「買い替え特例」は、正式名称を「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。
これは、自身のマイホームを売って代わりのマイホームに買い替えたとき、要件を満たせば、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる制度です。
本来は、物件を売却した金額から、購入代金をはじめとする物件の取得費用や、仲介手数料、登記費用などの譲渡費用を差し引いた金額がプラスになった場合、その利益分が課税の対象となります。
しかし、この特例を使えば、売却によって得た利益に対する課税を、次回のマイホーム売却時に繰り延べることができます。
ただし、旧居の売却金額よりも、新居の購入金額が低い場合には、差額分が課税されます。
メリット
買い替え特例を用いるメリットは、支出がかさむ買い替えのタイミングで税金の負担を抑えられることです。
税負担を抑えた分、住宅ローンの元本を減らしたり、引越しに伴う諸費用に充てたりすることができます。
デメリット
注意事項~1
買い替え特例を用いる場合、基本的に以下の控除との併用ができないので、売った年とその前後1年間に、以下の特例の適用を受けていないことが要件となります。
- マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例
- 収用等の場合の特別控除
なお、相続の際に活用される特例である「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、適用を受けていても問題ありません。
注意事項~2
買い替え特例は税金の控除ではなく、あくまでも税金を繰り延べる特例です。
つまり、新たに購入したマイホームを将来売却し、譲渡所得が発生した際には、今回の譲渡所得税と併せて次回の譲渡所得税も支払わなければなりません。
買い替え特例を利用する際の要件
売却予定のマイホームに関する要件
- 自分が住んでいる家屋、並びにその敷地や借地権を売ること
- 売却代金が1億円以下、売った人の居住期間が10年以上であること
- 以前住んでいた家屋の場合は、住まなくなった日から3年が経過した日が属する年内ま
でに売却する必要がある。
なお家屋を取り壊している場合は、
- 取り壊された家屋やその敷地が、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日におい
て所有期間が10年を超えるものでなければならない。 - その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなく
なった日から3年を経過する日が属する年の年内までに売却しなければならない。 - 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用途として使ってはならない。
- 売却代金が1億円以下、売った人の居住期間が10年以上であること
- 特例の対象となるマイホームと一緒に利用していた部分を分割して売却している場合には、マイホームを売却した年の前々年から翌々年までの5年間に分割・売却した部分も含めた総額が1億円以下でなければ適用されない。
購入予定の物件に関する要件
- マイホームを売った年の前後1年間にマイホームを買い換えること
- 買い替えるマイホームが中古住宅である場合、耐火建築物・耐火建築物以外に関わらず、取得の日以前25年以内に建築されたもの、また一定の耐震基準を満たすものでなければならない。
- 買い替える建物とその土地の床面積・土地面積は、それぞれが50㎡以上、500㎡以下のものでなければならない
- マイホームを売った年の前後1年間にマイホームを買い替え、買い替えたマイホームは次
の期限までに住む必要がある。 - 売った年・その前年に取得した場合、売った年の翌年12月31日まで
- 売った年の翌年に取得した場合、取得した年の翌年12月31日まで
その他の要件
- 買い替え特例の適用を受ける際には確定申告をすることが必須。
- 買い替え特例の要件には、マイホームの売却先が親族以外でなければならない。
事業用資産の買い替え特例
買い替え特例には、居住用財産であるマイホームを対象とする特例とは別に、事業用資産を対象とした特例も存在します。
個人が事業用に提供している特定の地域内にある土地建物等の資産を譲渡して、一定期間内に買い替え資産を取得し、かつ取得日から1年以内に取得資産を事業用として提供した場合には、譲渡益の一部にかかる課税を将来に繰り延べることができます。これを「事業資産の買換えの特例」といいます。
この特例が適用されると、資産の譲渡価額より買い替えた取得価額が大きくなる場合には売却金額に20%をかけた額を、小さくなる場合にはその差額と、買い替えた金額に課税割合をかけた額との合計額を収入金額とし、譲渡所得の計算を行います。