【税理士による解説】固定資産税(一戸建て)について~計算方法の解説~

一戸建ての固定資産税はいくらかかるのでしょうか。

「家を購入すると固定資産税がかかるけれど、固定資産税って実際にどれくらいかかるのだろう」と不安に思っている人は多いと思います。

そもそも固定資産税は、土地と建物それぞれにかかる税金です。一般的に家を購入すると、土地に対する固定資産税と建物に対する固定資産税を支払う必要があります

納税義務者となるのは、1月1日時点でその土地や建物を所有している人です。固定資産税は、土地や建物を所有しているかぎり避けられないランニングコストとなります。また、土地も建物も経年で価値が変動するため、固定資産税額は一定ではなく3年に1度変わることをあらかじめ把握しておくことが大切です

家の購入となるとマンションか一戸建てのどちらかになりますが、今回は一戸建ての固定資産税について解説します。固定資産税の相場や計算方法、マンションや新築、中古との比較をしていきます。

比較で知る固定資産税

一戸建てとマンションの違い

一戸建てとマンションで大きく異なる点は、その建物が建っている土地に対する税額です。マンションの場合、土地が区分所有になる分、土地に対する固定資産税が少ないので、一戸建てに比べて高くありません。

一方、建物にかかる固定資産税は、一般的にマンションのほうが高くなります。なぜなら、一般的なマンションは鉄筋コンクリート造のものが多く、一戸建てよりも耐用年数が長いため価値が下がりにくいからです。

耐用年数とは、対象の建物の資産価値がなくなるまでの期間のことです。木造の法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年です。軽減措置を受けられる期間はマンションのほうが長いですが、マンションはそもそもの固定資産税が高いので、一概にどちらが得とはいえません。

新築と中古の違い

土地に対する税額は新築でも中古でも変わりませんが、建物に対する税額に差が出ます。

新築の場合、一定の要件を満たせば3年または5年の間、税額を抑えることができるため、築6年の中古よりも新築のほうが税額が少なくなるのです。

中古の場合は、古くなるほど安くなり、木造は築25年程度で下限となります。ただし、建築後の年数の経過によって減価する減点補正率の下限は0.2と定められており、評価額が0になることはありません。(2022年3月15日時点)

都市部と郊外の違い

都市部と郊外を比較してみると、都市部でも郊外でも、建物に対する税額はほとんど変わりません。一方で、郊外に比べると都市部のほうが地価は高くなります。そのため、土地に対する税額も都市部のほうが高く、郊外のほうが安くなるのです。

固定資産税を知るための方法

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固定資産税の概算の相場はわかっても、実際にかかる税額は地域や建築資材、周辺地域の地価などによって変わります。自分が購入を検討している物件や、既に所有している物件に具体的にいくらかかるのか、また税額がいくらになるのか知るための方法を解説します。

家屋調査を待つ

購入を検討している新築住宅の固定資産税額を知りたい場合は、建築後の自治体の家屋調査で判明します。家屋調査とは、不動産の評価額を決定するために自治体が行う調査です。

専門の調査員が家屋を外観から内装、設備機器に至るまで調査していきます。床暖房、埋め込み型のエアコン、2階部分に設置された浴室やトイレなどの特殊な設備がある場合は、固定資産税は高くなります。

家屋調査の対象は新築物件のみなので、2年目以降は、時価や家屋の経年劣化などを踏まえて、固定資産税が計算されます。

固定資産税の納税通知書

既に所有している住宅の固定資産税を具体的にいくら払うかは、毎年年度始めに各市区町村から郵送される納税通知書で確認できます。しかし、記載が間違っていたり、固定資産税評価額が高く設定されていたりする恐れもあるので、税額に間違いがないか自分で確認する必要があります。

最寄りの自治体で調査

自治体は個別に固定資産税の税率を定めており、また自然災害による損害を受けた場合に減免している場合があります。具体的な税額を知るには最寄りの自治体で、固定資産税台帳を閲覧するか、固定資産税評価証明書を発行してもらうという方法があります。

固定資産税台帳には土地や家屋などの評価額が記載されており、固定資産税評価証明書でも評価額を確認できますが、取得できるのは所有者、借地人、相続人などに限られています。

