コロナ禍がようやく終わって世の中が平静を取り戻すかと思いましたが、2022年2月からロシアによるウクライナ侵攻が始まり、ここ最近では、中東のパレスチナ・ガザ地区でも紛争が起こるなど、世界はより混迷を深めています。
戦争や紛争などの有事は、世界経済に深刻な影響を与えることがあります。その場合、投資市場にも大きな影響がありますが、これらの事態に対して我々はどのように対応したらよいのでしょうか。
戦争や紛争などが経済に及ぼす影響
その1:社会インフラの破壊と社会活動の停止
戦争や紛争では多くの建築物、工場、農地などの社会インフラが破壊されることが多く、更に、戦火の中では、社会インフラの破壊と危険からの避難などにより、生産活動自体が停滞するので生産性が著しく低下します。
これにより、当事者国の経済成長率が減少し、場合によっては、世界全体まで景気悪化などの現象が広がって行く可能性もあります。
その2:各国間の貿易などの分断
戦争や紛争が起こると、当事者の国やその周辺の国で貿易などが分断されることがあり、更に、その他の国おいても当事者の国からの輸出が制限されることによって貿易が減少し、各国や企業の経済活動に大きく影響を及ぼします。
もし、戦争の当事者が資源国などの場合は、資源価格の上昇や供給不足が起こることになります。
その3:投資などの資本流入の減少
戦争や有事が起こると、投資者国やその周辺は当然にリスクが高まり、当事者国、周辺国への海外からの資本の流入は減少します。
その場合、その国の経済活動に大きな制限がかかってしまい、経済活動やインフラ整備などに大きな影響が出ます。
その4:財政の悪化
戦争や紛争では巨額の軍事費が必要になります。
その費用は一度始まると減額するのも難しいので、国の財政に大きな負担をかけてしまい、その結果、予算をねん出するために国は教育や医療などの社会福祉、インフラ整備などの予算配分を削減することもあり、国民の生活に大きな影響を与えます。
ロシアによるウクライナ侵攻への影響
ロシアによるウクライナ侵攻は2022年2月に始まり、もうすぐ2年が経過しようとしています。実際にどのような影響が起きているでしょうか。
その1:穀物価格の上昇
ロシアとウクライナは世界有数の農業国です。特に小麦などの穀物生産は世界の生産を支えていて、今回の紛争によってロシアとウクライナからの輸出が減少したことで、穀物価格が大幅に上昇しました。
その2:資源価格の上昇
ロシアは世界第2位の石油輸出国で、欧州諸国へパイプラインによって天然ガスも供給していました。
世界各国がロシアからの輸入制限をしたので石油や天然ガスの価格は高騰し、特に欧州では10%を超えるインフレを招いた国もありました。
その3:国家間の分断
米国や欧州各国がウクライナへのロシアの侵攻を非難し、貿易を大きく制限したことは、ロシアの経済には大きな影響を与えたばかりか、世界貿易において、米国や欧州を中心とした国家と、ロシア・中国を中心とした国家の分断が起こっていて、多くの意味で世界に影響を及ぼしています。
その4:インフレにより先進諸国は高金利政策へ
コロナが収束を迎え、世界の経済活動が正常化されるタイミングで、この戦争の影響で穀物・資源価格が上昇したことは、米国・欧州においてインフレを引き起こしました。
先進諸国はインフレ封じ込めのため、それまでの金融緩和政策を転換し、金利引き締めと高金利政策に大きく舵を取りました。
その結果、米国政策金利は戦争開始以来、2年弱の短い期間で5%も上昇しており、日本においても、ここに来て日銀が長期金利の上昇を一定幅で容認するなど、世界的に政策金利を上げる動きになっています。
パレスチナ・ガザ地区紛争の影響
加えて、2023年10月からパレスチナのガザ地区を支配するハマスによるイスラエルへの攻撃をきっかけに、武力紛争が勃発しました。
その1:紛争の経緯と展望
イスラエルと北部と南部に隣接するパレスチナ国家は緊張感がずっと続いていました。
