【税理士による解説】財産分与について~実務上の視点より~

結婚してから20年以上経過してから離婚すると、財産分与に年金や退職金が含まれたりするので、若い頃に離婚する場合とは違った点が出てきます。

また夫婦が高齢になって収入が少なくなってくると、その後の生活や相続について問題が出てくる可能性があります。

マイホームを取得している場合

熟年離婚の場合、若い年齢での離婚に比べてマイホームを所有しているケースが多いと思います。家も財産分与の対象になりますが、現金や株式のように、物理的に2つに分けることはできません

では、持ち家を分ける際にどうしたらよいのか、マイホームの分け方について考えていきます。

マイホームを「売却」する場合

マイホームを平等に分けるのに最も効果的なのは、家を売却して得たお金を分け合う方法です。土地や建物などのそのまま分割できない財産は、現金化することで明確に折半できます。

家の売却には不動産仲介会社を経由する方法や、直接買取、リースバックなど売却する上でのスピードや価格の優先度に応じてさまざまな手段があるため、それぞれの状況に見合った適切な売却方法を選択することが肝要です。(※リースバックとは、家を不動産会社に買い取ってもらい、現金化した後に賃貸契約を結ぶことで、同じ家に住み続けられるという売却方法です)

ただし、「住宅ローンの残債が家の売却価格を上回る」オーバーローンの場合には、売却時に条件がつき、使用できる売却方法も限られるため注意が必要です

離婚による家の売却時は、住宅ローンの状況、家を売りたい時期や価格をあらかじめ把握しておいた方が良いと思います。

マイホームを「どちらかに譲渡」する場合

マイホームを売却せずに分ける方法として、どちらかに譲渡するという選択肢があります。たとえば、一方が家をもらう代わりに、もう一方が家と同等評価額の半額の金銭などをもらうといったケースです。

家を売却する場合でも、どちらか一方がもらう場合でも、双方が納得のいく分与にするためにまずは家の売却価額を知る必要があります

家の売却価額は不動産査定で算出が可能です。不動産会社が行う査定には、無償で気軽に受けられる「AI査定」や「簡易査定」、精度の高い査定が得られる「訪問査定」がありますが、自らの状況にあった査定を選択すべきです。

住宅ローン返済が残っている場合

熟年離婚であれば住宅ローンを完済しているかもしれませんが、住宅ローンが残っている場合について確認します。

家の所有者と住宅ローンの債務者が「一致」している場合

財産分与後、家の所有者と住宅ローンの債務者が一致している場合は、住宅ローン返済に関して問題はなく、所有者がそのまま自分名義のローン返済を続けることになります。

家の所有者と住宅ローンの債務者が「異なる」場合

財産分与後、家の所有者と住宅ローンの債務者が異なる場合、家の所有者は相手が住宅ローンの支払いを継続しているか監督することになります。

一方で、債務者は自分が住んでいない家の住宅ローンを支払い続けなければなりません。

万が一債務者が住宅ローンの支払いを怠った場合、抵当権を持っている金融機関に家を差し押さえられる恐れがあるので、住宅ローン名義を家の所有者に変更した方が良いと思います

年金分割の方法

熟年離婚の場合、年金の分与は重要です。婚姻期間中に専業主婦(夫)であり、元配偶者による収入で生活をしていた方が押さえておきたい方法は年金分割制度です

年金分割とは、夫婦が婚姻期間中に納めた厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金として受け取れる制度です。

この制度には、年金を平等に受け取ることができ、離婚後も安定した生活を図れます。年金分割の割合を決める方法としては、下記の2つがあります。

合意分割

合意分割とは、夫婦間での相談を経て保険料の分割割合を決定するか、裁判所に分割割合を決定してもらう方法で上限は2分の1とされています。請求期限は原則として離婚した翌日から2年です。

3号分割

3号分割とは、夫婦の片方が第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)である場合に適用される年金分割の制度です。

配偶者が第2号被保険者(雇用されている人などが加入する厚生年金の被保険者)で婚姻期間中に厚生年金を支払っていた期間は、相手の合意がなくても第3被保険者が自動的に2分の1の保険料を支払ったと見なされます。

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