自分で固定資産税を算出してみる

不動産会社や自治体に頼らず自分で概算してみる場合は、土地と建物それぞれの評価額の目安を知っておき、それに税率をかけることでおおよその固定資産税額が分かります。

土地の評価額は、固定資産税路線価に土地の面積をかけることで算出できます。路線価とは、路線に面した住宅の1m2あたりの評価額のことです。固定資産税路線価は、相続税や贈与税を決定する路線価とは異なることに注意が必要です。固定資産税路線価は主税局のHPより確認できます。

建物の評価額は、再建築価格の60%程度が目安となります。再建築価格とは、またその建物を建てる場合にかかる費用のことで、この価格から経年で価値が下がった分を減らすと、概ね60%になります。

固定資産税を計算する3つのステップ

ステップ1: 「固定資産税評価額(課税標準額)」を知る

固定資産税評価額と課税評価額は基本的に同一額になりますが、軽減措置がなされた場合、同一ではなくなります。

固定資産税評価額とは、建物の固定資産税を出す際に用いられるもので、各市町村が不動産の価値を評価して計算した価額のことをいいます。土地の価値は変動することがあり、建物も年数とともに劣化するため、固定資産税評価額は3年に1度評価替えが行われます。では、固定資産税評価額は、どのようにして決まるのでしょうか?

土地

土地の固定資産税評価額は、「固定資産税路線価×面積」となります。前述のとおり、固定資産税路線価とは、路線に面した住宅の1㎡あたりの評価額のことです。土地の固定資産税評価額は基本的にほぼ変わりませんが、地価の変動により時を経て上がることもあります。

建物

建物の固定資産税評価額は、新築の場合と中古の場合で変わります。新築の場合は「再建築価格×経年減点補正率」、中古の場合は「基準年度の前年度の再建築価格×再建築費評点補正率」となっています。

再建築価格とは、評価の対象となった家屋と同じものを、評価をする時点で同じ場所に再び新築した際にかかる建築費のことを指します。再建築に必要な金額は市場の建築価格の5~6割程度といわれています。

一方、経年減点補正率は、家屋が年数の経過とともに生じる損耗状況による減価率です。

また、再建築費評点補正率は、前回の評価替えからの3年間における工事原価に相当する物価変動の割合から算出されます。

このような変数によって、建物の固定資産税評価額は2割まで下がる可能性があります。

ステップ2: 固定資産税を計算する

それでは、固定資産税評価額を基に土地と建物の固定資産税を計算してみましょう。

固定資産税の総額は、土地、建物それぞれの税額の合計となります。それぞれの税額は、「固定資産税評価額×標準税率1.4%」で求められます。

なお、標準税率は1.4%ですが、自治体によってはこれより高い税率を設定している場合もあります。自治体のHPを確認し、事前に税率を確かめておきましょう。

ステップ3: 軽減措置で固定資産税を軽減する

軽減措置を利用できる場合は、ここまでで求めた額から軽減できる分を引くことで最終的な固定資産税の額を求めることができます。

固定資産税は、家にかかるランニングコストのなかでも大きなものです。しかし固定資産税には、税額を抑えられる軽減措置があり、それが適用されれば減税が可能です。

軽減措置の活用について

新築住宅に対する軽減措置として、令和6年3月31日までに新築された住宅への減額特例措置があります。これは、床面積が50㎡以上280㎡以下の新築で、市区町村に申告し、条件を満たせば、家屋の税額が1/2になるというものです。適用期間は、新築されてから3年間のみです。長期優良住宅の場合だと5年間、長期優良住宅のなかでも準耐火建築物の場合だと7年間に延長されます。土地と建物それぞれに対する軽減措置を見てみます。

土地

土地への固定資産税を抑える手段として、住宅用地の軽減措置特例があります。これが適用された場合、税額は以下のように軽減されます。

小規模住宅用地    住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分              価格×1/6

一般住宅用地       小規模住宅用地以外の住宅用地       価格×1/3

建物

一般住宅に対する軽減措置

新築された住宅が一定の要件を満たす場合、新築後3年度間、固定資産税額が1/2に軽減されます。ただし、3階建て以上の耐火構造住宅・準耐火構造住宅であれば新築後5年度間の適用になります。適用される範囲は居住部分のうち120m²までの部分に相当する税額です。