今回はイスラム武装組織ハマスが実効支配するパレスチナの飛び地の存在であるイスラエル南部に隣接するガザ地区がこの紛争の中心です。
ハマスが突然イスラエルに侵攻してイスラエル人を人質に取ったので、その対抗措置としてイスラエルは空爆を繰り返してガザへの侵攻を宣言しています。
ただし、ガザ地区には多くのパレスチナ人が居住していて、そこに空爆をしているので一般の住民に大きな被害があり、国連もイスラエルの侵攻を止めるように努力しています。
ただし、この周辺の国家間の関係は複雑です。
イスラエルはハイテク産業は世界でも有数の技術力を持ち、今でも多くの先進的な技術を開発しています。
また、それらを利用した防衛産業も盛んで、自国の防衛もしっかりと維持されています。多くの有力なユダヤ人が居住する米国との関係が深く米国はイスラエルを支持しています。
近隣国で同じイスラム圏であるイランはハマスを支持していて、エジプト、イラクなどの周辺国にイスラム圏の結束を呼び掛けています。
今のところ、米国、イランとも戦闘への関与は消極的ですが、万が一にも誘発されて戦闘に巻き込まれれば、サウジアラビアを中心とする周辺国がどのような行動に出るのか、またこれらの産油国からの原油供給が停滞などすれば世界経済に大きな影響が出ます。
欧州各国も調整に乗り出してはいますが、紛争が長期化する可能性も考えられます。
その2:紛争開始直後の投資マーケットの動き
では、10月の紛争開始以降、投資マーケットはどのような動きを見せたでしょうか。目立った動きを紹介していきます。
買われた資産
紛争が始まると、投資家はリスクオフムードになり、安全資産に投資を振り向けます。今回は、金、スイスフランといったものが買われました。
また、中東での紛争ということで、原油価格も上昇してます。更に、紛争の長期化を見込んで、防衛関連産業の株式も買われていました。
円も安全資産ということで、このような紛争が起こると買われやすい資産でしたが、今回は投資対象から外れて、スイスフラン一択だったのは、円の地位低下を示しているかも知れません。
売られた資産
リスクオフということで、株式全般は冴えなく、景気悪化への懸念から、小売・娯楽・旅行に関連する株式が売られていました。
当然、イスラエルの通貨・株式も売られています。
混迷を深める世界情勢下の投資戦略
上記のように、これら不確実性な出来事は当事者国だけではなく周辺各国、取引のある国など世界中に大きな影響を与えます。
資金や物資などの供給も物理的に大きく減退して、各産業分野では供給不足となり価格高騰が起こり、コストプッシュ型の好ましくないインフレが起こる可能性もあります。
では、このように混迷を深める世界情勢を乗り切るための投資アイディアを短期と長期に分けて紹介していきます。
短期:機関投資家の動きを読む
投資家はリスクオフ志向となるため、リスクのある株式や通貨などを売却して、リスクが低い資産に投資を振り向ける傾向があります。
紛争が長期化する恐れがあるのであれば、安全資産を中心にポートフォリオを組んで、機関投資家と同じ動きをすることで値上がり益を狙うことも可能でしょう。
長期:やはり分散投資が最適
コロナがようやく収束したと思えば、すぐに大きな国際紛争と、世界情勢は落ち着きを見せません。どこで何が起こるか分からないというのは、これからも続くでしょう。
これらを予測するのは不可能ですので、何が起きても大きなダメージを受けないよう、地域(日本、米国、欧州、新興国など)、商品(株式、債券、不動産、商品など)を分散しておくことはやはり大切です。
イスラエルでの紛争が起きても日本円がさほど値上がりしなかったことを見ると、もはや円は安全資産ではないかも知れません。ドルなどの外貨を持つ必要はあるでしょう。
自分でポートフォリオを組むことが面倒であれば、多少の手数料はかかりますが「ウェルスナビ」を利用したり、投資信託を購入するという方法もありますが、折角ですので、ネット証券などで米国のETFを自ら選んで数種類購入してみるのはいかがでしょうか?