気候変動や災害が不動産価格に悪影響をもたらすプロセスについて

2023年夏は過去に類を見ない暑さとなりました。多くの原因があるかとは思いますが、地球温暖化による気温上昇は今後も続き、毎年暑さが増していく可能性があります。

更に、1823年の関東大震災から100年が経過し、首都圏直下型や南海トラフでの大地震がここ30年以内には70%の確率で起こる妥当とも言われています。

このような気候変動や災害などのリスクは、不動産価格に悪影響をもたらします。ここでは、そのプロセスについて基礎から解説して行きます。

地球温暖化によって不動産価格が下がるプロセス

その1:極端な気候条件の発生

近年は猛烈な暑さ、大きな洪水や豪雨、干ばつなどいろいろな現象が世界中で起こっています。

北極では氷河が溶けだしていて、土中にたまっていたメタンガスが空中に湧き上がっていたり、オゾン層が破壊されたりと、今後もそれを止める手段は限られているので、すぐに問題が解決することは無いでしょう。

このような現象が続くと低地や川沿いの不動産は浸水リスク、高地では土砂崩れなどが発生するリスクがあるため、当然、不動産価格に対してはマイナスの影響を及ぼします。

その2:海面水位の上昇と洪水の発生

北極では氷床が溶けだし、海の水量が増加していることから水面が年々上昇しています。

毎年少しずつではありますが、年々積み重なることで、低地や海岸沿いには被害が及び、陸地が減少していく可能性があります。海岸沿いの浸水によって、それらの地域の不動産価格には大きくマイナスの影響を及ぼします。

現に、太平洋に面した米国カリフォルニア州の街の海岸沿いでは、近年、海岸浸食など気候変動の影響で風と波が強まっています。

一部の地域では州や郡、各市が危機感を持っていて、その地域の増改築の制限や自治体が住宅を買い上げ、将来的に転居を促す方法まで模索しているようです。

これらの地価への影響を心配した住民からは、多くの意見が出ているようです。今後、住宅ローンの審査厳格化、損害保険料の上昇など、具体的なマイナス面が明らかになってくることでしょう。

日本においても、地方自治体がハザードマップを作成して、土砂災害警戒区域や洪水や津波の可能性を発表しています。

これらの災害危険地域などに指定された場所は、当然ながら、不動産売買価格にマイナスの影響が出ているようですが、個人的には日本国民にはやや切迫感が足りないに感じます。

今後、日本においても海面水位上昇や洪水による被害が甚大化することになれば、災害危険地域やその付近の不動産価格は更に下落すると思われます。

その3:エネルギー効率の重視

地球温暖化への対策として、化石燃料の消費を減らして、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの利用を中心に移行していく政策が世界中で取られています。

不動産においても、エネルギー効率が重視される流れになっていて、低炭素住宅やエネルギー循環型のビルなどが建設されています。今後、エネルギー効率の悪い古い建物は価格が下がることになるでしょう。

その4:高温による健康被害の発生

猛烈な暑さが続けば、盆地など極度に気温が上昇する地域は敬遠され、人々が安全な地域や気候条件の良い地域に移動する可能性があります。

今後、人々が高温による健康被害を避けるため、活動する地域を北や高地に移動すれば、南や盆地などの不動産価格が下がることになります。

災害の発生により不動産価格が下がるプロセス

大地震、大型ハリケーン、台風、竜巻などの災害が不動産価格へ及ぼす影響は多大です。

日本でも、これまで、関東大震災、西日本大震災、東日本大震災等、大都市近郊で大地震が起こり、被災地近辺では、不動産価格に大きな影響がありました。

その1:不動産への直接的な影響

まずは、大地震や台風、竜巻により、建物の損傷、崩壊などの直接的な被害が発生します。これらは建物の価値を大きく毀損しますが、一般的には、地震保険や火災保険などでは、全損でも評価額の全額は補償されないようです。

また、土地についても地盤の傾斜、沈下によって使用が困難になる場合もあります。東日本大震災でも首都圏近郊の湾岸地域で地盤の傾斜が問題となりました。大きな津波で建物が流されたような地域でも土地の地盤回復には多大な労力と時間がかかるようです。

その2:インフラの設備の毀損による影響

次に、生活インフラに対する被害が発生します。交通網では道路や鉄道の損壊による交通手段の麻痺、更に、電気、ガス、水道などの生活に直結するインフラの損壊による生活環境への影響は、不動産価格の大きなマイナスを生み出します。

これらが損壊が長く続くようだとその不動産価格の下落を招く可能性も十分にあります。

その3:精神的な被害地域への不動産購入意欲の減退

被災地域は余震など引き続き影響がありますから、その地域への不動産購入に二の足を踏む人も当然に増加すると思います。

また、既存住民の他地域への仮移転や移住も起こってきますので、需要供給は崩れて不動産価格は低下する可能性もあります。

ただし、震災後には多くの建物が使用できなくなることでそれに代わる住居が必要になります。その場合は被災を受けたにもかかわらず被害が無かった地域や近隣地域は住宅などの需要が増加することで不動産価格は上昇する場合があります。

まとめ

今後の気候変動や、いつどんな災害が起こるかを正確に予測することは、難しいことですが、いろいろなデータからその流れを掴むことは可能です。

いくら眺めがよくても、大きな川の近くで土地が低い不動産に投資することは避けたり、リゾート物件に投資するのであれば、気温が低くて過ごしやすい地域の方が良いかも知れません。

災害が発生するにしても、災害に強かったり、耐震性が高い物件も多くあります。

不動産投資で物件を選定する際には、気候変動や災害への備えができているかもチェック項目に入れるべきでしょう。

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