長期優良住宅に対する軽減措置

長期優良住宅とは、劣化対策、耐震性、可変性、維持管理・更新性、高齢者対策、省エネ対策などが講じられている住宅のことです。長期優良住宅の認定を受けた住宅は、固定資産税額が5年度間1/2に軽減されます。3階建て以上で耐火構造住宅・準耐火構造住宅であれば7年度間の適用になります。適用される範囲は居住部分のうち120m²までの部分に相当する税額です。

改修工事に対する軽減措置

耐震やバリアフリー、省エネなどの改修工事を行うと、家屋にかかる固定資産税の税額を抑えられる場合があります(2008年1月1日以前からある住宅について、2022年3月31日までの間に所定の改修工事を行った場合)。減税の対象となるのは、工事完了の年の翌年分が該当します。

固定資産税の軽減措置は自動で適用されるわけではなく、申請しなければなりません。災害に遭った地域は自治体ごとに減免・軽減措置が適用される場合もあるので、チェックする必要があります。

固定資産税に関して注意すべきこと

新築時の家屋調査には立ち会った方が良い

家屋調査を受ける際は、なるべく立ち会った方が良いです。

立ち会いの時間が確保できない場合、書類のみの審査をされることになるため、家の構造や設備を一方的に判断された結果、課税標準額が高くなってしまうこともあります

また、立ち会いの事前に固定資産税の相場を知っておくと、家屋調査員と直接話して税額の理由を確認することができます。

路線価を把握する

土地の路線価の相場も把握しておくことをおすすめします。これをもとに概算でも固定資産税額を想定したうえで、固定資産税通知書と照らし合わせるとよいでしょう。不明点があった場合は市税に問い合わせて確認できると、不本意に高い税を払わずに済むため安心です。

課税額をチェック

課税額が周辺に比べて極端に高くなっていないか、自治体の固定資産台帳でチェックすることもできます。万が一間違いがあっても、自分から申し出なければそのままの税額が請求される恐れがあります。

課税相場を確認し課税額に納得できない場合は、納税通知書の交付から3か月以内であれば、固定資産評価審査申出制度によって再審査の申し出を行うことが可能です

固定資産税のよくある疑問

いつ支払うの?

固定資産税の支払いは、市区町村による差はありますが、一般的に所有した日の翌年の5月頃から始まる場合が多いです。

固定資産税は1月1日の時点での所有者に対して、その年の4月1日から1年間分課税されます。例えば、1月2日に所有したら、その年の翌年の4月1日から1年間分課税されることになります。ただし、年度の途中で所有者が変わった場合は、所有したタイミングを加味して負担を分配するのが通例です。

どこへ支払うの?

固定資産税の支払先は、地方自治体です。

固定資産税の納税義務者には、市町村や都から納税通知書が送付されます。そこで納付期限や税額を確認し、納めてください。

誰が支払うの?

固定資産税の納税義務者は、1月1日時点での登記簿謄本の所有者です。共有名義の場合は、共有しているなかから一人が代表として納税義務者になります。

前述のように、1月2日以降に所有した場合、課税されるのはその翌年からになりますが、1月1日時点の所有者と話し合いのうえ分配することが多いです。

どうやって支払うの?

一般的に固定資産税は高額になるため、年4回の分割払いでの納付が認められています。1期分を支払う場合は、現金での一括払いが認められている市町村もあります。

支払いの方法は、以下の通りです。

・現金の窓口支払い

・口座振替の自動支払い

・ペイジー支払い

・クレジットカード支払い

固定資産税は、各期で納付期限が設定されています。その期限を1日でもすぎてしまうと延滞税が加算されるので、必ず確認して期限内に納付するようにしましょう

都市計画税も課税される

固定資産税は毎年必ずかかる税金です。きちんと支払いつつも、自治体の最新情報をチェックし節税を心がけて、スマートに付き合っていけるとよいですよね。

また、固定資産税と同時に都市計画税もかかることを忘れないようにしましょう

固定資産税の税率は1.4%、都市計画税は0.3%のため計1.7%の税がかかります。固定資産税の軽減措置を踏まえて、余計な建物を建てない、空き家にしないなど上手に節税することをおすすめします。

まとめ

建物の固定資産税は、自治体による家屋調査が基軸になります。そのため、家屋調査の際に一つひとつ丁寧にチェックすることが大切です。

隣の建物が含まれていないか、設備に間違いはないかなど細かい間違いがあれば指摘し、自治体に検めてもらうことで固定資産税が軽減されることもあります。高額な税なので、あとから気付いて後悔しないよう、事前に準備しておきましょう

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