アパート経営を始める前に知っておくべき基礎知識

アパート経営は区分マンションの投資に比べて手間がかかる分、収益が高いことがあります。ここではアパート経営を始める前に知っておくべき、メリット、デメリット、注意するべき点などを解説して行きます。

1 アパート経営のメリット

(1)安定的な収入が長期的に得られる

アパートは住居として使われます。住居の場合は入居者が一度入居すれば中長期的に居住する可能性が高く、安定した収入が得られます。この点は景気の波を受けやすい事務所ビルや商業店舗などと比べて安定感があります。また、自分で管理する必要や外部委託するコストが発生する可能性はありますが、区分所有マンションと比べて管理組合に支払う管理費は無く、全体の管理コストは少なくて済みます。さらに通常のアパートは部屋が小さめの単身者向けや若年層への小型ファミリー向け物件が多いので、これらは賃料単価が低く、複数の部屋を保有して賃貸運用することで空室リスクを分散して収入を安定化することができます。

(2)インフレに強い

不動産は物価の上昇や株価などにも一定の連動性があり、インフレ傾向になったときは賃料が上昇しますから不動産価格も上昇するのでインフレヘッジには適した投資先です。
過去にもインフレが何度もありましたが、日本の不動産はその時々で連動して上昇し(逆にデフレ時代には下降する時もありましたが・・・)インフレヘッジ機能を十分に果たしました。
また、不動産投資をするときには相当数の方がローン借り入れをしてレバレッジをかけますから、インフレ時には投資金額に対する利回りはさらに高いものとなります。

(3)生命保険の代替えになる

アパート経営を始める方は大部分の方が投資資金をローンで賄いますので、その際には団体生命保険に加入が条件となることが殆どです。この保険は契約書(借入人)が死亡したり、あるいは重度の障害をなった場合は、ローンの残債は保険会社が肩代わりして返済してくれます。生命保険に単独で加入するよりも、コスト的にもメリットがありますので生命保険の代替えとなります。

2 アパート経営のデメリット

(1)投資コストが大きい

アパート経営は土地代金+建物代金と数千万円から億円単位になることもあり、投資コストはワンルームマンション投資などと比べると高額になります(土地保有の場合はやや異なる)。一般のサラリーマンでもアパート投資は可能ですが、投資金額に対するローン比率が高い場合は収益率や資産性をよく考慮してリスクを分析した投資するべきだと考えられます。

(2)建物の老朽化が速い

木造建築や鉄骨造などの場合は、償却年数や耐用年数とも、鉄筋コンクリート造りと比べると短く、建物の老朽化も早いと考えるべきです。また、通常のアパートの場合は郊外型が多く、その場合は土地コストが安いので建物比率が高く資産性は都心物件に比べてやはり弱くなります。

(3)空室リスクがある

アパートの場合は単身世帯用やファミリータイプでも小型の部屋が多くその分部屋数が多いので全入居者が退去してしまい収入が全くなくなること可能性は低くなります。その点ではリスク分散にはなりますが、空室は一定レベル発生すると考えて運営するべきだと考えられます。複数の部屋を賃貸するメリットもあるものの、空室リスクは一定レベルで覚悟しながら運営すべきでしょう。また、老朽化した時は賃料も下がりますが、更に、賃貸人気も下がるので、賃料下落と空室リスクも増加すると考えられます。

(4)売却しにくい

区分所有のマンションは同じ建物の中で多くの部屋があり売買事例などもわかりやすいため、一定の相場価格が出しやすいですが、アパートの場合はその物件一棟だけですから、類似物件の比較もしにくく、投資家にとっては適正価格がわかりにくい部分があります。よって買手はある一定レベルの不動産知識を持った方に限定されがちです(特に中古アパートはその傾向が大です)。逆に区分マンションは空室になれば投資用だけでなく自己の居住用物件としても販売できますから、より広い範囲で買手候補を探すことができますから、売却は比較的容易です。

(5)ローンの取り組みが難しい

ローンを借りる場合、区分所有マンションは同じ棟内での類似物件を参考することで担保評価は比較的行いやすいのですが、一棟アパートの場合は土地の時価評価、建物の再建築価格評価などによる時価評価をして担保評価も査定されるため、評価する側にも手間と評価額の高低リスクがあります。当然評価額が低めにされることもありますので、融資可能金額は低く見積もって資金計画を立てておくことが大切です。

 (6)トラブルが多い

アパートは集合住宅で、特に木造や鉄骨造の場合は鉄筋コンクリート造に比べて防音性も劣るので、隣接や階の上下などの入居者でトラブルが起こりやすいことがあります。住民同士のトラブルやクレームが多い場合は、所有者にとってそのクレームを聞いたり、解決する労力、解決にかかるコストなど負担も多く、ストレスもあります。

3 アパート経営の注意点

アパート経営は区分所有マンションなどの投資と比べて工夫次第で収益が向上します。ここではアパート経営するにあたってどのようなことに注意すればよいかを挙げていきます。

