インバウンド解禁で、海外からの不動産投資マネーも増える?

日本はコロナに対する厳しい水際対策を長く継続したことで、欧米に比べてコロナ感染者数の増加は軽微で済みました。反面、渡航者解禁を早期に実行した欧米各国に比べると、経済回復が遅れてしまっています。

政府は、この夏に参議院選挙を控えていることから、コロナを拡大させないことを最重点課題としていたようですが、欧米各国の政府から要請を受けたこと、更には、5月のゴールデンウィークに感染者が急増しなかったことから、インバウンド解禁に大きく舵をきったようです。

このインバウンド解禁は日本に大きな経済効果を産むと考えられます。もちろん、不動産投資市場にもプラスに働くでしょう

この動きの中で、外国人投資家はどのような動きを見せるのかどうか、考察してみました。

日本の不動産投資市場に対するインバウンドの影響(コロナ前)

もともと、日本は治安が良く、観光名所も多く、観光地としては大変人気があったことから、多くの外国人観光客が日本を訪れていました。

政府がインバウンド需要拡大を目指し、訪日外国人数の増加をさせる政策を取って来たこともあり、訪日外国人の数は2015年には約1,973万人であったのが、2019年には約3,188万人まで増えています

訪日外国人数の増加にともない、都心部を中心に宿泊施設が不足し、各地でホテル建設が進みました。ビジネスホテルのようなものから、世界的に有名なブランドのホテルまで、ホテルの客室数は大幅に増加しています。

REIT(上場不動産投資信託)も、それまで、住宅・オフィスビル・商業施設に投資するものが主流でしたが、ホテルに投資するリート「ホテルリート」も誕生しました。

ホテルリートは、オフィスビルのように固定家賃ではなく、ホテルの収益に連動して配当が増減する仕組みから、インバウンド需要を取り込みながら安定して高配当を出し続け、人気の銘柄となりました。

ホテル建設が進んだことは、都内の住宅開発用地と建設資材の値上がりをもたらし、それまで都心の好立地を中心に供給されていた新築ワンルームマンションは、その供給地域が、土地価格が比較的安い、城東地域や横浜に移って来るとともに、価格は全体的に上がり、利回りは低下しました。

更に、宿泊方法はホテルだけでなく、民泊・ウィークリーマンションなど、その形態が広がり、それぞれの目的に応じた不動産が買われたこともあり、インバウンド需要は、日本の不動産投資市場の値上がりの一因となっていました

もちろん、その投資マネーには、海外からの資金も多く含まれています。シンガポールの政府系ファンドやアメリカの大手ファンド会社などが、ホテル、オフィスビル、商業施設などの不動産に積極的に投資をしていました。

投資市場としての日本の魅力はどこにあるのか?

魅力1:法治国家として確立している

日本は、法治国家として、財産権・所有権などが確立されています。法を犯していない限り、保有していた不動産が、突然、没収されることもありませんし、売却した資金を自国に送金することもできます。

外国人の方が、日本で不動産を購入しようとすれば、登記をして、所有権を持てる制度も整っています。実印登録や住民登録も必要ありません。

日本に住んでいる私たちは、このようなことは、当たり前のように感じてしまいますが、世界的を見渡すと、ここまで法整備が整い、投資家の権利を保護している国は、多くありません。

魅力2:インバウンド需要を吸収する環境が整っている

日本は少子高齢化が進み、経済成長率も低いことは事実ですが、インバウンド需要を取り込み、一つの産業としようとしています。

コロナ前の2019年は、訪日外国人観光客によるインバウンド需要は、約4.8兆円(一人当たりの平均消費額は約15.9万円)であり日本経済に大きく貢献しています。

インバウンド需要を取り込める環境が整っていると言えるでしょう。その原因を考えてみました。

  • 治安が良いこと。夜遅くに女性が一人でも出歩ける国は、それほど多くありません。
  • 清潔であること。街は、ごみが落ちていなく、また、きれいに掃除されています。
  • 観光スポットが多く、アクセスが良いこと。山や海、神社仏閣、温泉、スキー場など名所、観光スポットが豊富で、公共交通機関を使って、手軽に行くことができます。
  • 水資源が豊富なこと。水道水を飲むことができる数少ない国です。

日本の不動産への投資を妨げる要因

しかし、海外投資家から見て、日本の不動産が買いにくい要因が存在することも確かです。その要因について紹介していきます。

要因1:地政学リスク

ロシアによるウクライナへの侵攻は、地政学リスクを改めて浮き彫りにしました。

日本は、今は平和で安全な国ですが、北にはロシア、日本海を跨いで中国や北朝鮮と体制が違う国があります。北朝鮮は、ミサイル発射実験を繰り返していますし、中国は軍事力・経済力を背景に、その勢力を太平洋まで拡大しようとしています。

