【税理士による解説】住宅ローンの連帯債務について

マイホーム購入時の重要事項は住宅ローンの締結となります。

住宅ローンにはさまざまな種類があり、共働き夫婦であれば、収入を合算して住宅ローンを組むことも可能です。

「住宅ローンにおける連帯債務」とは、主債務者と連帯債務者を設定し、2人でローンを組む方法のことです。

1人で申し込むよりも、多くの金額を借りられる可能性があります。借入可能額を増やせるのが特長ですが、注意点もあるので利用については、慎重に検討する必要があります。

連帯債務とは

「連帯債務」とは、主債務者と連帯債務者をつくり、それぞれが債務全額を負って返済する方法のことです。

「住宅ローンにおける連帯債務」では、主債務者と連帯債務者が各々借入額を返済する必要があり、一般的に連帯債務の負担割合は、対象の不動産の持分割合で決まります。

持分割合とは、複数人で所有している不動産の所有割合のことです。

持分割合は、一般的には主債務者と連帯債務者の収入の割合で設定されます。たとえば、1,000万円の土地に対して、夫の年収が600万円、妻の年収が400万円である場合は、夫と妻で6:4の持分割合になります。

なお、住宅ローンが組まれる対象の不動産は、主債務者と連帯債務者との共有名義となります。

フラット35を利用するときの連帯債務の条件

連帯債務では、フラット35を利用することもできます。

フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提供している最長35年の固定金利住宅ローンです。

完済までずっと固定金利で返済することができるため、返済の目処が付きやすく、資金計画が立てやすいという特長があります。

連帯債務者の条件

連帯債務者になれるのは、配偶者だけには限りません。フラット35では、連帯債務者の条件を以下のように定めています。

  • 連帯債務を負うこと
  • 主債務者と同居していること
  • 主債務者の親・子・配偶者であること
  • 申し込み時の年齢が70歳未満であること

借入期間の条件

連帯債務者の条件を満たしていれば、収入を合算して申請できますが、収入を合算できるのは、主債務者と連帯債務者の年収全額になります。

ただし、収入を合算すると、借入期間に影響を及ぼす場合があるため注意が必要です。

連帯債務のメリット

連帯債務は、収入合算して住宅ローン審査ができるので、借入可能額を増やせたり、控除額を大きくしやすかったりすることが特長であり、借入可能額は2人の収入を合算して審査されるので、1人で借りるよりも借入可能額が多くなります。

そのため、家の建設を計画するうちに、間取りを大きくしたくなったり、設備のアップグレードをしたくなったりしたときなど、当初の予算以上のお金が必要になったときに便利です。

連帯債務を利用したときの具体的な借入可能額は、主債務者と連帯債務者の収入合算額から算出できます。

その1:借入可能額を増額することができる

連帯債務は住宅ローン審査時に主債務者と連帯債務者の収入を合計して、借入可能額の審査がなされるため、単独で住宅ローンを利用するよりも借入可能額を増額することができます。

その2:2人とも「住宅ローン控除」を利用できる

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した際、所得税額(住民税)から一部税金を控除できる制度のことです。

主債務者と連帯債務者の両方が一定条件を満たせば、個々で住宅ローン控除を利用することが可能です。

主債務者と連帯債務者両者ともに住宅ローン控除を適用できれば、単独で借りるよりも、総合的に多くの住宅ローン控除を受けられます。

その3:諸費用を削減できる

連帯債務では、一人ひとり別々にローンを組む場合と異なり、住宅ローンにかかる費用を一本化できるので、ペアローンと比べて諸費用を抑えることができます。

連帯債務の注意点

連帯債務には多くのメリットがある一方、注意点もあります。

その1:厳密な返済計画が必要

連帯債務は、各債務者がそれぞれ毎月返済しなければならないため、個人個人で自分の返済能力を把握して、返済計画を事前に立てておくことが必要です。

個人で住宅ローンを利用するよりも借入可能額が増えるということは、毎月の返済額も増えるということです。

そのため連帯債務を利用するには、主債務者も連帯債務者も、安定した返済能力が必要です。

その2:片方の返済が困難でも支払額の減額は不可

連帯債務は、主債務者と連帯債務者が独立して返済しているため、たとえ片方の債務者の支払いが困難になっても、毎月の返済額を減らすことはできません。

たとえば、病気や退職などによって働くことができず、収入がなくなったとしても、毎月の返済は続けていく必要があり、パートナーの収入がないからといって、連帯債務者が主債務者の返済を代理で行った場合は、贈与税を課税されてしまいます。

また夫婦で連帯債務を行い、その後離婚することになっても、住宅ローンの返済が終わっていなければ両者の返済義務は続き、一方が支払いを中断すると、もう一方に住宅ローン残高の全額返済を求められることになります。

そのような事態に陥ったら、マイホームを売却し、その売却額で一括返済を目指すか、ローンを借り換えるかどちらかの方法で資金計画の見直しが必要となります。

その3:団信に加入できるのは原則1人のみ

団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローン契約者が亡くなってしまったり、病気やけがで返済が不可能になってしまったりした際に、残債ローン分の保険金を支給され、返済を完了した状態にできる制度のことです。

連帯債務では原則、主債務者のみが団信に加入することができますが、加入できない方は別途、生命保険に加入することも検討すべきです。

ただし例外として、長期固定金利住宅ローンである、フラット35の「デュエット」という制度は主債務者と連帯債務者共に団信に加入することができます。

結論

連帯債務で住宅ローンを組むと、借入金額を増やすことができたり、主債務者と連帯債務者の両方が住宅ローン控除を利用できたりするなどのメリットがあります。

ただし、メリットだけではなく、返済計画をきちんと立てる必要があるといった点も把握しておかなければなりません。

夫婦で住宅ローンを組む場合は、連帯債務だけでなく、連帯保証やペアローンを利用するという選択肢もあり、それぞれの特徴を理解したうえで、最適な方法を比較検討すべきです。

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