不動産投資におけるレトロブームに関し、前記事では、古民家投資について解説しましたが、本記事においては、ヴィンテージマンションへの投資について紹介して行きます。
そもそもヴィンテージマンションとは何か?
ヴィンテージマンションに関して、正確な定義はありませんが、一般的なマンションは築年数が古くなると価値が落ちてくるのに対して、長い築年数を経ても、価値を維持、または価値を高めているような物件もあります。
一般的には、このような物件が「ヴィンテージマンション」と呼ばれています。
欧米では築100年を超えるマンションもあるようですが、日本におけるマンションの歴史はそれほど古くなく、1956年に分譲された「四谷コーポラス」が国内初の民間分譲マンションと言われています。
ヴィンテージ系で代表的なマンショには、広尾ガーデンヒルズ、ホーマットシリーズ、ドムス、秀和レジデンスなどがあります。特に広尾ガーデンヒルズは、築40年近くになるものの、売買価格は下落せず資産価値を保っています。
ヴィンテージマンションが脚光を浴びる背景
では、なぜここ最近、ヴィンテージマンションが脚光を浴びて、不動産における「レトロブーム」を巻き起こしているのでしょうか。
その1:新築マンションの値上がりと供給戸数の減少
首都圏のマンション供給戸数は、ここ数年3~4万戸台ですが、20年程前は8万戸台であったことを考えると随分と減少しています。
これは、需要サイドの問題というよりも、供給サイドの問題として、マンション開発用地と建築コストの上昇により起こっています。
マンションデベロッパーは、限られたマンション用地を事業化するため、ネームのあるゼネコンよりも建築コストの安いゼネコン、デザイン性のあるマンションよりも、建築コストが抑えられる、パターン性があるデザインを採り入れるようになりました。
それでも、都心における新築マンションは、一億円以上の物件が珍しくなくなり、共働きの、いわゆるパワーカップルでないと手が出せない状態になっています。
そこで、中古物件やヴィンテージマンションが注目されるようになりました。
その2:リノベーション・リフォームの選択肢が広がる
ヴィンテージマンションは築年数が経っており、建築時のままの状態で住み続けるのは非常に難しい状態です。特に、風呂・台所・トイレなどの水回りは、新しいものは、機能自体も進化しているので、ほぼ交換が必要です。
その他、間取りなども、現代の生活様式に合わせて、変更が必要なものもあります。
以前は、壁紙や建具などを交換するリフォームが中心でしたが、最近は、間取り変更も含めて大規模なリフォーム業者も増え、購入者の選択肢が広がっていることも、ヴィンテージマンションの購入を後押ししています。
ヴィンテージマンションの特徴5例
次に、ヴィンテージマンションに共通する特徴について、紹介して行きます。
その1:立地が良い
ヴィンテージマンションは、いわゆる港区、千代田区、渋谷区など人気エリアに立地しているという特徴があります。
全てが駅からの距離が近いということではないのですが、少し距離があっても、居住環境が良い高台にあるものなど、それぞれ特徴がある好立地にあります。
その2:建物の状態・管理状態が良い
ヴィンテージマンションは、大手ゼネコンで施工されたものが多いことから、建物に対する安心感があります。
また、管理組合がきちんと機能しており、長期修繕計画に基づき、老朽化した箇所を適切なタイミングで交換・修繕することで、築年数が経過しても、きれいな状態を保つことができています。共用部分なども清掃も行き届いています。
ヴィンテージマンション自体の管理費・修繕積立金は、他のマンションに比べて割高ではありますが、その分、日々のメンテナンスや長期にわたっての修繕が可能となります。所有者の方の所得水準が高いことが、高水準な管理を可能としています。
その3:専有面積が広い
最近の都心部において供給されている新築マンションは、坪単価の値上がりが影響し、グロス価格帯を下げるため、比較的小ぶりな50~70㎡の部屋が増えてきています。
若い世代のライフスタイルも変わり、共働きで子供を作らないなど、大きな部屋を必要としていないというニーズもあります。
しかし、ヴィンテージマンションには、100㎡や150㎡など、大家族がゆったりと住めるものが多くあります。シャワーやトイレが二か所あるなど、余裕をもった作りをしているのも特徴です。
その4:デザインに趣がある
秀和レジデンスと言えば、南欧風の青い瓦屋根に白い塗り壁、鉄柵製のバルコニーが特徴的であるよう、ヴィンテージマンションは、それぞれ、デザインに趣があります。
現在のマンションは、コスト的な制約が大きく、都心部においては、最低限の共用部分しかないような物件が増えていますが、ヴィンテージマンションは、どちらかというと採算度外視のような、デザイン重視のようなものも少なくありません。
