登録免許税は、不動産の所有権移転をはじめとした登記申請をする際にかかる税金です。不動産の売買、相続、贈与それぞれの場合について、登録免許税の計算方法と軽減措置について解説していきます。
はじめに
投資用不動産やマイホームを購入する場合、不動産取得税や固定資産税、都市計画税など、土地や建物などに対していくつかの税金を納めなければなりません。登録免許税もその1つです。
登録免許税は、建物や土地といった不動産の名義を自分の名義に変更するときや、不動産投資・住宅ローンの抵当権(担保)を設定するときなど、登記の際にかかる税金です。登録免許税は登記の対象や種類・取得方法などによって、かかる税率も異なります。
投資用不動産やマイホームを購入する予定がある人なら、基礎知識として登録免許税について知っておくことをおすすめします。登録免許税のしくみや費用知ることで、購入の際に発生する負担の軽減になります。
登録免許税の仕組み
登録免許税とは、土地や建物などの「不動産の所有権を移転する際にかかる税金」のことです。不動産を購入したり相続したりする際には、不動産登記をして登録免許税を納付することで、その不動産の所有者を示すことができます。このとき登録免許税を支払うのは、新たに所有者となる人です。つまり、不動産を購入した人、または相続する(自分名義にする)人になります。
本来、不動産の権利関係は登録の義務はありませんが、登記のない不動産は自分の所有権を主張することができません。そのため、登記は自分の所有権を示すために必要な手続きといえます。
登記の情報がまとめられたものを登記簿といい、登記簿は、表題部と権利部で構成されています。表題部には所在地や面積、構造などの不動産の基礎情報が記録されているのに対して、権利部には不動産に対する権利関係が記録されています。
登記の種類
所有権の保存登記
建物を新築した場合に所有者の情報の登記が必要になります。
所有権の移転登記
売買や相続、贈与などをして土地や建物などを取得した場合、前の所有者から自分に所有権が移転します。この際に必要なのが、所有権の移転登記です。
抵当権の設定登記
登録免許税は、抵当権の設定登記、抹消登記に対しても同様にかかります。抵当権とは、金融機関が住宅ローンの融資をする際、不動産を担保にして、万一返済が滞ったときに優先的に貸付金(債権)を回収するための権利です。なお、設定登記は住宅ローンを利用するときに、抹消登記は住宅ローンを完済したときに行います。
ちなみに、土地と建物の両方を登記するときには、土地と建物の登記簿が違うため、登録免許税はそれぞれ両方に対してかかるので注意が必要です。ただし、分譲マンションの場合は、区分法所有法 により、土地と建物の権利は一体となっているため、土地と建物の登記も同一となります。
なお、登録免許税の税率は、登記する不動産の内容によって異なり、売買、相続、贈与、抵当権ではそれぞれかかる税率が変わることも覚えておきたい点です。
登記の手続き
登記の手続きは、原則、土地や建物の引渡しと同時に行われます。不動産投資ローンや住宅ローンを利用する場合は、金融機関に代金を振り込む際、抵当権設定登記を行うと同時に、所有権の移転登記の手続きを行います。
手続きの流れは、まず、金融機関の一室に関係者が集まり、不動産の引渡しと代金の支払いを行う「同時決済」をします。次に、法務局へ移動し、登記手続きを行います。登録免許税は、法務局で納付します。
不動産売買の際の登記手続きと登録免許税の納付は、不動産会社から依頼された司法書士が不動産購入者の代理人として行うのが一般的です。
登記手続きを司法書士に任せる場合でも、予算をしっかり把握するために、登録免許税を自分がいくら納付するのか事前に確認しておくことをおすすめします。
登録免許税の計算方法
土地の所有権の移転登記の場合
土地を購入し、所有権の移転登記にかかる登録免許税は、土地の不動産評価額(固定資産税評価額)に対して一定の税率を乗じて決まります。なお、マンションを購入した際も、自身の土地の持分に対して登録免許税がかかります。
土地の不動産評価額とは、不動産にかかる税金を算出するときに基準となる価格で、各市町村によって定められています。一般的に、不動産広告に載る公示価格の6~7割が目安となります。
不動産の所有者は、毎年4月下旬ごろ送られてくる納税通知書で不動産評価額を確認することができます。また、不動産の所有者や不動産の相続人は、役所で不動産評価額を確認することも可能です。
<不動産評価額が1000万円の土地を登記した場合の登録免許税>
移転方法 税率 登録免許税
売買 2% 1000万円×(税率)0.02=20万円
相続 0.4% 1000万円×(税率)0.004=4万円
贈与 2% 1000万円×(税率)0.02=20万円
建物の所有権移転登記の場合
