日銀も長期金利上昇を容認!!不動産投資戦略を紹介

日本銀行の大幅な金融緩和政策の下で長期金利は低位にコントロールされていましたが、ここ最近のインフレ率上昇や進行する円安に伴い、その政策を「1%を一定程度超えることを容認する」までに転換しています。

これは長期金利の話しですが、インフレ率の上昇に伴って、短期金利もいずれは上昇する可能性もあるでしょう。

この記事では、長期金利の上昇が不動産市況へどのような影響を及ぼすかについて、基礎的な事項を解説して行きます。

日本の長期金利が上昇した経緯

その1:世界的なインフレの進行と利上げによる封じ込み

ウクライナ紛争によって、ロシアからの原油・天然ガスの輸出、ロシアとウクライナからの小麦などの穀物輸出が大幅に減少し、欧米を中心にエネルギーと食糧の価格が上昇しました。

また、コロナ下で先進国各国は国民に大量の給付金を配布したので、手元流動性が増加し、コロナが明けた後にはそのリベンジ消費が急増したのことから、物資の供給減と需要増加でインフレが加速しました。

これに対応して、米国では、米国連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標を5%近く短期間で上昇させ、欧州の中央銀行であるECB、英国の中央銀行であるイングランド銀行も同様に政策金利を上げました。それに追随して長期金利も上昇しています。

その2:世界的なインフレが日銀の重い腰を動かす

世界の流れとは反対に、日銀は当初、日本ではインフレが認められないということで、緩和政策を継続して政策金利を上げていませんでした。

しかし、日米の金利差から円安が進み、輸入物資が価格上昇したことと、コロナが明けて一斉に経済活動が再開したために人出不足となり、人件費が上昇したことで、日本もインフレが進むことになりました。

更に、止まらない円安は、世界的に見ると日本の賃金が下落することにもなったので、日銀も長期金利の上昇を容認し、長年に亘った低金利政策を転換しました。

短期金利は依然としてマイナス金利政策を継続していますが、これも来年4月あたりから政策を転換し、金利上昇に転じるという識者の予測も出ています。

長期金利上昇が不動産取引に及ぼす影響

日本の長期金利上昇は約10年ぶりと言われていますが、短期金利も含めて金利が上昇すると不動産取引にはどのような影響が出てくるでしょうか。

その1:金利が上昇すれば投資家や個人の購買力は減退する

金利が上昇すれば借入金の支払金利が増えることになるので、ローンで不動産を購入する層にとっては、痛手となります。

例えば、元利均等型返済の住宅ローンであれば、元金+利息が支払額ですから、金利が上昇すれば、元金の返済は減少するので、毎月のローン支払額が同じだと、金利が上昇すれば購入できる物件価格は低くなってしまいます。

米国は、住宅ローンは固定金利型が中心なので、購入時の金利が低ければ、元利金の支払額は変わりませんが、日本の場合、現在、短期プライムレートに連動する変動金利型が中心となっているので、短期金利が今後上昇すれば、毎月の支払金額も増えて行くことになり、住宅購入意欲は間違いなく減退するとになるでしょう。

その2:不動産取引量は減少する

前項で解説した通り、長期金利の上昇により、不動産の購買力が減退することにより、不動産取引量自体も減少する可能性があります。

投資家にとっては、長期金利の上昇は、借入金利のアップだけでなく、金融商品に比べて不動産の利回りが高いという優位性が薄れることを意味します。これまで、不動産へ投資していた資金を他の利回りが取れる債券などに振り向ける動きも出てくるでしょう。

ただし、インフレが長く続く場合は、金利が高くてもインフレによる貨幣価値の低下に対する備えとして、不動産などの現物資産を購入する投資家や個人が増加する傾向もありますので、一様に減少することは無く、インフレで値上がりが期待できる地域(都心部など)の取引は依然として活発であると予想されます。

その3:建築コストは上昇する

多くの建設会社は銀行借入にて運転資金を調達しています。そのため、長期金利上昇によって、建設会社の資金調達コストが上昇します。

また、インフレが同時に進行していれば、建築資材のコストも上昇するので、資金調達コストとダブルで原価が上昇し、そのまま建築コストに転嫁されることになります。

新築マンションなどは、ますます価格が上昇することになるでしょう。

その4:インフレの影響を受けて不動産賃料は上昇する

賃料は、金利というよりも、需給と物価水準に影響を受けやすいものです。

住宅家賃に関しては、アットホームが発表した「2023年8月全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」によると、東京23区のマンションの平均家賃は、前年同月比・前月比ともにシングル向き・カップル向き・ファミリー向き・大型ファミリー向きのすべてにおいて上昇しているようです。

これは、長期金利の上昇というよりも、住宅需要が供給を上回っていることと、インフレに連動した結果と言えるでしょう。

ただし、中古物件であると、家賃改定のタイミングは、おおよそ2年に一度の更新時期に限られるので、家賃の上昇は緩やかにならざるを得ないでしょう。

オフィスビルに関しても、通常であれば、インフレの影響を受けて上昇すべきですが、今のところは、あまり変化はありません。

これは、在宅勤務の増加でスペースの縮小をする企業も増えていることと、港区を中心に新規オフィスの供給が増えて空室率が上がったという背景があります。

ただ、港区同様に再開発が進む渋谷駅周辺は、IT企業の集積により、オフィス需要は堅調ということもあるので、今の新規供給が落ち着けば、オフィス賃料も上昇する可能性が高いと考えられます。

