我々は家に住むことはもちろんですが、仕事のために事務所ビルに通い、買い物のためにショッピングセンターやデパートに行くなど、日常、どこかで不動産に身近で接しています。それゆえ、不動産を身近に感じることができますので、不動産投資を職業としない方でも、不動産投資はそれほど難しくない気がするかもしれません。
今は副業でも多くの方が不動産投資をしています。多くの情報が、インターネットや書籍などで出回っていますが、それが万人に合う正しい情報とは限りません。現に個人投資家のブログや成功物語を見て、郊外の一棟アパートやシェアハウスなどの高利回り物件や、郊外の空き家を購入し、賃借人が付かずに多額の借金を抱えてしまった失敗例なども数多くあります。やはり不動産投資を成功させるには、一定レベルの正しい知識とその実践が必要でしょう。では、具体的にどのようなことに注意して取り組んでいけば良いかを解説して行きます。
1 タイミング
株式投資や他の投資にもあてはまりますが、投資はタイミングが大切です。具体的にいえば価格が高い時期ではなく、安い時期に買うということです。では安い時期はいつかと言えばそう簡単にはわからないと思います。安い時はもっと安くなるのでは?、高い時期はもっと高くなるのでは?と思うからです。その指標となるのは、まずは利回りです。すべてのコストを引いたネット利回りが、長期金利とどの程度差があるかを見てください。一般的には、この差が大きければ、価格は安めと考えることができますし、差があまり無かったり逆ザヤならば、価格は高騰していると考えられます。ただし、物件により利回りも違いますので注意してください。郊外の物件であれば当然利回りも高く、中心部に近づけば下がります。また、築年数が経った物件の利回りは、新築物件よりは高くなります。感覚的には、都心の新築物件を指標として見たほうが良いでしょう。対象となる長期金利は、10年物国債利回りが妥当と考えられます。
<参考>
実質利回り=(年間収入-管理費-修繕積立金または修繕費用-固定資産税-都市計画税)÷(購入価格(税込み)+仲介手数料+登録免許税+不動産取得税+印紙代などの諸費用)
その他にも、一般的には物価動向がインフレに向かうようならば物件価格は上がり、デフレ方向ならば価格が下がる傾向があります。また、需給でも変わります。30~40歳代の購入検討世代が多い時は、住宅需要は旺盛ですが、少子化によって購入検討世代の人口が少なくなる場合は、需要が減退します。さらに住宅供給が多い時期は価格は安定しますが、少ない時期は上昇傾向となります。
このようにいくつかの要素が重なり合って不動産の価格動向は変わりますが、これらをよく調査した上で、明らかに価格は高いと思えば投資時期を待つほうがよいでしょうし、明らかに安いと思えばそこが投資には良いタイミングかと思います。
2 投資物件の立地
投資物件の立地は非常に重要です。立地が良い場所は将来的にわたり、安定した価格で推移することが期待でき、場合によっては価格が上がることもあります。反面、立地が悪い魅力のない場所は、徐々に値段が下がっていきます。建物は、一般的には減価償却に比例するように、価値が下がっていきますから、資産価値の維持のためには、どうしても良い立地の物件を選択することが大切です。
ではどこが良い土地なのかと言えば、
(1)都心や大都市など、今後も人口が増えそうな場所
(2)駅や高速道路のインター、商業施設などが近く便利な場所
(3)環境が良く、生活がしやすい場所
(4)地盤が安定していて地震や水害などに強い場所
が挙げられます。
具体的にいえば、東京の千代田区、港区、渋谷区、目黒区などの古くからの高級住宅街や、関西では神戸の阪急電鉄沿線の古くからの高級住宅街、リゾート地では軽井沢の中心部、湘南の風光明媚で津波などのリスクが少ない場所、などが挙げられます。ただし、そのような場所は価格も高く、手が出ない場合がありますから、上記の4つの条件で1つでも2つでも満たす場所で、比較的条件が良いもので物件を探すことが良いでしょう。
3 建物の状態
