【税理士による解説】離婚時の財産分与について~財産分与で押さえたい基礎知識他

離婚に伴う財産分与とは

夫婦が離婚する際に発生する手続きの1つが「財産分与」です。

財産分与は夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を離婚時に分け合うことで、一方が他方に対して請求することができる手続きです。

分与の対象となる財産には、預貯金や家具・家財のほか、夫婦で所有する家や土地などの不動産、住宅ローンの残債なども含まれます。

財産分与は離婚にあたって発生する手続きですが、夫婦の合意があれば離婚時の財産分与はしなくてもよく、これを財産分与請求権の放棄といいます。

離婚での財産分与で押さえておきたい基礎知識

その1.期間

財産分与の請求期限は、離婚が正式に成立してから2年間です。この期限は家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てられる期限となり、2年以内に財産分与の結果が確定している必要はありません。

また、離婚してから2年が経過している場合でも、双方が財産分与に合意している場合は任意での財産分与が可能です。ただ請求される側としてはメリットがないため、請求に応じる可能性は低いといえます。

その2.財産分与の割合

離婚時の財産分与の割合は家庭への貢献度で決まり、専業主婦(夫)問わず夫婦で2分の1ずつとなるのが通例です。

これは、婚姻に関する定めが書かれた憲法第24条にて、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。」と定められているためです。

ただし、他方の特別な努力・資格・能力によって形成された財産がある場合や、夫婦間の家事や家計に対する貢献度の差が大きい場合、それらに応じて財産分与の割合は変わります。

その3.離婚時の財産分与の流れ

①対象となる財産のリストアップ・財産額の計算

②財産額を証明できる書類の作成

③夫婦間での協議

④離婚協議書の作成

離婚協議は必ずしも家庭裁判所に調停を依頼する必要はなく、夫婦間や弁護士を通して話し合うこともできるので、2年をすぎても合意があれば財産分与は可能です。

なお離婚協議書とは、親権・養育費・慰謝料・財産分与など、夫婦の間で離婚する諸条件を整理して明記する合意書を指し、法律に違反している内容でなければ法的効力が発生し、特に作成は義務ではありません。

その4.財産分与と贈与税

財産分与では基本的に贈与税は発生しません。

ただ多額の財産分与が行われた場合や、贈与税・相続税の課税を避けるために財産分与を行ったと認められる場合には、贈与税が生じる可能性があります。

その5.財産分与と所得税

財産分与で不動産を売却した場合には、「含み益」(不動産価格の上昇により得られる利益)が発生すると所得税・住民税などの譲渡所得税と呼ばれる税金が課せられる場合があります。

財産分与の種類

その1.清算的財産分与

清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産をそれぞれの貢献度に応じて分配する方法です。

専業主婦(夫)で収入がなかった場合でも、家事労働という形で貢献したとして、財産分与を受けることが可能であり、離婚原因を作った有責配偶者であっても、財産分与の請求ができます。

その2.扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、配偶者に経済面での余裕がなく、離婚後の生活に困窮すると見込まれる場合、相手を扶養するために行う方法です。

扶養的財産分与を行う際には、夫婦間で話し合い、経済的に余裕のあるほうが相手に対し、生活費として決まったお金を一定期間支払います。

その3.慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、離婚原因を作ったほうが、慰謝料の意味を含めて行う財産分与方法となります。

慰謝料とは、不貞行為や離婚による配偶者としての地位の喪失といった、精神的苦痛を受けたことに対する請求です。

従って、慰謝料的財産分与によって、請求側の精神的苦痛に対する全ての賠償がなされたと認められる場合、重ねて慰謝料請求をすることはできません。

財産分与と慰謝料は本来別物ですが、どちらも財産の移動が発生するものであるため、まとめて行う場合にこの方法が用いられます。

慰謝料は金銭で支払うのに対して、慰謝料的財産分与は金銭以外の不動産や株式などで分けることが可能です。

また、慰謝料的財産分与は離婚が成立してから2年以内に請求する必要がありますが、慰謝料請求は離婚成立から3年がたつまで請求が認められます。

離婚時に分与の対象となる財産

夫婦が結婚し、同居している間に築いた財産は、どちらの名義であっても「共有財産」と呼ばれ、分与の対象となります。共有財産の対象となるものは以下となります。

預貯金など

夫婦共同の銀行口座の預貯金はもちろん、婚姻中に開設した私用の銀行口座の預貯金についても、離婚時の財産分与の対象となります。離婚時の協議では、共有財産を明確にする必要性があることから、夫婦が各々で管理する銀行口座の情報を相手方へ開示しなければならない場合もあります。

生命保険(積立型)

保険は大きく生命保険と損害保険に分けられますが、財産分与の対象となるのは、一般には貯蓄の側面がある積立型の生命保険となります。具体的な分与の方法としては、解約返戻金額の相当分を支払う方法などがあり、なお掛け捨て型の生命保険は財産分与の対象とはなりません。

有価証券(株券、債券など)

株式や債権などの有価証券は、結婚後に購入したものが財産分与の対象となります。購入資金が独身時代の貯金や親族からの相続など、財産分与の対象とならない財産から出されている場合は財産分与の対象とはなりません。

不動産(一戸建て、マンション、土地など)

婚姻中に、共有財産にて購入した不動産については財産分与の対象となります。独身時代の貯金や親からの相続・贈与などが不動産の購入費用に含まれている場合は、それらを差し引いた金額が財産分与の対象となります。

自動車

購入資金やその維持費を共有財産から支出している場合、車も財産分与の対象となります。一括購入・ローンを完済している場合は、車の査定額が分与の対象となります。

ローンが残っている場合は、車の査定額がローンの残債よりも高い場合、車の査定額から残額を差し引いた金額が対象となり、車の査定額のほうが低い場合は、車には資産価値がなく、財産分与の対象とはなりません。

年金

財産分与では、将来支給される公的年金そのものは財産分与の対象とはなりませんが、その代わりに「年金分割」という制度があり、婚姻中に納めた厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を夫婦で分け合うことが可能です。

退職金

退職金も財産分与の対象となりますが、婚姻期間に相当する退職金のみが財産分与の対象となります。まだ退職金をもらっていない場合は、就業先の就業規則や夫(妻)の転勤状況、定年までの残りの期間により財産分与の対象は異なります。

離婚時に財産分与の対象とならないもの

結婚後に築いた財産であっても相手や自分だけが所有している財産は「特有財産」と呼ばれ、分与の対象から外れます。

  • 独身時代の貯金
  • 嫁入り道具として持参した家財
  • どちらかの親から相続した遺産
  • 別居後に築いた財産 など

離婚に伴うマイナスの財産(負債)の扱い

財産分与の対象には、ローンや借金といった「マイナスの財産」も含まれます。

結婚生活を営むために生じた借金は、夫婦共同の債務と見なされるためです。

  • 住宅ローンの残債
  • 教育ローンの残債
  • クレジットカードの残債
  • 未払金(水道光熱費やマンションの賃借料、管理費など)
  • 車の購入ローンの残債 など

このようなマイナスの財産を持つ場合、プラスの財産がマイナスの財産を上回っていれば、プラスの財産からマイナス分を差し引いた残りの金額を分割します。

また夫婦のどちらかが個人的に作った借金は、婚姻生活とは関係ないので共有財産に含まれず、分与の対象にはなりません。

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