その5:不動産価格の上昇・下落は物件次第

長期金利が上昇すれば、供給サイドはどうしても価格が高くなり、需要サイドは購買意欲や購買力が減退するので、需給のミスマッチが起こります。

従って、一時的に高くなった不動産価格もとこかで折り合いをつけるべく、価格は下落に転じることになるでしょう。

ただ、長期金利と同じ、もしくはそれ以上の幅で家賃を上げることができた物件は、投資家サイドから見れば、投資に値する物件ですので、価格の上昇を期待することができます。

このように、インフレの恩恵を受けて家賃の上昇が期待できる好立地な物件、また、希少性の高い物件は、投資家にとっては、長期金利上昇による調達コストアップ以上の値上がり益が期待できる物件として、価格は上昇するでしょう。

海外投資家の動向は?

今は海外投資家が日本の不動産のメジャーぷれやーとなっています。長期金利上昇局面で、海外投資家がどのように考えているか留意することは大切です。

その1:円安で買われる不動産

海外投資家から見ると、ドル円が1ドル100円の時と150円の時では、ドルの価値が1.5倍となるので、同じ円価格でもドルベースで換算した価格は2/3となります。

日本の経済成長力や日米の金利差から、これから円安傾向に進むと予測した欧米の投資家を中心に、ここ数年、海外投資家が日本の不動産を買い漁り、価格上昇を牽引してきました。

また、日本は超低金利政策を取っていたこともあり、日本において低利で資金を調達し、イールドギャップが取れる不動産に投資する流れも、海外投資家の投資意欲を盛り上げていました。

その2:長期金利上昇でも相対的な優位性は失われない

長期金利上昇により円安が一服し、更に、調達コストが上昇し、不動産利回りとのイールドギャップが取れなくなった現在では、日本の不動産は海外投資家にとって、もはや魅力的でなくなったと思われる方も多いでしょう。

しかし、海外投資家は、世界の中でどこの都市の不動産に投資すべきかという考え方であり、常に国際比較で物事を考える海外投資家の日本への投資意欲は、以下の理由から依然として旺盛のようです。

そもそも世界的に金利は上昇している

インフレと金利上昇は、世界的な流れであり、日本だけ金利が上昇しているということではありません。むしろ、日本の金利の上昇幅は先進国の中では、かなり少ない方です。

日本は安心できる投資先

海外投資家にとっては、日本は治安や政治・経済が安定していて、安心できる投資先と見えるようです。コロナが収束し、世界各地の旅行客が日本に押し寄せているのは、同じ理由かもしれません。

東京の不動産価格は、国際的には割安

東京の不動産価格は上昇し、マンションの平均売出価格が1億円を超えたというニュースも出るくらい、我々には手が出しにくくなってしまいましたが、同じアジアの、上海・北京・香港・台北の専有単価に比べると、まだまだ割安なようです。

長期金利上昇を上手に乗り切る3つの不動産投資戦略

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ここまで、長期金利上昇の背景、不動産取引に及ぼす影響などを解説してきましたが、それでは、長期金利上昇を上手に乗り切るにはどうしたら良いでしょうか。これから、その戦略を紹介していきます。

戦略1:家賃の上昇が期待できる物件

インフレは家賃を上げるチャンスです。ホテルや商業不動産などは、インフレの恩恵を受けやすい物件ですので、これらのREIT(不動産投資信託)に投資するというのも一つの戦略です。

現物不動産となると、マンション投資の場合が殆どだと思いますが、家賃が上がりやすい、利便性の高く、供給が少なく需要が底堅い好立地な物件は当然のこと、家賃更新の時期が近かったり、退去が決まっていて、新たに募集家賃を設定できる物件などに投資して、家賃アップを図る方法もあります。

家賃下落局面では、長期のサブリース契約も有効ですが、家賃上昇を狙うのであれば、サブリースでなく、単なる集金代行などを管理方法として選択することも有効な手段です。

戦略2:海外投資家も知っている立地

海外投資家が投資するような大型オフィスビルなどに投資はできませんが、その物件の近辺であれば、価格は底堅くなり、値上がりも期待できます。

従って、地方の掘り出し物などより、多少値が張っていても、海外投資家も知っている大都市の中心部の物件の方が、良いでしょう。

戦略3:借入をなるべく減らし、固定金利も視野に入れる

長期金利上昇により利息支払負担が大きくなるため、フルローンでなく、余裕を持った資金計画で、頭金を多く準備したり、途中で繰り上げ返済をするなど、借入はなるべく減らす方が良いでしょう。

また、今は変動金利の方が有利ですが、一部を固定金利にするなど、短期金利の上昇も視野に入れてリスク回避するべきと考えられます。

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