたくなりますが、そんな方のため、失敗しないために最低限必要なことを紹介させていただきます。
すぐに決めない
不動産営業マンは、物件を紹介したその場で結論を求めてくる場合があります。「こんな良い物件は、すぐに無くなってしまいますよ」と言われると、どうしてもその場でイエスと言いたくなります。
しかし、そこはぐっと我慢して、最低でも2~3日は時間をおいて、その間に人に相談したり自分で調べる時間を取りましょう。
投資経験者で、ある程度不動産のことが分かっている場合は即断即決もありとは思いますが、やはりあまりお勧めはしません。
一旦、冷静になって考えることが必要です。
他の人に相談する
他の人に相談して客観的な意見を聞いてみましょう。投資経験者や他の不動産会社に相談すれば、儲かる話しに隠されたリスクを見つけもらうこともできます。
決して一人で決断してはいけません。
全く知識の無い状態で話を聞くのは避ける
不動産投資をするのであれば、全く知識が無い状態で、不動産会社の話しを聞くのはやめましょう。事前にネットで調べたり、セミナーに参加し、ある程度の知識は持って臨むようにしましょう。
まとめ
不動産投資は投資金額が大きく、更に、大部分の方がローンを利用するため、失敗することができません。儲けるというよりも、大きく失敗しないということを心がけて投資に臨みましょう。大きく失敗しない方法は、それほど難しくありません。