また、日本は自然災害多い国でもあります。地震を始め、近年は、台風や豪雨による被害も大きくなる傾向にあります。

要因2:投資以外の恩恵が少ない

中国人の方に、海外への不動産投資について聞いてみると、意外なことに、日本への投資は優先順位が低いという答えが返ってきます。

カナダなどは、現地に不動産を保有していると、ビザが取得しやすいった恩恵があります。しかし、日本では、そのようなことはありません。

当然、投資での収益も大切ですが、海外に不動産を所有する目的の一つには、資産分散などのリスクヘッジがあります。何かあった場合に、その国に逃げ出すことができるというのも、彼らにとっては、投資目的の一つとなるのでしょう。

カナダやシンガポールを始め、投資と移民をセットで受け入れる体制が整っている国はいくつかありますが、日本政府は、まだそこまでして投資を受け入れようという考えは無いようです。

要因3:個人投資家は資金調達に苦労する

海外のファンドや投資会社などは、不動産投資のために、日本の金融機関から円を調達することができます。

しかし、海外の個人投資家が日本で不動産投資をするために、日本の金融機関から資金を調達することは、なかなか容易ではありません。

現金で購入するような富裕層もいますが、中国のように海外送金に限度額がある国もあります。日本人が海外の不動産を購入するより、海外の個人投資家が日本で不動産を購入するのは、資金調達面が高いハードルとなります。

インバウンド解禁が外国人投資家に与える影響

インバウンド解禁により、観光産業などが息を吹き返すことが期待できる中、更にここ最近の円安で、海外投資家にとっては、日本の不動産に投資しやすい環境になっていると言えます。

ファンドなどの機関投資家と個人投資家では、資金規模や投資目的から、その投資行動が異なることから、別々にその動きを予想してみましょう。

機関投資家は引き続き積極的な姿勢

先月、小田急電鉄が保有・運営する西新宿の「ハイアットリージェンシー東京」が売りに出され、アメリカの投資ファンド「KKR」が優先交渉権を得たとの報道がありました。買収規模は1,400億円規模との情報もあります。

また、アメリカのファンド「ローンスター」が、事件になったシェアハウス「かぼちゃの馬車」1,213棟を1,490億円で購入しているとのニュースもありました。

更には、セブン&アイ・ホールディングスが売却を検討している、「そごう・西武」の買い手とし、外資系のファンド3つが手を挙げています。

このように、機関投資家は、インバウンド解禁前から、コロナ禍によって経営に苦しんでいる日本の企業や不動産を積極的に買う動きを見せています。インバウンド解禁も間近になっている今のタイミングは、彼らにとってみれば、買い時ということなのかも知れません。

おそらく、この動きは、今後も変わらないでしょう。引き続き、機関投資家は積極的に、日本の不動産と不動産を保有する会社に資金を投じて行くことが予想されます。

個人投資家も投資再開する可能性が高い

コロナ禍以前、日本の不動産に投資をしてきたのは、個人投資家としては、台湾・中国・韓国などの富裕層が中心でした。

海外の機関投資家は、日本に支店などの拠点を持っていたことから、コロナ禍でも投資活動を続けていましたが、個人投資家はそのようにはできません。

ロックダウンが続く状況下、投資活動は、ほぼストップしてしまったようですが、インバウンド解禁により人の往来が増えてくれば、投資活動も再開されるでしょう。

但し、中国では、共産党幹部に不動産や株式などの海外不動産を保有している幹部を昇進させない方針を打ち出すなど、地政学リスクから、資産の海外流出を防ぐような動きもあります。

日本の不動産に投資したいという潜在的なニーズは高く、インバウンド解禁で投資も再開されるでしょうが、投資される金額は、各国の政策や経済状況に大きく影響を受けるでしょう。今のところ、予想は難しいところです。

インバウンド解禁を勝ち抜く投資アイディア

インバウンド解禁後の世界と、それに伴う海外投資家の動きを予想し、我々はどのような投資をするのが良いのでしょうか。いくつかアイディアを紹介していきます。

築古のワンルームマンション

築古のワンルームマンションは、築年数が古いだけでなく、部屋も狭く(20㎡未満の物件もあります)、設備も古い(トイレ・バス・洗面所が一体となった、いわゆる三点ユニットです)ことから、投資対象としては、あまり人気が高くない物件です。

しかし、インバウンド解禁になれば、外国人留学生の入居が見込めたり、民泊として外国人旅行客の利用が期待できるなど、運営の仕方によっては、インバウンド需要を上手く取り込み、大きな投資収益をあげることができます。

築古の物件は、価格帯が安いというメリットはあります。300万円くらいのものもありますので、手が出しやすいでしょう。また、都内の物件で、1,000万円を切るものであれば、外国人投資家の現金買いも期待できますので、持っておいても損はないかと思います。

ここ最近の投資のトレンドは、築浅で空室リスクが低い物件でしたが、インバウンド解禁を見据えて、築古に逆張りする投資も有りでしょう。

ホテル型リート

順張りするのであれば、ホテル型リートでしょう。コロナ禍で配当が大幅に減額となったため、一時期大きく値が下がりましたが、大底は脱し、回復途中にあります。

とは言え、まだ、コロナ前の水準まで価格は戻って来ていませんから、インバウンド解禁後の業績の回復を期待して、投資をするのも一つの手だと考えられます。

 

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