不動産投資において、不動産の運用方法は、通常の賃貸のほかに、マンスリーマンションや民泊といった方法があります。
民泊投資は、一般の住宅やマンションを購入し、そこに有料でゲストを宿泊させることで、利益を得る投資方法です。
日本への訪日外国人観光客数は2019年には4,000万人を超え、更に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、民泊投資は大きな注目を集めていました。
その後、コロナの発生により、訪日外国人は激減し、更に、人流も制限されたことから、民泊もホテルなどと同様、壊滅的な被害を被ることになってしまい、民泊投資から撤退する投資家も多く見られたようです。
米国などでは、もともと、バカンスなどで不在の時期に、自宅を他の人や観光客に貸し出すことが行われていました。少し前に、Airbnbなどの民泊紹介会社が設立され、インターネット上でその流通網が整備された結果、一大産業となりました。
日本では旅館業法の縛りで、自宅などを民泊で貸し出すことが難しかったのですが、東京オリンピックを控え、宿泊施設が大きく不足する可能性もあったこともあり、法律も改正され、現在のように民泊がしやすい環境になりました。
2022年の夏ぐらいから、外国人観光客による日本旅行も解禁となる見込みで、インバウンド需要が再度盛り上がることが期待されています。
この流れにより「民泊投資」も再び注目されるようになるでしょう。この記事では、民泊のメリット・デメリット、更に民泊の勧め方について解説して行きます。
民泊を行うメリット
その1:収益性が高い
民泊投資の最大のメリットは収益性が高いことです。
民泊は通常のホテルや旅館のように「1泊〇〇円」という感じで自分で料金を設定できます。繁忙期、閑散期などありますが、その時々に応じて料金を変更したり、アメニティや家具を充実したりといろいろな工夫をして稼働率が高くなれば、通常の賃貸よりもはるかに多くの利益を得ることが可能です。
例えば、賃貸では6万円くらいしか家賃が取れない比較的な築古のワンルームマンションでも、民泊により一泊4,000円(2名)で20日間貸し出すことができれば、8万円の収入になります。
工夫次第では、もっと稼ぐことも可能でしょう。
その2:原状回復費などの諸費用が抑えられる
通常の賃貸物件と比べて、民泊では常時住むことが無いので、それほど大きな損傷や劣化が起こりにくいと考えられます。
また、通常の賃貸と違い、退去の後、次に賃貸する前に、大規模な原状回復を行わなければならないこともないことから、原状回復費などの諸費用を抑えられるというメリットもあります。
その3:需要の伸びが再び期待できる
コロナ禍でしぼんでしまったインバウンド需要ですが、コロナのある生活が常態化し、海外旅行者の受け入れも間もなく再開されようとしています。
以前の水準に戻るには時間がかかるかと思いますが、世界中、リベンジ消費が活発になっています。更に、ここ最近の円安により、旅行者の財布のひもも緩くなることが期待できます。
2024年には大阪万博の開催も控えており、さらなる宿泊施設の不足が予想されています。
その4:転用しやすい
一般の賃貸用不動産への民泊投資であれば、コロナ禍が長期化して、民泊として成り立たない場合でも、通常の賃貸に切り替えて、家賃収入を得ることができます。
逆に、ホテルや旅館に投資した場合、通常の賃貸物件に転用することは、なかなか難しいでしょう。
民泊を行うデメリット・リスク
その1:民泊を開始するための準備・手続きに時間がかかってしまう
民泊を始めるには、いろいろと準備が必要です。通常の賃貸物件であれば、オーナーチェンジであれば、すぐに賃料収入が発生しますが、民泊ではそういうわけにはいきません。
通常、住宅宿泊事業法に基づいた届け出などの手続きが必要で、その手間と時間がかかります。スムーズにいったとしても、2か月ぐらいはかかると言われています。
また、営業日数の上限設定(年間180日以下の範囲内)があり、そのほかにも地域の制限などもあります。更に、最近ではマンションなどの共同住宅において、管理組合の規則で、民泊での運用を禁止する動きも多くみられます。
更に考えなくてはならないのは、民泊投資では、不動産投資ローンを借りにくいといったこともあります。
その2:法律が改正されると大きな影響を受ける可能性がある
住宅宿泊事業法はまだスタートしたばかりなので、今後、民泊運営においてトラブルなどが発生した場合は、法律が改正される可能性もあります。
例えば、あまりにも多くの民泊届け出があった場合に許可制に切り替わるとか、営業日数をさらに厳しくすることが予想されます。
