【税理士による解説】不動産査定書とは~チェックポイントの解説~

不動産査定書とは、不動産会社や不動産鑑定士などが対象の物件を査定した結果を記載した書類です。

家や土地を売ろうとするとき、「いったいどれくらいの価値があるのだろう?」と気に掛かる人は多いと思います。その疑問に答えるために不動産会社や専門家が調査することを不動産査定といい、その結果を記載したものが不動産査定書です。

不動産売買をする際には、何らかの査定書が必要となるため、不動産査定書の種類や見方のポイントなどを解説します。

簡易査定と訪問査定

不動産会社が行う不動産査定の方法は、大きく分けると「簡易査定」と「訪問査定」の2種類となります。

簡易査定はネットや電話でのやりとりだけで、査定額が記載された不動産査定書を出してもらえる方法で、早ければ30分~1時間、一般的には1日程度で査定額が分かります。

一方、訪問査定は、不動産会社の担当者が物件を訪問して査定額を算出する方法で、現地での作業時間は1~2時間、不動産査定書が手元に届くまでに数日から1週間程度かかります。

簡易査定と訪問査定、両者は査定する物件の情報量の違いから査定額の精度が異なります

簡易査定のほうが手軽で結果が出るのが早い分、訪問査定よりも精度は低くなります。そのため、不動産を売却する際にはまず簡易査定を行い、その後訪問査定を行うのが一般的です

不動産査定書の種類

sublease

不動産査定書には大きく分けると、不動産会社が作成するものと、不動産鑑定の国家資格を持った不動産鑑定士が作成するものがあります。

不動産会社による査定書

不動産売買を目的とした査定は、一般的に不動産会社が無料で行い、不動産査定書を提出してくれます。

不動産会社にとって査定額の算出は、売却活動のパートナーとして選んでもらうためのプレゼンテーションともいえます。

最終的に不動産会社を通して売買契約が結ばれなければ、不動産会社は報酬を得ることができません。そのため不動産会社は無料で不動産査定をし、家や土地を売る人とつながりを持つきっかけづくりをしています。

また不動産会社が出す査定額は、あくまでその不動産会社の実績や経験則などから算出されたものであり、最終的な不動産の売却価格を保証するものではありません。

そのため、不動産会社が違えば査定額も変わってきます

不動産鑑定士による査定書

不動産鑑定士による査定書には真正な不動産鑑定書とその簡易版となるものがあります。

不動産鑑定士は国土交通省や都道府県知事の認可を受けた団体に所属しており、「不動産鑑定評価に関する高度な専門家」として、その鑑定結果には社会的な保証が付きます。

不動産鑑定書は税務や法務など公的な機関での証明や、金融機関が担保価値を計るための指標ともなります。

不動産鑑定書

不動産鑑定士による査定書の1つ、「不動産鑑定書」は税務や法務などで不動産の価値を公的に証明するものです。そのため遺産分割や生前贈与、相続税評価額の再考、離婚の財産分与のときなどの際に必要になります。不動産鑑定書は鑑定士が鑑定してから2週間程度で手元に届きます。

簡易版不動産鑑定書

簡易版不動産鑑定書は、公的な証明にはなりません。ただ通常、不動産会社が扱わない物件の査定額を算出する際には有効な手段となります。

たとえば、大型商業施設や工場、ゴルフ場といった物件は顧客が一般の個人ではないため取引実績が非常に少なく、不動産会社では査定額の算出が難しくなります。

そのようなときに不動産鑑定士ならば簡易版の不動産査定書を作成することができます。

不動産会社の査定書の内容

不動産査定書は不動産会社によって書式や内容は異なりますが、多くの不動産査定書は、公益財団法人不動産流通推進センターによる土地・戸建て・マンションそれぞれの雛型・テンプレートが基礎となっています。

不動産の概要

不動産査定書の冒頭には、査定する不動産の概要が書かれています。詳しくは、住所や交通のアクセス、土地の面積や方位、敷地が道路に接している長さ、都市計画におけるその土地の目的、建物の面積や構造、加えてマンションの場合は間取りや総戸数、所在階数、管理費などが記載されています。

査定額とその根拠

不動産査定書には、査定額とともに、その根拠となる明細が記載されています。査定額の根拠となる要素は、建物の築年数、経過年数、新耐震基準の適合性をはじめ、屋根や外壁など建物の外装、ドアやふすまなどの建具、床や壁、天井など建物の内装、浴室や洗面所、トイレなどの設備があります。そのほか、リフォーム履歴やインスペクションの有無、担当者の目視による物件評価項目もあります。

売り出し価格

不動産査定書には売り出し価格も提示されています。売り出し価格とは、最終的な売買契約に基づいた売買価格ではありません。購入希望者を募る際に、広く告知する物件の価格のことです

査定書のなかには上限価格と下限価格を記載しているものがあります。上限価格が「売り出し価格」を、下限価格が「ここまでなら譲歩できる価格」を意味しています。

周辺環境

不動産査定書には周辺環境への評価も含まれます。どんな地域にあるのか、商業施設や公共施設へのアクセスはよいか、日当たりや部屋からの眺めのほか、騒音や振動も考慮されます。

不動産査定書のチェックポイント

査定額

査定額には、「3000万円~4000万円」と幅を持たせて書かれている場合があります。それぞれ上限と下限の明確な根拠がある場合はよいのですが、なんとなく漠然と幅を持たせている場合があるのです。

できれば、「査定価格:3500万円、下限価格3000万円、上限価格4000万円」のような記載でそれぞれの価格の根拠が明確になっているかをチェックしてください

コメントや評価

査定額への根拠がコメントとして分かりやすく記載されているか、評価された点や評価されなかった要因は明確か、などもチェックしてください。売主と買主の橋渡しをしてもらう不動産会社には、不動産の事情をうまく伝えてもらう必要があります。

コメントや評価が分かりやすいか、明確か、不明な点を聞くとちゃんと対応してくれるかが、不動産を選択するポイントとなります

流通性比率

流通性比率とは、売りやすさの指標となります

1が基準となり、1からマイナスは売りにくく、1よりプラスは売りやすい、ということを示します。下限は-0.85、上限は+1.1で、-0.85~1.1の範囲で売りやすさを表しています。

流通性比率から、不動産会社の市場をどう見ているか、その物件をどう売れると踏んでいるかが分かりますし、不動産会社の経験則や、購入希望者の募り方、買い手の募集の仕方などについては、流通性比率の根拠を不動産会社に確認すると分かってきます。

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