モンゴルやカザフスタンなど新興国の不動産プロジェクトを手掛ける「TECROWD」ですが、その利回りの高さから、儲かる投資として人気の高い不動産クラウドファンディングの一つになっています。
今回は、TECROWDについて、ファンドの内容や運営会社を紹介してい行くとともに、不動産投資のプロがどう考えるかを解説して行きます。
TECROWDはどんなファンド?
新興国への投資で高い利回りを実現
TECROWDは、主にモンゴルやカザフスタンなど、アジアの新興国における開発案件への投資をすることで、想定利回りで年利8%以上の高利回りを実現しています。新興国の経済成長を先取りしたファンドと言えるでしょう。
ファンドは国内・新興国、賃貸物件・開発物件への投資といった種類がある
TECROWDは、現時点で合計で30本のファンドを募集しましたが、そのほとんどが、モンゴルとカザフスタンの不動産への投資です。しかし、一部、国内不動産へ投資するものもあります。
モンゴルでは賃貸物件への投資が主で、運用期間は2~3年、カザフスタンは開発案件への投資が主で、運用期間は1年以内となっています。
2021年から運用開始
運用開始は2021年と、まだ運用実績は1年ぐらいと短く、新興国へ投資したファンドでの償還実績はまだないようです。しかし、これまでに30本のファンドを立ち上げており、順調にファンド運用規模を増やしています。
運用会社TECRAが現地企業などと提携してプロジェクトを管理
TECWORLDの運用会社であるTECRA株式会社は、2001年創業で建設業を長く営んでいましたが、その後事業領域を拡大し、2021年4月からクラウドファンディング事業を開始し、2022年2月には、モンゴルの金融会社「インベスコアNBFI」を中核とするインベスコアグループと資本提携しています。
TECRAは建設業のノウハウを持ちながら、インベスコアグループのネットワークを活用し、現地の設計会社などを連携し、現地の不動産プロジェクトをマネジメントしているようです。
TECROWDの運用会社であるTECRA株式会社
TECRA株式会社は、2001年に横須賀で創業した会社で、業歴20年以上を誇ります。創業当初は、内装業を手掛けていたようですが、その後、建設業、不動産開発業と事業を拡大させ、現在では、モンゴル・ベトナム・カザフスタンなどにおいても、コンストラクションマネジメント事業を展開しています。
会社概要
本社 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-1 クイーンズタワーA4F
資本金 1億5,660万円
インベスコアグループと連携したファンド運用
TECRAは2021年4月からクラウドファンディング事業を開始しましたが、海外プロジェクトにおいては、インベスコアグループと連携しています。
賃貸物件への投資であれば、同社のグループ会社が一括借り上げをしていたり、開発案件への投資であれば、許認可取得後にやはり同社のグループ会社が資金を融資して、ファンドを償還するといったストラクチャーになっています。
投資家は円で投資をしますが、海外の不動産への投資ですので、当然、為替リスクは生じるはずです。この為替リスクに関しても、同社のグループ会社が全て負担しているとのことです。
TECROWDは、主に新興国の不動産に投資をしていますが、リスクに関しては、インベスコアグループの信用力に大きく依存していると言えるでしょう。
なお、インベスコアグループの中核会社であるモンゴルの金融会社「インベスコアNBFI」は、現地の市場に上場しています。
TECRAは、2022年2月にインベスコアグループと資本提携し、その関係をより親密なものとしています。
TECROWDへ投資するには
手順1:まずは会員登録
TECROWDに投資するには、こちらのサイトに入り、会員登録することから始まります。
会員登録の流れは、以下の通りです。
- ログイン情報の登録(メールアドレスとパスワード)
- メールアドレス認証
- 投資家登録(個人情報の入力)
- 本人確認(スマホもしくは郵便)
- 審査
- 登録完了
投資家登録と本人確認後、TECRAで投資家審査の作業を行います。この作業に、スマホ申請で1~2営業日、郵便申請で5~7営業日かかるそうです。
会員登録完了には、最低でも1~2営業日かかるようなので、TECROWDへの投資を検討されている方は、あらかじめ会員登録を済ませておくことをお勧めします。
手順2:ファンドへの申し込み
会員登録が完了すれば、ファンドへの申し込みができます。現在、月に1~2本のペースでファンドの募集が開始されていますので、内容を確認の上、マイページから申込をします。
申込が成立し、ファンドの契約が完了すれば、指定先に資金を振り込んで運用スタートとなります。
会員登録からファンドの申し込みまで、スマホで完結させることもできますので、とても簡単に投資をスタートさせることができます!