営業日数の制限が厳しくなり稼働日数が減少すれば、採算は悪くなってしまい、通常の賃貸の方が良くなることもあるでしょう。
その3:近隣住民とのトラブルが起こりやすい
民泊の運営における最大のリスクは、どのような宿泊客が来るのかがわからないということです。
Airbnbなどは、宿泊者を点数化してリスクを数値化して開示してくれますが、会ったことのない宿泊者に家を貸すことは、やはりリスクが伴います。
特にルールを守らない滞在者による騒音問題やごみ問題、セキュリティ問題が発生することがあり、近隣からのクレームが起こってしまう怖れもあります。
副業としての民泊運営に失敗しないためのポイント
では、実際に本業が忙しい、サラリーマンや公務員の方が民泊運営を進めていくには何を気を付けるべきでしょうか。
ポイント1:すべて管理を任せてしまうのも一つの手
自分が投資した物件を、住宅宿泊管理業者(管理業者)という民泊運営のプロにまるごと委託してしまうのも一つの手です。
管理業者は、国交省のホームページに一覧表があります。(以下、関東の登録業者一覧表です)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000827233.pdf
管理業者は、利用者の募集から始まり、宿泊者名簿の管理、入退室の手続き、利用方法の説明、清掃の手配など、民泊に必要な業務のすべてをまるごと受託してくれます。
物件の所有者は、単なる投資家としての立場にあり、民泊の運営にタッチする必要はありません。
サブリースのように、不動産会社や管理業者に不動産を借り上げてもらうという方法もあります。
管理を全て任せてしまうと、管理手数料として、収益の10~20%はかかってしまいますが、手間がかからないというメリットもあります。
また、サブリースの貸先によっては、不動産投資ローンが借りやすくなるというメリットも出てきます。
ローンを利用して民泊投資を考えている方は事前に金融機関と物件や運営方法についてよく相談するようにしてください(金融機関は保守的な考え方をします)。
ポイント2:一部の業務を自分で行うことも可能
全て任せてしまうと管理費用がかかってしまうので、利回りを上げるためにも費用を節約したいという方には、一部の業務を自分で行うことをお勧めします。
民泊仲介サイトを利用すれば、自分で宿泊者を見つけることは可能です。Airbnbを利用すれば、宿泊予約・代金支払・チェックイン・チェックアウトまですべてオンラインで完結させることができます。
入退室については、暗証番号で開けられる鍵を取り付けたりすることで、鍵の受け渡しをすることなく、部屋を貸し出すことができます。
しかし、入退室時の清掃作業は、外部の業者に任せるの良いでしょう。投資物件の近くに住んでいれば別ですが、入退室のタイミングを見計らって、自分で部屋を掃除に行くというのは、なかなか難しいと思います。
清掃作業だけ外注すれば、全ての管理を任せてしまうことに比べると、大幅に経費を削減することはできます。
ポイント3:いずれにせよ、口コミは重視しよう
宿泊者募集はネットを通じて行われますが、利用者は値段・場所だけでなく、口コミを参考に判断することが多いと聞きます。
民泊の事業者は、個人の大家が多いことから、その部屋に泊まって大丈夫なのかは、口コミが頼りになります。
運営を全て管理業者に任せている場合でも、自分の部屋の口コミはチェックするようにしましょう。何か悪い口コミがあれば、すぐに対応してもらうことが重要です。
だいたい口コミにおいて書かれることは、以下の点です。
- 記載されている設備がきちんと揃っているか(故障などもないか)
- 写真と現物が違っていないか
- 室内の清潔感
- トラブル発生時の対応
このあたりを、あらかじめ想定して準備しておけば、良い口コミが増えて行くでしょう。
まとめ
民泊投資は、立地や物件の内容によっては、収益性の高い不動産投資を可能としてくれる手段となりえます。
半面、一般の住宅に、所有者の知らない第三者が宿泊し、かつ頻繁に入れ替わるというリスクがあるのも事実です。
元々、自宅などを使用していない時期に貸し出し、一定レベルの収益を得ることができればよいという考えが発展して、出来上がったビジネスモデルですので、収益追求型のビジネスモデルではないのかもしれません。
コロナが発生してこの約2年半の間で、民泊を諦めた方も多くいるでしょう。まさかこのような形でインバウンド需要が突然消えてしまうことは、誰も予想することができませんでした。
間もなく、インバウンドが再開し、再び民泊投資も注目を集めることになるでしょう。まさに始めるには良いタイミングと考えられますが、物件や運営方法については慎重に考えて進めるようにしてください。