老後に向けての資産運用、日本の銀行で円の定期預金を始めても、今の時代、なかなか増やすことはできません。参考までに本日(2021年6月4日)現在の三菱UFJ銀行のスーパー定期預金の店頭金利は金額・期間にかかわらず、0.002%です。つまり、100万円を預金しても、一年の利息は20円にしかなりません(税引前)。
インターネットや新聞で、外貨預金の広告を時々目にしますが、日本の預金金利より高いことから、興味は持つものの、預金の方法やリスクがよく分からないので、手を出さない方も多いでしょう。確かに外貨預金は預金ですが、円の預金と違って、元本が保証されるものではありません。しかし、超低金利の円預金に比べればメリットもあります。
ここでは、外貨預金を始めるために知っておくべき基礎知識などを解説して行きます。
外貨預金の基礎知識
どこで預金できるのか
外貨預金は、だいたいどの銀行でも取り扱っています。駅の近くにある、都市銀行とよばれる、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行やそのグループ会社の信託銀行の他、インターネット専業銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)でも取り扱っています。日本にある外国の銀行の支店でも、大概が取り扱っています。ただし、ゆうちょ銀行では外貨両替はできても外貨預金はできないようですし、信用金庫では外貨預金は取り扱っていないようです。
取り扱い通貨・利率・預金の種類
各銀行が取り扱う、外貨預金の種類は、銀行によって異なります。米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドルなどの主要通貨はだいたいどの銀行でも取り扱っています。他にも、人民元、韓国ウォン、タイバーツ、南アフリカランド、トルコリラなどさまざまな通貨が選択可能です。
銀行でも、インターネットと窓口では取り扱い通貨の種類が異なりますので、事前に確認しておきます。三菱UFJ銀行であれば、インターネットバンキング・テレフォンバンキングであれば、9通貨の取り扱いですが、店頭であれば、25通貨まで増えます。
外貨預金の利率も、銀行によって異なります。一般的には、定期預金は預入期間が長くなると、金利は高くなりますが、外貨預金では、短い方が金利が良い場合もあります。また、外貨預金は、キャンペーンを実施していることが多く、その時期は金利が高かったり、手数料が安くなることがあります。
預金の種類は、普通預金と定期預金が一般的ですが、銀行によっては、普通預金のみのところもあります。
外貨での入出金・送金は可能か?
店頭であれば、外貨での入出金・送金も可能なようですが、日本円と違って、入出金には手数料がかかりますし、送金の手数料も高くなるようです。硬貨での入出金は不可で、紙幣のみという場合も多いですし、店舗によっては取り扱っていない場合もありますので、事前に銀行に確認をとってみましょう。なお、ATMでの外貨の入出金はできません。
いずれにしても、入出金は可能ですので、旅行先で使う現金を外貨預金で貯めておくということもできます。
口座内の外貨を海外の旅行先で使うには、専用のデビットカードなどを作る必要があります。金融機関によって対応が異なりますので、確認してみましょう。日本の銀行も海外に支店はありますが、そこで日本の口座のお金を出金することはできません。また、外国の銀行の日本の支店で口座を開設して入金しても、その国に行って出金することはできません。
外貨預金の手数料
外貨預金を始めるには口座を開設して、外貨を入金します。外貨がない方は、まずは、円の口座も開設して、そこに日本円を入金して、両替をして外貨預金口座に振り替えるか、もともと取引のある自分の口座から日本円を出金し、両替をして、他の銀行に開設した外貨預金口座に送金する方法があります。
外貨預金の口座開設の手数料はかかりません。
なお、日本円から外貨に、外貨から外貨に、外貨から日本円に両替するには、その都度、為替手数料などがかかります。
以下は三菱UFJ銀行の2021年6月4日10:25時点の外国為替相場(スポットレート)です。
通貨名 | TTS(円→外貨) | TTB(外貨→円) |
米ドル | 111.28 | 109.28 |
イギリスポンド | 159.51 | 151.51 |
カナダドル | 92.62 | 89.42 |
スイスフラン | 122.92 | 121.12 |
円から外貨へ換える時は、TTSのレートが適用となります。更に、銀行によっては両替手数料が発生することがあります。両替手数料は銀行によって異なります。ネット専業銀行では、両替手数料無料のところもあります。
また、上記為替レートを見ると、銀行は為替リスクを取らないよう、TTSとTTBに差を設けています。米ドルであれば2円、イギリスポンドであれば8円です。この差額は銀行や通貨によって異なります。預金する側にとっては、両替手数料が安いに越したことはありませんが、このTTSとTTBの差額もなるべく少ない方がいいので、両替手数料と合わせて確認してみましょう。
コスト込みで自分の外貨の出来上がり、何円で外貨になるかを考えて、銀行を比較してみましょう。
外貨預金のメリット
高金利
外貨預金の何よりもメリットは、金利が高いことです。現在はコロナ禍で各国が低金利政策を取っているため、あまり円預金との差はありませんが、それでも、米ドルなら1年もので0.13%(住信SBIネット銀行)、南アランドなら2.7%(同)となります。
