年金2,000万円不足問題や、この低金利では資産運用が難しいことから、マンションやアパートなどの不動産を多額のローンを活用し購入することで、不動産投資にチャレンジする若い方が増えてきています。
不動産投資は、ミドルリスク・ミドルリターンの投資と言われていますが、「投資」である以上、必ずリスクはあります。
投資に失敗しないための準備は必要ですが、たとえ不動産投資に失敗したとしても負債が膨らむ前に対応すれば、被害を最小限に抑えることもできるでしょう。
この記事では、不動産投資に失敗する原因から、その解決策、自己破産について解説して行きます。
不動産投資に失敗する原因
①借り手がみつからない
不動産投資は、不動産を保有しているだけで経費がかかります。固定資産・都市計画税に加え、管理費・修繕費も必要です。また、不動産投資ローンを利用していれば、毎月、利息と借入金の支払いと約定弁済があります。
これは、家賃が入って来なくても支払わなければなりません。投資時には、入居者がいたが、その後退去して次の入居者が見つからないケースもあります。見つかったとしても、空室期間が数カ月でも続けば、資金的には大きなダメージです。
また、サブリース契約にともなうトラブルも発生しています。サブリース先が倒産し、予定通りの賃料が入らなかったり、サブリース契約に家賃改定条項があり、数年後に家賃が引き下げられてしまうなどのケースもあります。
賃貸人気が高い立地、設備、管理状況の良い物件を選定することが第一ですが、賃貸契約書なども心配であれば、弁護士などの専門家に事前に確認してもらうことも必要です。
②不動産経営をするための資金が足りなくなってしまう
全額自己資金の投資であれば、心配ありませんが、不動産投資にあたって不動産投資ローンを利用している場合、「資金ショート」を起こしてしまうことがあります。
もともと、月々の収支が数万円の赤字でスタートされる方もいらっしゃると思います。都心部の中古マンションでも、フルローンであれば、毎月の黒字は僅かでしょう。
金利が上昇してしまったり、管理費用・修繕費用が上がってしまうと、収支はたちまち悪化してしまいます。この分を家賃に転嫁することは、なかなか難しいので、自己資金で対応するしかありません。
少ない自己資金でスタートされたり、生活環境の変化(結婚、転職、マイホーム購入など)で他に資金を使ってしまっていると、不動産経営をするための資金が足りなくなってしまうような事態にもなりかねません。
収支が良い物件を購入することも必要ですが、自己資金を多めに準備することと、ローンの比率を下げることは、資金不足に陥らないための予防策となるでしょう。
③不動産価格が大幅に下落してしまう
不動産投資ローンが35年などの長期契約であり、完済まで保有しているプランであれば、保有している不動産価格の動きはあまり影響がありません。
もちろん契約上は、担保価格が著しく下落して担保不足となった場合は、追加担保を差し入れるような契約になっているとは思いますが、利息と元金の返済を約定通り支払っていれば、実務的には、そのようなことは請求されません。
しかし、融資期間が比較的短く、その時にある程度の残高が残り、借り換えを前提とした契約であったり、理由があって保有している不動産を途中で売却する場合、その時の不動産価格が大幅に下落していると、次の調達資金や売却資金で、現行の借入全額を返済できない場合が生じます。
融資期間は長く、無理のない返済計画であることが必要です。
④災害により不動産が滅失してしまう
火災保険に入っていたとしても、災害による被害が全額カバーできない場合もあります。補償金額が時価の設定であると、築年が経っている建物では、時価は低くなっていますので、災害により建て替えをしようとしても保険金だけでは賄えなくなります。
また、地震保険も地震による損害全てをカバーできるかどうかグレーなところがあります。
ただし、むやみに高い保険料を払う必要もありませんので、保険会社やローン契約をする金融機関と相談して、物件の築年数や立地、タイプを考慮して保険内容を決めましょう。
不動産投資に失敗したときの解決策
不動産は、株式などの金融商品と違って、取引市場が無いため、取引コストは高く、すぐに売買することもできません。そのため、不動産投資で失敗してしまったとしても、すぐに「損切り」ができる方は、かなり少ないと思います。
不動産のキャッシュフローを改善するにはいくつかの方法があります。
- 家賃を値上げする
- 管理会社を変えたり、自主管理に変更して、管理費・修繕費用を節約する