建物も、土地と同様に不動産評価額に対して税率がかけられ、登録免許税の額が決まります。
<不動産評価額が800万円の建物を登記する際にかかる登録免許税>
移転方法 税率 登録免許税
売買 2% 800万円×(税率)0.02=16万円
相続 0.4% 800万円×(税率)0.004=3万2000円
贈与 2% 800万円×(税率)0.02=16万円
なお、土地、建物の名義を自分のものとする登記のうち、初めて登記する場合は「所有権保存登記」となります。市街地の土地の場合、所有権保存登記はあまりなく、「所有権移転登記」を行うのが一般的です。建物の場合、新築物件は全て初めての登記になるため、一般的に所有権保存登記を行います。所有権保存登記の場合、税率は土地、建物ともに0.4%です。
不動産投資ローン・住宅ローンのための抵当権設定登記
抵当権設定登記の登録免許税は、通常の抵当権なら、借入額に0.4%をかけることで求めることができます。
<ローンが3000万円である場合の抵当権設定登記にかかる登録免許税>
ローン額(3000万円)×税率(0.004)=12万円
登録免許税の軽減措置
土地の登録免許税についての軽減措置
2021年の税制改正によって、令和5年(2023年)3月31日までに売買により土地の所有権移転登記をする場合、登録免許税の税率が2%から1.5%に軽減されます。
土地の課税標準 税率 登録免許税
軽減措置なし 1000万円 2% 20万円
軽減措置あり 1000万円 1.5% 15万円
(※2022年1月12日現在)
建物(住宅用家屋)の登記についての軽減措置
建物の取得にかかる登録免許税にも、軽減措置がとられました。令和4年(2022年)3月31日までに行われた住宅用家屋の登記には、軽減措置が適用されます。これは初めての登記(所有権保存登記)か、2回目以降の登記(所有権移転登記)かによって軽減税率が異なります。
抵当権設定登記についての軽減措置
令和4年(2022年)の3月31日までに、個人が自ら居住するための住宅用の家屋を新築(増築を含む)または取得するための資金の貸し付け(住宅ローンの利用)に係る抵当権設定登記をする場合、税率が0.4%から0.1%に軽減されます。
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合の優遇措置
認定長期優良住宅とは、長期間快適に暮らせる建物として認定を受けた物件のことです。認定低炭素住宅とは、生活や活動に伴って発生する二酸化炭素の排出の抑制される建物として認定された住宅のことを指します。これらの建物は、一般住宅よりもさらに優遇を受けることができます。
所有権保存登記の場合の軽減措置
軽減措置の適用期間内に所有権保存登記をした場合、一般住宅は0.15%、認定長期住宅と認定低炭素住宅は0.1%に税率が軽減されます。
所有権移転登記の場合の軽減措置
所有権移転登記の場合、一般住宅は0.3%、認定長期住宅と認定低炭素住宅は0.1%に税率が軽減されます。
軽減措置を受けるための要件
上記のような軽減措置を受けるには、所有権保存登記、所有権移転登記の内容が以下の要件を満たしている必要があります。
[ 1 ] 自分が住むための住宅であること
[ 2 ] 登記簿上の床面積が50m2であること
[ 3 ] 新築または取得してから1年以内に登記していること
[ 4 ] 発行される住宅用家屋証明書があること
[ 5 ] 中古住宅については、築20年超の非耐火建築物(たとえば木造の一戸建て)、築25年超の耐火建築物(たとえばマンション)の場合、「耐震性を有することの証明書」があること
なお、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は、上記要件に加えてそれぞれの認定基準を満たしている証明書が必要です。
不動産購入時・購入後にかかるそのほかの税金
印紙税
印紙税は、経済取引に際して取り交わされる特定の文書に課税される税金です。不動産の取得では、売買契約書や住宅ローンを借りる際に交わす金銭消費貸借契約書に印紙税がかかります。
消費税
新築マンションや一戸建てでは、建物に消費税が課税されます。ただし、土地の売買は非課税扱いのため、消費税はかかりません。
固定資産税・都市計画税
固定資産税は、不動産の所有者に毎年課される税金です。地域によって(都市計画区域に指定された地域)は都市計画税も一緒に課税されます。
不動産取得税
不動産取得税とは、マンションや一戸建てなど不動産を取得した際にかかる税金のことです。登録免許税と同様、土地と建物、それぞれに税金がかかります。
贈与税
贈与税は、個人や法人が自分(自社)以外の個人または法人から財産を譲り受けたときに課せられる税金です。住宅購入資金として両親や祖父母から援助を受ける場合、金額によっては贈与税が発生する可能性があります。