その5:ブランドとして認知されている
オフィスビルで森ビルシリーズがブランドとして認知されているよう、ヴィンテージマンションでも、秀和レジデンス・ドムスシリーズ、ホーマットシリーズに加え、広尾ガーデンヒルズなどが、ブランドして認知されています。
ヴィンテージマンション投資のメリット
では、このような特徴があるヴィンテージマンションに投資するのは、どのようなメリットがあるのでしょうか。
その1:一定の層の支持を得ており、賃貸人気が根強い
都心で、余裕ある間取りで暮らせるのであれば、家賃は気にしないという富裕層は、多くは無いものの、一定数は常にあります。都心部において同じような物件の供給は、なかなかありません。
ヴィンテージマンションは、やはりヴィンテージであるが故に、賃貸人気は根強く、家賃は下がりにくく、空室もすぐに埋まりやすいというメリットがあります。
その2:希少価値から値上がりを狙いやすい
ワンルームマンションと違って、ヴィンテージマンションは、自分で住みたいというニーズもあります。従って、賃貸中の物件を購入して、空室となったタイミングでリフォームをかけて売却し、売却益を狙うというファミリーマンション特有の投資手法を取ることができます。
また、ヴィンテージマンション自体、希少価値があるため、更にプレミアムがついて、キャピタルゲインを狙うこともできます。
ヴィンテージマンション投資の注意点
もちろん、ヴィンテージマンションへの投資に関しては、注意すべき点もあります。
注意点1:耐震に関して
東京にも近いうちに大型地震が起こる可能性があると言われて久しいですが、建物が耐震性を備えているかというのは、非常に重要なポイントです。
昭和56年(1981年)5月31日までの建築確認において適用されていた基準が「旧耐震基準」と呼ばれ、翌日の昭和56年(1981年)6月1日から適用されている基準が「新耐震基準」と呼ばれています。
従って、旧耐震基準で建てられたヴィンテージマンションは地震のリスクが存在します。マンションによっては、旧耐震基準であっても、その後、耐震補強工事を行っているものもあります。
築年数や耐震補強工事の有無を確認し、旧耐震のままの物件は避けるようにしましょう。
注意点2:ローンに関して
マンション(鉄筋コンクリート造りの建物)の税務上の耐用年数は47年です。自分が住むための住宅ローンであれば、この年数を過ぎても組むことができますが、投資用のローンは、一般的には耐用年数を超えて組むことはできません。
通常は、投資であっても35年ローンを組むことが多いですが、例えば、築40年であれば、7年のローンしか組めない可能性が高いと考えておく方が良いでしょう。
また、リノベーション費用までは、ローンが組めない可能性もありますし、そもそも、ヴィンテージマンションは高額ですので、給与所得が高かったり、自己資金が多くないと、審査が通らない可能性もあります。
ヴィンテージマンションの投資に関しては、ローンも含めてどのように資金を手当てするかというのが、最大のハードルとなるでしょう。
注意点3:管理費・修繕積立金に関して
ヴィンテージマンションは、建物や管理のクオリティを保つため、管理費・修繕積立金が比較的割高になっています。所有者に富裕層が多いこともあり、金額よりも管理の質を重視することが影響していると思われます。
そのため投資利回りはどうしても低くなってしまうという傾向があります。
その他、古い建物であることから、予期せぬ修繕や交換が発生し、修繕積立金が値上がりするリスクもあります。
事前に長期修繕計画や、組合に関する重要事項調査で財務内容を確認することが大切です。
まとめ
その1:ヴィンテージマンションは、初心者向けではない
この記事ではヴィンテージマンション投資に関して解説してきましたが、投資金額やローンの面などを考えると、ある程度自己資金に余裕があり、更に、不動産投資経験がある方向けと思われます。
これまでとは違った投資をしたい、ちょっと視点を変えて不動産投資を楽しみたいという方に向いている投資と言えるでしょう。
その2:投資経験者は、レトロ不動産投資を楽しもう!!
不動産投資は、新築や築浅でなくてもチャンスは十分にあります!
投資が初めての方は、新築や築浅のマンション、アパート投資が安心ですが、古い物件は工夫次第で利回りが上げられ、投資を楽しめることがありますので、二物件目、三物件目として検討するには良いかと思います。
近年は洋服でも、家具でも、車でも古くて良い物にプレミアムが付く、一種のレトロブームが起きています。
特に若い人がそういう商品に癒しを求めたり、それを楽しんだりしていますし、高年齢者もそれを懐かしく思い親しみを持ってくれると思います。
不動産投資においても、古民家やヴィンテージマンションなどの「レトロ不動産」にも対象を広げ、研究してみるのも、不動産投資を楽しむ一つの方法だと思います。