TECROWDの評判・口コミ
TECROWDは2021年4月から募集を開始し、新興国への投資したファンドではまだ償還実績もないことから、今のところ、評判・口コミは多くありません。
しかし、こちらのサイトは、TECROWDに関する評判や口コミがまとまって記載されていますので、参考にしてみてください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-toushi/32866
TECROWDのメリット
短期間での運用で高利回りを実現
TECROWDの最大の魅力は、利回りの高さでしょう。海外不動産へ投資するファンドであれば、1~3年の運用期間で年率8%以上の想定利回りです。
ここ最近募集したファンド(海外不動産への投資)の概要は以下の通りです。(ホームページの情報をもとに作成)
プロジェクト名 | 国 | 想定利回り | 運用期間 | 募集総額 | 募集期間 |
Three City Towers | カザフスタン | 9.00% | 10ヶ月 | 4.43億円 | 5/19~6/20 |
Three City Towers | カザフスタン | 9.00% | 12ヶ月 | 4.07億円 | 3/24~4/20 |
White House in Chaikina | カザフスタン | 10.50% | 8ヶ月 | 3.20億円 | 2/28~3/31 |
Ambassador Residence | モンゴル | 8.00% | 24ヶ月 | 0.805億円 | 2/17~3/16 |
Ambassador Residence | モンゴル | 8.00% | 24ヶ月 | 0.444億円 | 2/3~2/28 |
大きな為替リスクを負わずに海外不動産への投資ができる
海外不動産に投資をしようとすれば、現地の通貨に両替が必要です。米ドルやユーロであれば、身近な通貨ですが、モンゴルの通貨「トゥグルグ」、カザフスタンの通貨「デンゲ」は初めて聞く方も多いでしょう。
なかなか、自分でこのような通貨を買って、現地の不動産に投資することはできないと思います。できたとしても、米ドルやユーロなどの先進国通貨に比べると、為替の手数料も大きくかかりますし、新興通貨の変動幅も大きくなってしまいます。
しかし、TECROWDは、ファンドからの不動産の投資はインベスコアグループ内で、円でやり取りされることから、投資家は為替リスクの影響を大きく受けないストラクチャーになっているようです。
優先劣後構造の採用によりリスクを軽減
TECROWDは、優先劣後構造を採用することで、一般投資家の元本毀損リスクを軽減しています。
ファンドの資料を見ると、総投資額の約30%を劣後部分として、特定の出資者が投資を行う予定になっているので、一般の投資家にとっては、不動産価格が70%まで減少しても、元本割れが生じないようです。
今のところ競争率がそこまで高くない
不動産クラウドファンディングは、その利回りの高さから、多くの投資家が投資をしたいと考えていることから、抽選制を採用しているファンドが多くあります。ファンドによっては、倍率が10倍以上のものもあります。投資しようとしても、なかなか投資ができない現実があります。
先着順のファンドもありますが、人気のあるファンドは、募集開始とともにクリック合戦になっているようです。
TECROWDも人気のあるファンドですが、まだそこまで注目を集めていません。
ファンド募集期間内に予定金額に達すれば、その時点で募集締め切りにしているようで、抽選制ではないようです。
以前はプロジェクトあたりの金額も小規模であったので、即日完売のようでしたが、現在は、ファンドの規模も大きくなったので、そこまでの状況ではないようです。募集開始から数日以内であれば、投資ができるようです。
TECROWDのリスク・デメリット
海外不動産、特に新興国への投資である
海外は、当然ですが日本とは法律も商習慣も違います。特に新興国ともなれば、急に法律が変わるようなこともあります。また、モンゴルやカザフスタンの周囲にはロシアや中国があり、地政学的なリスクが発生することも考えなければいけません。
当然、新興国として、経済成長が著しいという魅力はありますが、反面、法律・政治などのリスクも同等にあります。
海外不動産へ投資のファンドは償還実績がまだない
TECROWDは昨年4月から運用を開始しています。運用会社であるTECRAは、業歴は長いものの、不動産クラウドファンディングの運用者としての実績は、一年強しかありません。
更に、モンゴルやカザフスタンへ投資したファンドは、まだ償還を迎えた実績がないというのは多少の不安材料にはなるでしょう。
投資は一口10万円と少しハードルが高い
不動産クラウドファンディングは、一口1万円から手軽に投資できるものもありますが、TECROWDは一口10万円ですので、投資初心者にとっては、少しハードルが高い投資と言えるでしょう。
中途換金には手数料がかかる
主なファンドの運用期間は2~3年と短めですが、急に資金が必要になった場合、ファンドの中途換金を申し込むことができます。
契約自体は途中解約することができないので、中途換金は、投資家の地位と譲渡するという方法が取られますが、譲渡価格はファンドの時価を算定して、その価格で行われるため、時価が当初の投資額を下回れば、元本割れとなる可能性もあります(時価が投資金額を上回っている場合は、当初投資金額となる規定があるので、利益が出ることはありません)。
更に、譲渡手数料として、地位譲渡価格の10%の手数料もかかります。