(1)立地を選ぶこと

アパート経営のスタートは立地を選ぶことです。マンションの場合は建物が集積する地区で容積率が高い場所にある場合がほとんどですが、アパートの場合は低層の建物なので郊外の住宅地のような場所でも、どのような場所でも建てることができます。一度建物を建ててしまうと移動はできませんので、賃貸の需要があり、かつ人気がある場所を探して、空室リスクを減らし家賃も高くできまるようにしておくことが大切です。

(2)初期費用を極力抑えること

最近の住宅設備は目を見張るような進化で、浴室乾燥、風呂の追い焚き機能、温水便座付自動開閉トイレ、食洗器付きキッチンなどいろいろ機能が付けられます。しかし、賃貸するとなると、もしその設備が老朽化や故障で不具合の場合は賃貸人に修理の責任があります。つまり賃料に合わせ、設備のレベルは決めてください。設備はメンテナンス費用もかかってきますから、後で大きな修繕・交換費用となって跳ね返ってきますので注意しましょう。

(3)メンテナンスがしやすい建物であること

すでに建物がある中古物件を買う場合も、新築で建てる場合も、建物はメンテナンスがしやすくコストがかからない建物がよいと思います。アパート経営は長期戦で取り組むべきです。建物は時間が経つと老朽化による修繕箇所や不具合が必ず出てきますので、そのこともあらかじめ考えて、汎用性のある部材を使ったりあまり変形した建物を建築しないなど、修繕などの費用が安く済む方法を考えましょう。よくデザイナーズ物件などと言って奇抜な建物や外装の物件がありますが、坪当たりの賃料を多少高く設定できても、有効賃貸面積やその後のメンテナンスコストを考えるとかえって割高になることもあります。

(4)良い管理会社やリーシング会社選ぶこと

アパート経営は賃貸の質にかかっていると言っても過言ではありません。そのためには良いテナントを見つけるために、その地域に精通しているリーシング会社(テナント付け不動産会社)と付き合うことが大切です。これは名前がある大手というわけではありません。例えば物件の近隣の駅前で長年営業している不動産会社で、地元で多くの物件を管理して評判が良い会社などは良いと思います。近隣で多くの物件を管理していれば、手狭で退去したいとか、もう少し駅に近い部屋に移りたいなど、最初に相談される不動産会社ですから、早く情報が得られてテナント付けが早くなります。他にもいろいろなパターンがあると思いますが、その物件の周辺について情報力があり、その物件に合う客層にアクセスできるネットワークがあるリーシング業者を探しましょう。
また賃貸管理は、周辺に複数の管理物件を持っている会社であれば、何かのついでに物件の状態を見に行ってくれたり、消防点検や修理をこまめにやってくれたりします。特に管理すべてを委託する場合は、テナントのクレーム処理もありますから、接客面でもしっかりとした不動産会社を選ぶべきです。

(5)老朽化対策

アパートは木造や鉄骨造が多いので、鉄筋コンクリート造りに比べ、老朽化のスピードも早いので、早めのメンテナンスが必要です。その対策が後手に回れば建物が傷んでしまい、余計なコストがかかったり、建て替え時期が早くなったりしてしまいます。分譲マンションでは管理組合が修繕積立金をプールしてくれますが、一棟アパートや一棟マンション所有の場合は、それが無いので、自分で長期修繕計画を作成し、修繕のための資金を積み立てておくことが大切です。

(6)クレーム対策

アパートの場合は同じ建物の中に複数世帯が住むので、騒音やゴミ出しほか、いろいろなことでクレームも発生する可能性があります。管理会社に委託していても、大きな問題となった場合は所有者に報告があり、それなりの対応や出費を伴うことも出てきます。いつどんな状態でクレームがあるかはわかりませんので、いつでも善処できるようにその対応をしておかなければなりません。

(7)借入金利

昨今の金利情勢を鑑みると、この異常的な超低金利状態がまだ長く続くように感じますが、過去の例を見ると、いつ何時に金利が高騰してくるかはわかりません。借入金の金利は、目先は変動金利のほうが返済額が安く済みますが、20年、30年先のことを考えると、一定レベルの金利変動(上昇)があり支払い額が大きく増える可能性があります。もし毎月の支払い額に余裕があれば、なるべくローンは固定金利にするほうがよいと思います。固定金利にすると月々の返済は現状では変動金利より多いでしょうが、固定金利であれば最終返済日までの返済額が確定するので、将来の資金計画も立てやすく、安心して経営ができます。

まとめ

アパート経営には、不動産投資に共通するメリット・デメリットとアパート経営ならではのメリット・デメリットが存在します。マンション投資に比べて、収益性は高いものの、手間やリスクは増えますので、マンション投資以上によく調べてから投資の判断をしましょう。そのためには、より多くの物件を見ることと、いろいろな管理会社の話しを聞くのがおすすめです。

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