- 自己資金でローンの一部繰り上げ返済を行う
このような対策をとっても、保有していることがご自身の負担となるようであり、売却価格がローン残高を上回るようであれば、早期に売却してしまうことをお勧めします。
しかし、そのような状況では、だいたいのケース、売却金額ではローン残高を賄えない「オーバーローン」の状態です。オーバーローンであると、自己破産しか方法は無いかと思われる方もいらっしゃると思いますが、その前にいくつか検討する方法がありますので、その方法を解説して行きます。
①まずは任意売却を検討
(ア)任意売却
任意売却とは、ローン債権者(銀行やその保証会社)と交渉をして、ローン残高以下の金額での売却を認めてもらい、担保権(抵当権など)の抹消をしてもらう方法です。
(イ)任意売却のメリット
任意売却は(強制)競売と比較して、いくつかのメリットがあります。
- 高額での売却が期待できる
- 早期に売却ができる場合もある
- 他人に知られるリスクが低くなる
やはり最大のメリットは「価格」です。一般的には競売は市場価格よりも下、任意売却は市場価格に近い金額で売ることができると言われています。
②任意売却に成功しても多額の負債が残ってしまったら
オーバーローンの状態なので、任意売却に成功しても、負債は残ってしまいます。では、残った負債の処理方法はどうなるのでしょうか。
(ア)任意整理
任意整理は、手続きが最も簡単で費用も安く済みます。残った負債総額がそれほど多くない場合、金融機関も任意整理に応じてくれやすくなります。任意整理では、残った負債を時間をかけて長期間で返済することになります。通常であれば、遅延利息などが発生しますが、任意整理により、自分の収入の範囲内でできる限り無理がない金額を長期にわたって返済していくことになります。
(イ)個人再生
個人再生は、弁護士や認定司法書士に手続きを委任し、裁判所に申し立てを行います。任意整理ですと、残った負債の減額はあまり期待できませんが、個人再生では負債の大幅な減額も期待できます。但し、投資用不動産購入のためのローンは適していないのが実情です。
(ウ)自己破産
自己破産は、個人再生が出来なかったり、個人再生を利用しても借金を返せない場合の最終的な解決手段です。個人の自己破産では、全ての財産が差し押さえられる訳ではありません。今後の生活に必要な99万円までの現金を含んだ財産の他、生活家電や家具などの生活必需品なども手元に残すことができます。
自己破産の最大のメリットは、免責を得られれば、残っている負債は全額免除となります。任意整理・個人再生では、手続き後に長期間にわたって返済を続けますが、自己破産であれば、すぐに借金から解放されます。
困った時には
投資した不動産に関し、金銭的に困ったことが生じたら、売主である不動産会社か仲介会社に相談してみましょう。不動産会社の提携金融機関を利用している場合、その不動産会社にも影響が出るので、何かしらの対策を提案してくれるかも知れません。
もし、それでも難しいようでしたら、早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。ほとんどの弁護士事務所は借金に問題について、無料相談などを実施していますので、ネットなどで探して、事態が深刻になる前に気軽に相談してみましょう。
ファンドマネージャーからのアドバイス
不動産投資で損切りの判断をして、実行に移すのは大変難しいです。しかし、これまでの経験から言うと、損切りは早めにするか、徹底的に耐えるかのどちらかが良いでしょう。
ただし、無策で何もしないというのが最悪な判断です。物件のキャッシュフローが悪化したり、契約上問題が起こった場合は、速やかに専門家に相談して改善策を探りましょう。
不動産投資は多額の借金を背負っての投資です。それなりのリスクを負った投資ですので、慎重に取り組むことと、もし失敗してしまった際にとるべき方法なども事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資ですが、家賃収入が入らなくなったり、災害が起こるなど、手元資金では対応できない事態も発生してしまいます。
早期にリカバリーできないのであれば、損切りの決断を早めにすることも重要です。もし、損切りをしても負債が残るようであれば、任意売却・任意整理などの方法を検討し、それでもだめなら、自己破産に進むしかありません。
何もせずにそのままにしておかずに、問題が発生する予兆があれば、すぐに専門家に相談するようにしましょう。