必ずしも地位譲渡ができるとは限りませんので、基本的には、途中で必要となる可能性が無い金額で投資をするのが良いでしょう。
ファンドマネージャーが考えるTECROWDの評価
案件の発掘力・マネジメント力が高い
筆者は以前、ベトナムの不動産に投資する投資信託を購入したことがありますが、そのファンドは、結局、運用期間中、不動産に投資することができませんでした。
その運用会社は、現地の不動産に精通しているとの説明でしたが、実際には、現地で投資する案件を発掘して、更に、現地の法律に熟知したうえで、プロジェクトを進めるのは大変難しいようでした。
しかし、TECROWDは、2021年4月の運用開始以来、僅か1年2ヶ月で新興国の不動産を中心に30本ものファンドが募集されています。更に、カザフスタンにおいては、開発案件を手掛けるなど、難易度が高いものもこなしています。
現地のネットワークが強固であるとともに、TECRAが培ってきた新興国における、高いコンストラクションマネジメント力が背景にあると考えられます。
海外不動産への投資・新興国への投資にはリスクがある
ファンドはインベスコアグループのバックアップにより、なるべくリスクを抑えようしていますが、それであっても、日本の不動産に投資するよりも、高いリスクは生じます。
カザフスタンの開発プロジェクトへの投資は、土地の所有権でなく、借地権ですし、取得価格が適正であるか、投資家としては判断する材料はありません。もちろん、現地を見に行くことも、なかなかできないでしょう。
日本の不動産であれば、現地を見に行くこともできますし、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば、運用会社が不動産をちゃんと所有しているかの確認を取ることができます。
また、新興国は日本と違って、法律や規則が急に変わることもあります。海外送金や両替ができなくなったり、不動産開発の認可が取り消されることだってあるかも知れません。
日本での常識や商習慣が通用しないというリスクは認識しておく必要があります。
新興国への投資利回りとしては標準的
TECROWDは、想定利回りで年率8%以上のものが多く、高利回りを実現していますが、そもそも、モンゴルの政策金利は9%、カザフスタンで13.5%と、日本では想像ができないほど高いものです。
これは政策金利ですので、一般企業が不動産開発のために、それなりの長い期間、融資を受けようとすれば、それより当然高くなります。
運営会社の報酬、為替リスクをインベスコアグループで負担している点を考えれば、ファンドの利回りは高過ぎず、低すぎずといったところでしょう。
ファンドの利回りが高いのは怪しいと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、新興国への不動産投資とすれば、それなりに妥当な水準と考えられますので、利回りが高いから怪しいといったことではないと考えられます。
いわゆるグループファイナンスで償還リスクはある
上記でも触れていますが、ファンドはインベスコアグループの信用力に大きく依存しています。ファンドは、不動産という資産への投資ですが、いわゆるインベスコアグループへの不動産担保付きでの融資といっても良いでしょう。
中核会社はモンゴルの株式市場に上場していますが、2021年12月末時点の時価総額は約120億円と、決して大きいものではありません。
また、格付会社から高い格付を得ているとのことですが、そもそもモンゴルのS&Pによる格付が「B」ですので、当然、先進国に比べれば低くなります。新興国の金融会社としては、格付が高いと考える方が良いでしょう。
同社のホームページから財務諸表なども確認することは可能ですが、英語でしかも現地通貨建ての数字なので、内容を分析することは、なかなか難しいと思います。
現在のファンド規模であれば、インベスコアグループがリスクを吸収できると思いますが、これからファンド規模が大きくなってくると、償還リスクが高くなってくる可能性はあります。
もちろん、不動産ファンドなので、不動産の価値に加えて、インベスコアグループの信用が背景にあることは安心材料にはなります。
海外の不動産の価値やインベスコアグループの財務内容など、運用会社であるTECRAが、今後、積極的に開示していくことが期待されます。
まとめ
TECROWDは、新興国の不動に投資できる、とても珍しい不動産クラウドファンディングです。インベスコアグループの信用力を使うことで、為替リスクなど、投資家のリスクを軽減させる手段も講じています。
また、利回りが高い割には、ここのところは、クリック合戦にもなっていないので、それなりに時間に余裕を持って投資できるファンドです。
ただし、新興国への投資は、それなりのリスクが伴います。そのリスクを考えれば、ファンドの利回りが高くなるのは当然のことです。リスクを取ってでも、高い利回りに挑戦したい方向けのファンドと言えるでしょう。
クラウドファンディングは、元本が保証されるものでありません。更に、TECROWDは主に新興国への不動産プロジェクトに投資します。
こういうタイプの投資にリスクを感じるのであれば、国内不動産に投資するクラウドファンディングやREIT(上場不動産投資信託)への投資をお勧めします。
もしくは、もう少しタイミングを待って、先行しているファンドの償還状況を確認してから、投資をするのでも良いかも知れません。
個人的には、投資物件の出口戦略が、グループ内のファイナンスに頼っているものより、外部売却する方に投資をしたいと考えています。
投資に無理は禁物です。投資判断は慎重に行うようにしましょう!!