建物の価値は減価償却に比例して下がっていくと前章では言いましたが、正確にいえば物件の状態によって大きく差が出ます。築30年経っていても、しっかりと劣化部分を補修して外装のメンテナンスを行い、内装にも手をかけていれば、建物価値の低下はある程度は抑えられます。逆に手をかけていなければ、突然雨漏りを起こしたり、水道ポンプが壊れたりと、大きな修繕費用が発生してしまい、価値が落ちる原因となってしまいます。購入時には建物の築年数だけを見ずに修繕記録を見ること、かつ実際に内外装を見てしっかりとメンテナンスがされているかを確認したほうが良いでしょう。また、使われている部材によっても大きく差が出ます。例えば外装をタイル張りにしていれば、洗浄で長期間美観を保てますが、吹き付けの場合は。塗りなおさなければ大きく美観が損なわれます。また、床面なども石張り部分が多ければ、その部分は絨毯の取り換えなども不要です。更には、設計によっても大きく変わります。しっかりとした設計事務所または設計士が設計し、使いやすい設計であれば、将来的にも価値は十分保つことができます。
4 資金調達
不動産投資を成功させるためには、借入金利は最終利益を左右する大変重要な要素の一つとなります。低金利で調達できれば、毎月の返済額は少なくなり、キャッシュフローが良くなり、最終的な支払総額を抑えることができます。以下で金利を比較してみます。
<例>
借入額 1億円 期間30年 元利均等返済方式
年金利2% 毎月返済額37万円 30年の支払総額 133百万円
年金利1% 毎月返済額32万円 30年の支払総額 116百万円
これを見るとわかるように金利が2%と1%で、僅か1%の違いですが、返済額は毎月約5万円、総支払額では1億円に対して約17百万円違います。割合で計算すると、約17%ですから相当な金額ですね。
借入金利は低ければ低い方が良いですが、借入金利を決める過程にはいくつかの要素があります。
(1)借入用途
購入物件が自宅用不動産ならば住宅ローンが適用されます。住宅ローンは購入物件からの収益ではなく、借りる方の給与などの収入から返済され、貸し倒れ率が低く、金利は投資用不動産ローンより低くなります。投資用不動産ローンの方ですが、一概には言えませんが、銀行<信用金庫<ノンバンク、の順で金利は高くなる傾向があります。
(2)担保物件の評価
担保物件の金融機関での評価額が高く、担保余力が十分ある場合は、金融機関の貸付金回収確率が高くなりますから、金利は低くなる傾向があります。
(3)借入人の信用度
借入人が、上場企業勤務、公務員や医師などの収入の安定した職業の場合、更に、勤務年数が長い場合、高額の収入がある場合などは、信用度は高く見てくれますので、一般的には金利は低くなります。
(4)購入物件に対する借入比率
購入金額に対し、自己資金の比率が大きい場合は、金融機関はローン回収の可能性は高いと考えるので、金利は低くなる傾向があります。不動産投資で金融機関から借入を行う際は、金額だけではなく金利もしっかりと交渉して有利な条件で投資をしていきたいものです。
5 近隣の賃貸需要、環境などの情報
まずは情報収集が大切です。2章の「投資物件の立地」でも説明しましたが、その場所の状況をしっかりと把握することが大切です。ネット上の口コミなどで出てくる、周辺情報も大変有意義な情報です。更に、周辺地域の賃貸需要はどの程度あるのか?また賃料相場はどのような状態か?なども大切な要素です。他にも周辺環境は大事な要素です。具体的には近隣に買い物施設、公園、学校、病院など、どのような施設があるかなどです。どのような施設かをできれば自分の足で行き確かめてみたいものです。不動産投資は。業者の情報も極力取っていくべきですが、自分自身で情報収集して正確な情報だけを吟味して、それを元に判断を下すことが大切です。また、投資物件を購入してオーナーになることだけで高揚せずに、常に冷静に事実を積み上げて結論を導くことが一つの成功の秘訣と考えます。
まとめ
ここまで不動産投資を始めるにあたり気を付けるべきことを解説してきました。投資を成功させるには、インターネットで調べたり、本を読んだりするのも大切ですが、自分の手を動かして分析したり、口を開いて交渉したり、足を運んで物件を見てみるなど、行動を起こすことも必要です。