AIの進化によりクルマの自動運転化がいよいよ現実となってきました。
当初は、バスやトラックなど、常に同じルートを走行する商用車が先行することになるでしょうが、自家用車の完全自動運転化もそう遠くは無い段階まで来ています。
完全自動運転化の社会が到来したら、劇的な変化が多くの分野で起こるはずです。ここでは、完全自動運転社会が不動産の価値にもたらす変化について解説して行きます。
自動運転について
自動車の自動運転について、ニュースなどで聞いてはいても、実際にはどこまで自動化されるのか、詳しい情報は知らないという方も多いと思いますので、まずは自動運転について簡単に解説します。
自動運転のレベル
自動運転と一口にいっても、例えば車間距離に応じて自動でブレーキを踏んでくれたり、完全に道順通りに進んでくれたりと、様々な自動のレベルがあり、その技術に応じて、国土交通省や米国自動車技術者協会などが定める5つのレベルに区分されています。
レベル1
システムが、アクセルやブレーキの操作、またはハンドル操作の一部分を行う。
レベル2
システムがアクセル・ブレーキ操作、ハンドル操作の両方を部分的に行う。
レベル3
一定の条件の中であれば、すべての運転操作を自動で行ことができる。ただし、ドライバーはいつでも運転できるように備えておく必要がある。
レベル4
一定の条件の中であれば、すべての運転操作を自動で行ことができる。
レベル5
全ての運転操作を自動化
となっています。現在ですが、日本ではすでにレベル1や2については実用化されており、レベル3までの実証実験が進んでいます。2023年4月には、レベル4で公道を走行可能にする改正道路交通法が施行される見込みです。海外では、すでにレベル4の実験が進んでいるところもあり、自動運転はこれからますます広がっていく可能性があります。
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車の自動運転化が車社会にもたらす変化
まずは、自動運転化によって、車社会がどのように変化するかについて予測してみましょう。
変化1:タクシー、バス乗車料金の低価格化
完全自動運転化になれば、運転手が不要になるので、その分の人件費を削減することができます。
もちろんシステム導入などの費用はかかりますが、人件費削減効果の方が大きいでしょうから、その分、乗車価格は安くなるでしょう。
特にタクシーは、人件費比率が高いことから、乗車価格の下げ余地は大きいと考えられます。
変化2:自家用車の使い道が広がる
従来、自家用車は、所有者やその方の家族が運転して、どこかに移動するものでした。しかし、完全自動運転化によって、その使い道は広がる可能性があります。
例えば、スマホなどからの指示によって、自家用車を所定の場所に無人で自動的に移動させることが可能になれば、バスやタクシーで移動せずに、自家用車が送りやお迎えをしてくれることになりますの。
家が最寄り駅から遠くても、出社、帰宅が苦にならなくなるでしょう。
また、ドライブも自分で運転しないので、移動中に食事をしたり歓談したり、または仕事をしたりなど、時間の使い方も変わって来るでしょう。
変化3:配達・デリバリーがより身近なものになる
ここ最近のコロナ禍で、自宅で過ごす時間が増えて、ウーバーやAmazonなどの宅配を利用する人も増えてきましたが、配送費や配送にかかる人件費がどうしてもかかってしまいます。
完全自動運転化になれば、宅急便などの荷物が迅速にかつ、低価格で配達してもらうことが可能になるでしょう。
問題は、自動車ではアクセス不可な部分、例えば、一般道から玄関やマンションの郵便ポストへの配達については、自動運転だけでは対応することはできないしょう。
しかし、いずれはロボット化が進み、配達車から玄関まで配達をすることができるロボットが開発されたり、または、置き配に替わる方法が開発されたりするでしょう。
クルマ産業に低価格化をもたらすとともに、時間の使い方まで変わる!!
このように、完全自動運転化の普及により、運転手が不要になることから、人件費を大幅に削減することができ、タクシー、バス、宅配など、クルマに関する産業の低価格を推進し、利便性を上げてくれることになるでしょう。
運転に関するコストが削減され、更に、運転に費やしていた時間を他のことに使うことができる社会になれば、我々の生活は大きく変わることになるでしょう。
これは、PCやスマホが我々の生活の一部になってもたらされた進化と、ほぼ同じインパクトを与えるものになるでしょう。
自動運転化が不動産の価値にもたらす変化について
完全自動運転化社会が到来すれば、不動産価格に対する見方にも変化が出てくるはずです。
これまでは、駅に近い場所、商業集積地に近い場所など、利便性が高い土地が評価されていました。しかし、自動運転化により、自分で運転する必要がなくなったり、渋滞がなくなり、移動にかかる時間も削減されれば、利便性に対する考え方も変わって来るでしょう。
ここでは、完全自動運転化社会によって、不動産に対する価値がどのように変化するかについて考えて行きます。
変化1:利便性へのプライオリティは低くなる
これまで、ターミナル駅、商業地、オフィス集積地などの地価が高く、そこを中心に、距離が離れるほど、地価は下がっていく傾向にありました。
近いということは、移動に関する手間と時間がかからない利便性が高いということです。利便性への対価として、地価は高くなります。
しかし、自宅と駅との行き来を自動運転の自家用車や無人の格安タクシーが送迎してくれれば、駅から遠くても、ゆったりとした環境の良い場所を選択する人が増える可能性もあります。
現に、コロナ禍で在宅ワークが進み、狭い都心の住居から、広々とした郊外の住居に住み替えるような動きも出ました。
このように、何かをきっかけに不動産に対する価値が変化することはあります。
都心の駅前のスーパーなど近くて便利ですが、郊外の大型店舗の方が品揃えが豊富で、価格が安いことから、移動という手間を考えなければ、郊外の方が良いという判断もあるでしょう。
今は利便性が重視されていますが、移動の手間や時間が削減されれば、暮らしやすさなどの方が、価値が高くなる可能性もあるでしょう。
変化2:景観が良いなどの特徴がある不動産の価値は不変
その中でも海、湖、山、森林など、景観が良い、夏は涼しくて過ごしやすいなど、特徴のある不動産の価値は不変でしょう。メタバースなど仮想空間での代替も考えられますが、五感で感じる価値にとってかわるのは、もう少し先のことだと思います。
更に、そのような特徴のある不動産は、むしろ駅から遠かったりなど、利便性は低い場所にあるものが多いですが、完全自動運転化で自家用車やバスが送迎してくれることになれば、むしろ価値が上昇することもあるでしょう。
変化3:不動産を選択評価する基準が変わる
不動産を選択する場合、広さや築年数もありますが、駅までの〇〇分、スーパーまで〇〇メートルなど、周辺施設への距離も大きな基準となっています。
しかし、完全自動運転化社会になれば、距離についての考え方も変わってきて、不動産を選択する基準に入って来ない可能性もあります。距離に替わって、暮らしやすさなどが数値化され、不動産の価値を決める要素となる可能性は大いにあるでしょう。
まとめ
完全自動運転化により、運転に関する手間や時間が削減され、自家用車に乗っている間も食事や仕事ができるようになれば、我々の生活は大きく変わるでしょう。
PCやスマホの登場・普及と同等のインパクトを社会に与える可能性があります。投資においては、自動運転化の第二のアップルを探してみたいですね。
不動産に関しては、郊外の海沿いのリゾート的な性格を持つような物件に投資をしてみるのも良いかと思います。ただし、現在流通している車自体が自動運転に切り替わるには時間がかかるでしょうし、交通システムも自動運転に対応するまでには、技術が確立されてもかなりの時間がかかるのではないかと予測されますので、長期的な目線で考える必要はありそうです。