【税理士による解説】住宅取得等資金贈与の特例~贈与税の非課税制度と併用が可能な制度について~

贈与税とは、個人から財産を無償で受け取った場合に発生する税金です。

ただし、住宅の購入を目的として、かつ親や祖父母からの資金援助を受けた場合に限り、一定の金額以下であれば税金を課されない「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」というものがあります。

住宅購入時の税金対策としてお得な「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」ですが、実は以下2つの控除制度との併用も可能です。

贈与税の税額控除制度

贈与税の税額控除は毎年1月から12月までの暦年で控除される「暦年課税」の基礎控除と「相続時精算課税」と呼ばれる特別控除の2つの流れがあります。

▪「暦年課税」とは、1月1日から12月31日までの1年間で110万円を超えた贈与には、贈与税がかかるというものです。年間110万円以下でしたら、税金の申告も不要ですし、親族以外の第三者からの贈与にも適用されます。

▪「相続時精算課税制度」とは、一生涯につき贈与額2500万円以下まで贈与税を非課税にできる制度です。代わりにその贈与財産は贈与時の価額で、相続時に相続財産として合算され、2500万円を超えた贈与を受ける場合は、超えた部分の税率は一律で20%となります。

「相続時精算課税」は、原則として60歳以上の親または祖父母が贈与者であるという要件があり、また、受贈者は20歳以上の子どもまたは孫である必要があります。なお、2022年4月1日以後の贈与については、受贈者の年齢制限が18歳以上へと引き下げられました。

しかし、マイホーム取得目的で一定の要件を満たす(住宅取得等資金贈与の特例)なら、特例で贈与者の年齢制限はありません。

さらに、一度「相続時精算課税制度」の適用を選ぶと、一生涯にわたって「暦年課税」を選択できません。相続時精算課税は、自己申告制のため申請がない場合は、自動的に暦年課税となります。

一見すると相続時精算課税制度を利用したほうが有利に感じますが、相続時精算課税は、免除された贈与額が、最終的には相続財産として合算されて、相続税が計算される制度になっているため、相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与税の免除額が多くなる代わりに、相続時にかかる相続税の負担が増加します。

住宅取得資金贈与の非課税制度はこれら暦年課税(毎年110万円)と相続時精算課税(2500万円)のどちらか1つと併用することができます。

住宅ローン控除制度

住宅ローン控除制度とは、住宅ローンを組んで住宅を購入した際に利用できる控除制度です。年末時点の住宅ローン残高の0.7%の金額が、収めた税金から還付されます。

たとえば、親からの援助金は土地代や住宅の設計料などに充てて、住宅は住宅ローンを組み、住宅ローンを返済しながら控除を受けるといったことができます。

住宅ローン控除の適用範囲には注意が必要です。次の「1.」が「2.」の金額を超えるときには、その超える部分に相当する金額については住宅ローン控除の適用はありません。

1.住宅借入金等の年末残高の合計額

2.住宅の取得額から非課税制度等の適用金額を差し引いた額

<例>

認定長期優良住宅の場合

年末の住宅ローン残高の合計額:5000万円

住宅の取得額:5000万円

非課税制度を適用した金額:1000万円

「1.」の住宅借入金等の年末残高の合計額は「5000万円」です。

「2.」の住宅の取得額から非課税制度等の適用金額を差し引いた額は「4000万円(=5000万円-1000万円)」となります。

この場合、少ない金額である「2.」の4000万円が控除対象ということです。

贈与税の非課税制度は、所得税の「住宅ローン控除制度」と同時に利用することができます。

住宅ローンの借入額が住宅の購入金額に達せず、住宅ローンと両親からの資金援助を合わせて住宅を購入するといった場合は、併用することでメリットがでます。

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