【税理士による解説】所有権移転登記について~かかる費用と必要書類及び手続き方法~

所有権移転登記とは

不動産の売買や相続を行うと、「所有権移転登記」をしなければなりません。

所有権移転登記とは、不動産の所有権を登録し、権利が誰にあるかを証明するための重要な手続きです。

中古住宅を売買、贈与、相続をすると、不動産の所有者が変わりますが、所有者を変更する際、法務局での所有権移転登記の手続きが必要になります。

所有権移転登記を行わないと、新しい所有者が自分の不動産として法的に認められないため、不動産の所有権を主張することができません。

たとえば、売主が不動産を複数の買い手に売却しようとする二重譲渡が起こると、先に登記した人が正式な所有者として扱われてしまうのです。

所有権移転登記の費用を負担するのは、不動産売買ならば買主側であり、不動産の贈与では贈与をされる人、相続では相続をする人、というのが一般的なケースです。

ちなみに、不動産に抵当権が設定されている場合には、売却前に抵当権を抹消する必要があり、その費用は売主もしくは贈与する人の負担となります。

いつ所有権移転登記をおこなうか

所有権移転登記は、不動産の権利が移動したときに行います。権利の移動は、不動産売買のほかにも、たとえば相続や贈与、離婚による財産分与などがあります。

所有権移転登記については、いつまでにといった期限の義務は法律で決められていませんが、登記を先延ばしにしておくとトラブルにつながります。

不動産を売買したとき

不動産の売買時には、売主と買主が共同で所有権移転登記を行います。実際には、売主と買主の引渡しの場に司法書士が立ち合い、取引完了を見届けた後、代理で約1か月後の引渡し日に、法務局で移転登記の手続きを行います。

不動産を相続したとき

遺言や遺産分割協議で不動産を相続した際、移転登記を行っていないため、近年所有者不明の土地が増加しています。

政府は、所有者不明の土地の増加を防ぐため、「相続登記を義務化する改正案」が閣議で決定しており、2024年までに施行される予定です。

不動産を贈与したとき

親や祖父母が生きているうちに不動産を譲り受ける「生前贈与」の際にも所有権移転登記が必要ですが、生前贈与された不動産が相続の対象になっている場合、所有権移転登記を行っていないと、所有者であることが証明されず、ほかの親族へ遺産分与の権利が発生してしまいます。相続トラブルを防ぐために事前に贈与契約書も作成しましょう。

離婚で財産分与するとき

離婚で財産を分けるときは、共有持分だった自宅を片方の単独名義にするケースもありますが、不動産の名義人が変わるため、所有権移転登記が必要となります。

名義変更や移転登記には当事者の立ち合いが必要になりますが、時間が経つと相手が名義の変更に応じてくれない場合があるため、離婚が成立したらすぐに、持分を移転する持分移転登記を行いましょう。

所有権移転登記の費用

不動産には、農地や宅地などの土地、マンションや戸建てなどの建物があり、どんな物件を取得したかによって、所有権移転登記にかかる費用は異なります。

所有権移転登記にかかる費用の内訳は、「登録免許税+司法書士報酬(依頼した場合)+ 手続きの実費」です。

登録免許税

登録免許税は所有権が移転する不動産にかかる税金のことで、「固定資産税評価額 × 税率」で算出されます。

登録免許税の税率は、土地や建物の評価額の値段や所有権移転の理由によって変わります。

≪理由 → 土地の税率 → 建物の税率≫

  • 売買→1.5%(2023年3月31日まで軽減税率適応。以降は2%)→ 2%(ただし新築の建物購入時は保存登記となり、税率は0.4%になる)
  • 相続 → 0.4%   → 0.4%
  • 贈与 → 2%    → 2%
  • 競売 → 2%    → 2%

司法書士報酬

所有権移転登記を司法書士に代行してもらった場合、不動産の価格によって、報酬は異なりますが、不動産1件あたり数万~5万円程度です。

実費

①登記事項証明書の発行手数料

事前に所有権を変更する不動産の情報を確認するため、登記所または法務局証明サービスセンターで登記事項証明書の発行が行われます。

登記事項証明書は、取得の仕方によって以下のように発行手数料が異なります。

  • 登記所または法務局証明サービスセンターの窓口での受け取り…600円
  • オンライン請求による証明書の郵送…500円
  • オンライン請求による証明書の窓口の受け取り…480円
  • インターネットの登記情報提供サービスを利用した場合…332円

