【税理士による解説】2023年中に行われる「タワーマンション増税」について~タワーマンションを使った節税策とはどのようなものなのか

タワーマンションや高層マンションは住戸の数が多いため、通常のマンションや一戸建てに比べて相続税や固定資産税が節税できることがあります。

マンションの相続税は、現金や株式のように時価で計算されるのではなく、土地や建物それぞれに決められた評価額があり、その額に応じて課税されます。

土地や建物の評価額は、実際に取引されている価格よりも低い額で設定されているため、現金や株式を相続するよりも節税効果が見込まれます。

また、マンションの土地については、敷地全体の評価額から各住戸の持分を割って計算するため、同等の敷地面積であれば住戸数の多いタワーマンションは住戸数の少ない低層マンションに比べてさらに評価額が少なくなります

タワーマンション節税とは不動産を購入した金額と、税額のもとになる不動産の評価額との差額を利用した節税方法のことです

2023年中にタワーマンションの相続税評価額の算出基準が変わり、上記のような相続税評価額と、実際に取引される価格の差を利用した節税策の効果が減少してしまいます

固定資産税の節税の仕組み

固定資産税は、土地と建物に対して別々にかかり、それぞれの固定資産税評価額に税率をかけることで算出されます。

前述のとおり住戸数の多いタワーマンションの場合、一戸当たりの土地の持分面積が少なくなるため、土地の固定資産税は抑えられます。

ただし、建物自体の評価額は通常のマンションより高くなりやすいため、固定資産税は相続税に比べて大きな節税効果は期待できません

タワーマンションにかかる固定資産税においては2017年に税制が改正されました。

以前は、マンションのどの階でも固定資産税の税率は同じだったため、低層階の物件に比べて購入金額が高い傾向にある高層階の物件のほうが、固定資産税の節税効果が大きくなる仕組みになっていました。

しかし、税制改正が行われたことで、高層階になるにつれて固定資産税率が上がり、高層階の物件のほうが節税効果が大きくなるといった問題が改善されました

相続税の節税の仕組み

相続する際、タワーマンションで財産を相続すると節税できる可能性があります。

前述の通り、現金や株式を相続する場合、そのままの価格が相続税の課税価格(課税の対象となる財産の価格)となりますが、マンション(不動産)の場合は、「相続税評価額」が課税価格として扱われます。

マンションの相続税評価額は、実際に市場で取引される価格に比べて低く設定されている傾向にあるため、その価格の差を利用して相続税の節税がなされるという仕組みです

現金で相続せずに、不動産で相続すると節税できることに加え、タワーマンションは敷地に対する住戸数が多いため、一戸当たりの持分とされる土地の面積が小さくなります。

その影響で、タワーマンションの土地に対する相続税評価額が時価よりもかなり低くなり、相続税も抑えられるのです。

税制改正の背景

タワーマンションの相続税の見直しは、2022年4月の最高裁判決がきっかけではないかといわれています。

被相続人が、銀行から借り入れした約10億円と自己資金で、合計約14億円のタワーマンションを2物件購入。

被相続人の死後、相続が発生した際には、タワーマンションの相続税評価額は合計で約3億3,400万円ほどでした。

相続人は被相続人が銀行から借り入れた10億円の負債も併せて相続していたため、相続税評価額は相殺され、相続税をゼロとして申告。

しかし、国税庁は2億4,000万円が適切な相続税額とし、更正処分を下しました。それに対し、相続人は不服を申し立てましたが、裁判所は国税庁の主張を認めました

税制改正の内容

今回の税制改正では、タワーマンションにおける評価額の算出基準が変更されており、現行の税制では含まれていなかった「築年数」や「階数」などが基準に追加されています。

新たな基準が盛り込まれることによって、相続税評価額は実勢価格(時価)の4割から6割程度になっています。

相続税評価額が上がると、それに伴い相続税も高くなるため、現在に比べて相続税対策としての効果が小さくなります。

なお、タワーマンションの相続税における税制改正は2023年中に行われ、2024年1月1日からの適用となります。

相続税の計算方法

1億円の現金を相続する場合

1億円の現金を相続する場合、1億円がそのまま課税価格となり相続税率30%で計算します。

ただし、相続額が5,000万円超~1億円以下である場合は、700万円の控除を受けることができます。

1億円×30%–700万円=2,300万円

相続税改正前に1億円のタワーマンションを相続する場合

1億円のタワーマンションを相続する場合、相続税評価額は現在の実勢価格(時価)の4割程度となるため、課税価格は4,000万円とされ税率20%で計算します。

ただし、相続額が3,000万円超~5,000万円以下である場合は、200万円の控除を受けることができます。

1億円× 40%=4,000万円
4,000万円×20% –200万円= 600万円

上記の通り、タワーマンションでは現金を相続する場合よりも1,700万円の節税が可能となります。

相続税改正後に1億円のタワーマンションを相続する場合

税制改正後、1億円のタワーマンションを相続する場合、相続税評価額は現在の実勢価格の6割程度となるため、課税価格は6,000万円とされ相続税率30%で計算することになります。

ただし、この場合は相続額が5,000万円超~1億円以下の範囲であるため700万円の控除を受けることができます。計算方法は以下の通りです。

1億円× 60%= 6,000万円

6,000万円× 30% –700万円=1,100万円

税制改正後にタワーマンションで相続した場合、現在と比較すると納税額が500万円多くなってしまいます

2024年以降相続税の税金対策としてタワーマンションを用いるスキームは、下火となるかもしれません。

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