コロナ禍からの景気回復を見越して、アメリカでは長期金利が上昇傾向にありましたので、もう少しすれば、短期金利にも動きが出てくるという見方もあります。それなれば、円預金との差も再び出てくるでしょう。
キャピタルゲイン(為替差益)
円を基準に考えると、両替した通貨が高くなれば(円が安くなれば)、キャピタルゲイン(為替差益)を得ることができます。例えば、1ドルを手数料込みで105円で両替して、その後、1ドル=110円になれば、5円分の為替差益が生まれます。つまり、105円から円安に振れると為替差益を得ることができるということです。
逆に、100円の円高に振れてしまえば、為替差損が生まれてしまいます。外国為替は、リスクはあるももの、キャピタルゲインを得るチャンスがあります。
外貨預金のリスク
キャピタルロス(為替差損)
前章でも説明しました通り、外国為替は円高に振れれば、外貨預金にキャピタルロス(為替差損)が生じることがあります。ただし、為替相場は円と米ドルであれば、株式相場よりは動きは緩やかです。
(出典:ヤフーファイナンス)
上記のチャートは、円と米ドルのここ10年の動きですが、ここ10年であれば80円から120円、ここ5年であれば100円から115円の範囲内でだいたい収まっています。
ただし、新興国の通貨、例えば、南アランド、トルコリラなどは、動きが株式相場よりも大きいので、ハイリスク・ハイリターンの通貨と言えます。金利が高いのは魅力的ですが、それ以上に為替差損を被るリスクもあります。
手数料
外貨預金を設定するために、外貨両替をすれば手数料がかかります。逆に、円の資金が必要となり再度、円転すれば、また為替手数料がかかってしまいます。金利は高いものの、日本円と外貨の往復の手数料を考慮すると、為替差益・差損にかかわらず、元本が減ってしまうこともあります。
流動性
急に資金が必要となった際、円定期預金であれば中途解約も可能ですし、元本を割り込むことはありません。
しかし、外貨預金の場合、中途解約により手数料がかかって、元本を割り込んでしまうこともあります。また、通貨によっては、すぐに両替をして日本円に戻すことができなくなる事態も想定する方が良いでしょう。米ドル、ユーロなどの先進国通貨であれば問題ありませんが、新興国の通貨は、政治や経済に問題が起きれば、たちまち流動性が落ちてしまい、両替できないことはないですが、不利なレートになることもあります。
外貨預金をおすすめしない人
ハイリスク・ハイリターンを好む人
外国為替は、米ドルなどの先進国通貨であれば、株式相場や新興国通貨に比べて、動きはそれほど大きくありません。あくまでも預金ですので、高金利を享受しながら資産を分散するというのが外貨預金の主な目的です。
預金利息よりも、為替差益で儲けたい方は、FXと呼ばれる、いわゆる「外国為替証拠金取引」の方が向いているでしょう。こちらは、少額の元手でレバレッジを利かして外国為替に投資することができますが、リスクも大きい分、リターンも大きくとれる場合があります。
短期間での利益を求める人
外貨預金はあくまでも預金です。いくら日本円に比べて利息が高いといっても、急に資産が増えるものではありません。長期的に安定して増やすことが目的です。為替差益が出たからと言って、短期間で売買を繰り返せば、手数料もかかりますので、それほど利益を稼ぐことはできません。
短期間でも利益を求めるのであれば、FXであったり、外国株式への投資をお勧めします。
ファンドマネージャーからのアドバイス
日本に住み続けるのであれば、日本円のみでの投資で良い気もしますが、日本経済や我々の暮らしは世界とつながっています。自分の資産だけ日本円で完結するよりも、世界を知る方が良いでしょう。外貨預金はその第一歩となります。
世界経済は、コロナ禍で一時的に停滞していますが、再度、成長することが期待されています。片や日本経済は少子高齢化などもあり、コロナ禍を克服したとしても、それほど大きく成長することは期待されていません。自分の資産を成長が期待される国や成長の恩恵を受ける通貨に投資することも重要です。
筆者も米ドル預金を持っています。以前は新興国通貨なども持っていましたが、新興国通貨は、金利は高いものの、為替の動きが大きく、通貨の種類をたくさん持っていると管理が大変なので、今は米ドルだけにしています。当時はメキシコペソで6%くらいの金利が取れていたので、為替が大きく動いても何年か持っていれば、それほど大きく損することはありませんでした。
外貨預金を持っていると、やはり外国為替レートの動きが気になります。各国の大統領選挙や金融政策で為替レートは大きく動きますので、外貨預金を持っていると、世界におけるニュースが身近なものに感じます。
友人などの話しを聞くと、意外にも外貨で運用している人は多くありません。なかなか、始めるきっかけが難しいかも知れませんが、インターネット専業銀行では、さまざまな外貨預金のサービスを提供していて、手数料も安く手軽に外貨預金を始めることができます。
まとめ
1.外貨預金は都市銀行、信託銀行、インターネット専業銀行、外国銀行の日本での支店などで取り扱っています。ゆうちょ銀行での取り扱いはありません。
2.取り扱っている通貨の種類、預金の種類、手数料は銀行によって異なります。
3.外貨での入出金・送金も可能ですが、円よりは手数料は高くなります。
4.外貨預金は円預金に比べて利息が高かったり、為替差益で稼げるメリットがありますが、逆に為替差損が生じたり、手数料がかかるなどのデメリットもあります。
5.ハイリスクハイリターンを好む方や短期での利益を求める方は、外貨預金よりも、FXや外国株式への投資をお勧めします。
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