中国不動産バブル崩壊を中国政府は乗り切ることができるか?

碧桂園危機でカウントダウンが始まる中国の不動産バブル崩壊

2020年に中国の大手不動産会社、恒大集団の経営危機が発生してしばらく時間が経過しましたが、今度は中国最大のデベロッパーである碧桂園の財務状況悪化が表面化し、問題となっています。

碧桂園は、中国恒大集団など、同業他社と比べ、財務が健全だと考えられていたので、大きなインパクトを与えています。

1990年代の日本のバブル経済時、不動産価格は、キャッシュフローを基にした収益還元法では計算できないほどの高騰を続けましたが、株価の暴落や日銀の金融引き締めによって大幅に下落ました。

不動産価格の急激な下落により、金融機関の貸し出しは、大幅な担保不足により不良債権化し、住専などのノンバンクを中心に大きな社会問題となりました。

今の中国不動産企業の危機問題は、急激な価格高騰、政府の購入制限、地方融資平台(地方政府傘下の企業)など銀行ではない金融機関の貸出しと、日本の当時と類似しているように思われます。

ただし、規模は地方融資平台だけでも1300兆円とも言われ、当時の日本とは比べ物にならないほど大きいです。

この問題がどのように対処されるのか、また世界経済にどのような影響が出るか解説して行きます。

中国不動産デベロッパーの今までの状況

中国では、中央政権による国家成長戦略により、各都市は急速に都市化されて不動産価格は右上がりに成長してきました。

大手デベロッパーは大規模な新しいプロジェクトを次々に立ち上げ、多くの国民は借入をして、マンションを買い求めたことから、住宅価格は高騰しましたが、長らく、地方都市において供給が需要を上回る状況が続いており、デベロッパーの過剰在庫は常に社会問題となっていました。

更に、中国政府は過剰な不動産価格の上昇を防ぐため、購入条件、融資などの規制を強化したことから、販売成約率が低下し、市場価格は低下、デベロッパーの資金繰りは悪化し、ここにきて次々と問題が表面化して来ています。

直近では、大手デベロッパー碧桂園の資金繰りが問題になっていますが、負債総額は半期決算時点でで約27兆円(約1940億ドル)と巨額なものです。

ちなみに、日本の大手デベロッパーである三井不動産の2023年3月期における連結有利子負債は約4兆円ですので、7倍弱ということになります。

碧桂園は、海外でも多くの社債を発行しており、発行した債券を期日通りに償還できるのか、期日が到来した借入を再度更新できるのかが懸念されています。

もし、一つの債券がデフォルトになれば、クロスデフォルトにより全ての債券がデフォルトになる可能性があり、多くの投資家、金融機関、物件購入者に影響が及ぶことになります。

中国政府の対応

恒大集団の経営危機の際は、本社所在地である広東省が金融危機の影響を抑えるため対応に積極的に動きましたが、今回の碧桂園の経営危機の場合、当局はまだ直接的な支援を行わず、セカンド購入制限の緩和や住宅ローン金利の引き下げなどで不動産市場をテコ入れして底入れを図ろうとしています。

それゆえ、その危機は払拭されておらず、まだ解決策を模索している状態です。

碧桂園も8月30日に、業績悪化が続けば債務不履行のリスクがあると警告したぐらいぎりぎりの状態での対応が続いています。

中国の不動産問題の世界経済への影響

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中国経済は世界第2位のGDPを誇ります。約20兆ドル、円価にして約3000兆円に迫るもので、日本のGDPの約4倍に相当します。

そのうち不動産の割合は25~30%と言われており、その規模は日本全体のGDPにも匹敵することになります。もし不動産市場が崩壊すると、建設業や建材業なにも影響を及し、結果として失業率が増加、国全体の経済活動に大きなマイナスとることでしょう。

また、不動産開発業者や購入者は、通常は必要資金を融資やローンで資金調達するので、もし延滞や債務不履行が生じれば信用収縮や金融危機が起こる可能性があります。

中国国内からの資金調達が中心ではあるものの、海外での起債などをしている企業もあり海外にも影響を及ぼす可能性もあります。また、米国、EUや日本は近年は縮小傾向にあるものの中国との貿易は大きな割合なので大きな影響が出ます。

つまりは中国不動産市場の崩壊は中国経済へ影響し、さらには世界経済への大きな影響があるということです。日本は他人事ではありません。

世界経済への影響と注目される中国政府の対応

世界経済への影響

現在の状況は中国政府も予測はしていたようで、2014年ごろから地方政府の傘下企業である地方融資平台への改革を行いました。

しかし、地方政府は毎年の経済成長率達成ためには、不動産投資に頼らざるを得ず、地方融資平台の債務残高は、逆に増加してしまい、大手不動産会社も、国民の熱狂的な不動産購入意欲に合わせ、次々に不動産開発を進めて行くことで、債務は雪だるま式に増えて行きました。

今回の碧桂園の経営危機の場合、一企業の力で乗り切れるのか、地方または中央政府の関与は行われるのかが注目されます。

乗り切れない場合は、他の不動産会社に連鎖的に債務返済問題は波及することでしょう。

これは大手不動産会社だけの問題ではありません。デベロッパーが倒産した場合、開発中のマンションを購入した購入者は完成した物件を受け取ることができず、ローン債務だけが残ってしまう可能性があります。

そうなれば購入者は市場から激減し、すでに購入した人は資産を失いその家計は大きく圧迫されます。

国民の購買意欲が減少すればバブル崩壊後の日本のデフレのような状況になる可能性もあります。

これは中国への輸出の比率が高い、韓国、台湾、日本、さらには米国など世界経済に大きく影響することになるでしょう。

注目される中国政府の対応

中国政府は住宅ローンの借り入れ条件の緩和などに動いていますが、さらに直接的な関与を行い、突っ込んだ対策を打って経済の下落に歯止めをかけられるのかがポイントになってきます。

バブル崩壊以降、日本においては、不動産業を中心に、外資系のファンドが主導して、その立て直しを進めてきました。

しかし、ウクライナ危機を発端として米国、EU、日本などの民主主義国家は、ロシア、中国と一線を引く姿勢を示しており、中国が経済危機に陥っても米国資本などはマネーが中国に入っていくかは、疑問が残ります。

国際政治の力学、特に対米問題でいろいろと問題を抱える中国政府が、国内の不動産バブル崩壊を自国の力だけでどのように対処していくか、注目されています。

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