個人が居住している、もしくは居住していた不動産を売却する際に、要件を満たしていれば「居住用不動産の3,000万円特別控除」が適用されます。
居住用不動産の3,000万円特別控除とは、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度のことです。
譲渡所得は、不動産を売却して得られる所得のことで、以下のように算出されます。
譲渡所得=売却価格 –(取得費+譲渡費用)
3,000万円控除の適用要件
3,000万円特別控除の適用要件は6つあります。まず、売却する物件は居住用の物件であることが前提です。この前提を満たしたうえで、特別控除を受けられる適用要件は以下の通りです。
要件1:下記のいずれかを満たすマイホームであること
- 現在、主に住んでいる自宅である
- 転居済みの場合、転居後3年目の年末までの売却である
- かつ土地の売却契約締結が解体から1年以内であり、その土地を賃貸していない
- 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である
要件2:物件の買主が親族や夫婦、同族会社など、特殊な関係でないこと
要件3:売却した年の前年、前々年に、3,000万円の特別控除またはマイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと
要件4:売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと
要件5:売却した不動産に関して、固定資産の交換特例、収用等の特別控除などほかの特例の適用を受けていないこと
要件6:災害によって売却する場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること
控除を受けるには、上記6つの項目を全て満たしている必要があります。マイホームの定義の詳細については「租税特別措置法第35条」に記載されています。
3,000万円控除のケース別要件
その1:相続の場合
自分が相続人となった空き家を売却する場合にも適用されます。もともと不動産を所有していた人が住んでいた家であることが前提条件であり、一時的に誰かが住んだり、建て替えを行ったりすると適用されません。
その2:取り壊した後に売却した場合
建物を取り壊した後に売却した場合も控除の対象となります。ただし、売買契約が成立する前に対象の敷地を駐車場や賃貸などで人に貸してしまうと、適用除外となります。
その3:土地や建物を誰かと共有している場合
土地や建物を誰かと共有している場合、共有者はおのおのの持ち分に対して3,000万円控除を申請できますが、共有者それぞれが確定申告を行うことが必須です。
その4:賃貸併用の場合
住んでいる建物の一部を賃貸として貸し出している場合も控除の対象となります。ただし、控除を受けられるのは、自分が居住のために使用していた居住用家屋の部分に限ります。
その5:店舗併用の場合
建物の一部が店舗になっている場合も控除の対象となります。ただし、賃貸併用の場合同様、適用されるのは自身の居住のために使用していた部分に限られます。
3,000万円控除対象に入らないケース
適用要件を満たしていたとしても、居住用不動産の3,000万円特別控除の対象に入らないケースもあります。適用されないケースとしては、以下のような家屋が挙げられます。
- 3,000万円の特別控除を受けることを目的として入手した不動産
- 自宅を新築する際、一時的な住まいとして利用した家屋
- そのほか、一時的な目的で入居していた家屋
- 趣味や娯楽、保養のために所有する家屋
申請期間や必要書類について
申請期間
3,000万円の特別控除を受けるには、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行う必要があります。たとえば、令和5年に売却したのであれば、令和6年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行わなければなりません。
譲渡所得が3,000万円以下の場合の申請の場合注意が必要です。この場合3,000万円の特別控除が適用されると譲渡所得がなくなるため、税金はかかりませんが、確定申告は必須となります。
必要書類
必要書類 | 受取場所 |
確定申告書・譲渡所得の内訳書 | 本人所有(税務署) |
戸籍の附票 | 役所 |
譲渡した土地・建物の全部事項証明書 | 法務局 |
売却時の書類の写し | 本人所有 |
取得時の書類の写し | 本人所有 |
住民票の写しあるいはマイナンバー | 本人準備 |
3,000万円控除と併用できる控除について
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、売却した時点で10年を超えて所有していた居住用不動産が対象となる控除制度です。
軽減税率というのは、令和元年の消費税率引き上げに伴い開始され、10年超所有軽減税率では、売却益が6,000万円超の場合は20.315%、6,000万円以下の場合14.21%の税率が設定されます。
適用要件は、10年を超えて所有していた居住用不動産であることを前提条件に、3,000万円の特別控除の場合と同様です。
その他の特例
不動産売却で譲渡損失が出たときは、「居住用不動産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」「居住用不動産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といった制度により、ほかの所得から控除したり繰越したりすることもできます。
住宅ローン控除との併用は不可
不動産の購入時には、住宅ローン控除が適用される場合がありますが、3,000万円の特別控除とは併用できません。
そのため不動産売却時に受ける3,000万円の特別控除と、これから購入する住宅の住宅ローン控除、どちらがメリットがあるかミュレーションしてみる必要があります。
居住用不動産の3,000万円特別控除を利用すると、不動産売却時の税金をかなり抑えることができるので、不動産売却時には所有している不動産が適用要件に当てはまるか確認することが重要です。
また利用するためには確定申告を行う必要があり、利用申請に必要な書類も複数あるため注意してください。