土地の売買、あるいは土地の相続などが行われたときには、土地の所有者が変わったことを法的に証明するために、「所有権移転登記」と呼ばれる名義変更を行います。
名義変更を行うと、「不動産登記簿謄本」という不動産の状況や権利関係を法的に示した書類が更新されます。
名義変更の手続きは、国の機関である法務局で行います。
所有権移転登記の手続き完了後に、法務局から「登記識別情報」が発行されます。
これは土地の所有者を明確にし、土地を売買する際に必要になります。
土地の名義変更
売買
土地を所有している人が所有地を売る場合や、あるいは土地を購入して所有者になるときに、土地名義変更の手続きが必要になります。
単に、売主と買主の間で売買の契約をしただけでは、登記簿には元の所有者の名前が残っているため、名義変更を行わない限り、買主が土地の所有権を主張することはできません。
なお、買主が購入した土地と住宅を担保にして住宅ローンを組む際は、登記簿上でその土地の所有者が買主となっていることが必須条件になります。そのため不動産の引渡しと名義変更は、売主と買主が共同で申請し、同日に行うのが一般的です。
相続
相続によって親や親族の土地を引き継ぐときに、名義変更手続きが必要になります。
原則として、名義変更は土地の所有者が行うものですが、相続の場合は土地の所有者が亡くなっているため、土地を相続する人が名義変更の申請を行います。
土地を相続して名義変更を行う場合、被相続人(土地を所有していた故人)との関係性を証明する戸籍や、ほかの相続人からの許可などが必要になるため、手続きや書類が複雑になります。
贈与
土地を贈与された場合にも、名義変更手続きが必要になります。この場合、土地を贈った側と土地を受け取った側、両者の本人確認書類等を提出することになります。
原則として年間110万円を超える贈与を行うと贈与税の課税対象になります。
財産分与
財産分与の際にも、名義変更手続きが必要になります。財産分与とは、夫婦が離婚する際に、2人が婚姻中に築き上げた財産を、それぞれの貢献度に応じて分け合うことを指します。
共有名義だった土地や建物をどちらかの名義に変更する場合、原則として夫婦で共同申請します。
離婚前後にコミュニケーションを取り合い、手続きを協力して行う必要があるため、財産分与の手続きは煩雑になります。
夫婦間の話し合いが難しい場合は、弁護士を通して協議を進めるほうがスムーズに手続きが進むケースもあります。
名義変更の手続き
名義変更の手続きの流れは、売買・相続・贈与・財産分与の場面によって、それぞれ異なります。
売買の手続き
- 売買契約を結ぶ
- 必要書類を集める
- 土地の引渡しと購入代金を支払う
- 法務局へ登記申請する
相続の手続き
- 不動産関連の情報や関係者の戸籍関連の書類を収集する
- 固定資産税評価証明書を発行してもらう
- 遺産分割協議を相続人の間で実施する
- 登記申請書の作成を行う
- 法務局へ登記申請する
贈与の手続き
- 贈与の手続きを行う
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 付属している書類を作成する
- 法務局へ登記申請する
財産分与の手続き
- 財産分与について話し合い、合意する
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 法務局へ登記申請する
名義変更に必要な書類
売買の登記
- 住民票
- 印鑑証明書(住宅ローンを組む際に必要)
- 顔写真付きの本人確認書類
- 印鑑と印鑑証明書(発行3か月以内のもの)
- 登記済権利証または登記識別情報通知
- 固定資産税評価証明書
- 住民票または戸籍の附票(登記時の住所から住民票を変更した場合のみ)
- 顔写真付きの本人確認書類
相続の登記
相続は、「遺言による相続」、相続人の間で遺産の分け方を話し合いで決める「遺産分割協議による相続」、そして法律で定められた相続分割合に従って相続する「法定相続分による相続」のケースにわかれ、それぞれ必要書類が異なります。
遺言による相続登記の必要書類
- 固定資産評価証明書
- 遺言(家庭裁判所で検認を受けた場合は検認済証明書を用意)
- 被相続人が亡くなったときの戸籍謄本と住民票の除票
- 相続する人の戸籍謄本と住民票
遺産分割協議による相続登記の必要書類
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から亡くなったときまでの全ての戸籍謄本と住民票の除票
- 不動産を相続する全ての人の戸籍謄本と印鑑証明書
- 不動産を相続する全ての人の住民票
法定相続分による相続
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の出生から亡くなったときまでの全ての戸籍謄本と住民票の除票
- 全ての相続人の戸籍謄本、住民票
贈与の登記
- 登記申請書(登記時の住所から住民票を変更した場合のみ)
- 固定資産評価証明書
- 不動産の権利書または登記識別情報
- 印鑑証明書(3か月以内のもの)
- 住民票または戸籍の附票
- 不動産贈与契約書(登記原因証明情報)
- 住民票
- 不動産贈与契約書(登記原因証明情報)
財産分与の登記
- 登記申請書
- 固定資産評税価証明書
- 不動産の権利書または登記識別情報
- 印鑑証明書(3か月以内のもの)
- 住民票または戸籍謄本(登記上の住所から変わっている場合のみ)
- 離婚の記載がある戸籍謄本(離婚裁判の場合は不要)
- 自分の住民票
- 固定資産税評価証明書(裁判離婚の場合のみ必要)
- 調停書・和解調停書等(裁判離婚の場合のみ必要)
- 譲渡する人の住民票(裁判離婚の場合、登記時の住所から住民票を変更した場合のみ必要)
なお、上記の書類のほか、全てのケースにおいて「登記申請書」が必要となります。