②書類を集める費用

必要な書類は、不動産売買か贈与か相続か、など不動産の所有権が移る原因によって異なります。

相続の場合は、相続人全員の住民票や印鑑証明書などを集める必要があり、数万円かかることもあります。

③郵送料及び交通費

この場合、お金の支出はさほどかかりません。

所有権移転登記の費用を安く抑えるには

所有権移転登記の手続きを自分で行う

司法書士への報酬は、おおよその目安として数万~5万円程度ですが、依頼内容や物件の価格によっては高額になります。時間があれば自分で所有権移転登記を行うことも可能です。

複数の見積もりを取る

所有権移転登記の手続きを司法書士に代行してもらうなら、司法書士事務所から複数の見積もりを取るべきです。

司法書士の報酬は、不動産の価格によって変わるだけでなく、それぞれの司法書士事務所によっても異なります。

経費を計上する

所有権移転登記手続きの費用は、法人での用途や投資用途など、非居住用不動産の場合、全額経費として計上できます。全ての領収書を保管しておけば、確定申告の際に不動産所得の控除対象となります。

所有権移転登記の必要書類とは

所有権移転登記をしようという全ての状況の人に必要な書類

登記事項証明書

売主、贈与した人が必要な書類

①不動産登記申請書

②委任状

③登記原因証明情報

・売買契約書・贈与契約書・離婚日が記載された戸籍謄本など。

④登記済権利証または登記識別情報

⑤印鑑証明書

⑥固定資産評価証明書

⑦身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート)

⑧実印

買主・贈与を受ける人が必要な書類

  • 不動産登記申請書
  • 委任状
  • 登記原因証明情報

・売買契約書・贈与契約書・離婚日が記載された戸籍謄本など。

④住民票(有効期限なし、戸籍の附票でも可)

⑤身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート)

⑥実印

遺産相続の場合

①委任状

  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 印鑑証明書
  • 実印

相続人が必要な書類

①被相続人の住民票除票(戸籍の附表でも可)

②固定資産評価証明書(最新年度のもの)

③遺産分割協議書

  • 登記原因証明情報

④被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本(遺産分割協議書や遺言書でも可)

⑤相続関係説明図

⑥遺言書、検認調書(がある場合)

所有権移転登記の手続きの方法

所有権移転登記の手続きは、不動産の状況を確認することから始まり、登記を申請して、証明書を受け取って完了となります。

書類の作成・準備

司法書士に代行を依頼しない場合、所有権移転登記の手続きの一歩は、登記申請書の入手です。登記申請書の記入をし、必要書類を確認したら、提出の準備をします。自分で所有権移転登記をする場合は、提出前に法務局で提出書類の確認をしてもらいましょう。

法務局に提出

そろえた必要書類を登記申請書に添付して、不動産を管轄している法務局に直接、もしくは郵送かオンラインで提出します。管轄の法務局は法務局のホームページで調べることができます。

審査

登記申請書と必要書類が法務局に届くと、所有権移転登記の手続きの審査が行われます。ここで申請書の記入の誤りや必要書類の不備があると、訂正や再提出を求められます。

受取り

所有権移転登記は、登記事項証明書を取得して終了です。申請してから登記完了までには1週間~2週間かかります。完了の通知を受けたら、郵送もしくは登記所窓口、法務局証明サービスセンターの窓口で登記事項証明書を受け取ることができます。

まとめ

不動産の所有権移転登記の手続きは速やかに行うべきです。

所有権移転登記は法律の義務付けはないものの、「この土地は私のものです」という権利を法的に明らかにすることで揉め事や困り事を防ぐ機能があります。

新築した住宅には「所有権保存登記」を行って、誰が所有している不動産物件かを法的に明らかにすることができます。

ただ、相続に関しては所有権移転登記をしないまま放置してしまうこともあるので、政府は所有権移転登記の相続に関して義務付けを検討しています

所有権移転登記の手続きの期間は、申請から1~2週間で完了しますが、法務局が混んでいたり、書類に不備があるとより長引くこともあります。

相続の場合、相続人が複数いると、申請から1か月ほどかかります。さらに、所有権移転登記の手続きは、申請の前に必要書類をそろえなければなりません。

従って、所有権移転登記の手続きから完了までの期間は「必要書類をそろえる期間+1か月」と見積もるべきです。

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