サラリーマンも資産管理会社を設立すべきか?節税方法から設立方法までを徹底解説!!

富裕層が資産管理会社を設立して、自分の資産(不動産や株式など)を資産管理会社で管理しているのは、どのようなメリットがあるからでしょうか?

資産管理会社は富裕層のものだけではありません。副業や資産運用している方であれば、サラリーマンであってもメリットがある場合もあります。

ここでは、資産管理会社のメリット・デメリット、活用方法、設立・維持に関するコストなど、資産管理会社に関する全般的なことを解説して行きます。

資産管理会社とは

資産管理会社とは、不動産や金融商品(株や投資信託など)などの資産を所有している人が、自分や家族の資産を管理することを目的として設立する会社法人のことを指します。

株式会社や合同会社などを設立しますが、その設立手続きなど基本的には通常の会社と同じです。しかし、会社の目的はオーナー自身の資産管理であり、通常の会社とは違って営業活動をしません。そのため「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

資産管理会社を活用するメリット

では、資産管理会社を設立するメリットはどこにあるのでしょうか。

メリット1:節税効果

所得税に関しては、個人と法人では税率が異なります。

個人の所得税は累進課税ですので、収入が増えるほど大きくなり、所得税と住民税を合わせて最大で約55%となります。それに対して、法人の実効税率は最大約33%ですので、所得が多い場合は、法人で収入を得る方が税率を抑えることができます。

メリット2:経費項目が個人より多い

なんでもかんでも、会社であれば経費として計上することはできませんが、経費の自由度は上昇します。

不動産投資をしているのであれば、物件調査のための交通費や出張費も経費計上が可能です。資産運用をしているのであれば、パソコンや回線利用料なども経費となります。そのほか、車両や維持費も経費となる場合があります。

また、生命保険は、個人の申告であれば金額の上限がありますが、法人には上限がありません。更に、自宅が賃貸の場合は、資産管理会社に一部を負担させることもできます。

経費の範囲に関しては、後で税務調査が入って否認されるようなことがないように、税理士に相談の上、上手に活用しましょう。

メリット3:赤字の繰越控除の期間が個人より長い

個人でも法人でも、赤字の繰越控除が認められています。繰越控除とは、当年の損失を翌年以降に繰越し、翌年以降の利益と損益通算できる制度のことですが、個人では最長3年間繰越せるのに対し、法人では最長10年間まで繰越しすることができます。

法人は赤字であっても、住民税の均等割が発生するデメリットがありますが、受取利息で源泉徴収された税金が一部還付を受けることができるメリットもあります。

メリット4:所得を分散することができる

個人が保有する資産からの所得であれば、、本人のみしか受け取ることができませんが、資産を資産管理会社が保有すれば、家族を役員とすることで役員報酬という形で本人のみが受け取っていた所得を家族に分散することができます。

本来であれば、110万円以上の現金を家族に渡す場合は贈与税が発生しますが、役員報酬は贈与税の課税対象ではないことから、税率の低い所得税の課税対象として現金を渡すことができ、更に、報酬は経費計上することが可能です。

資産管理会社が相続対策になる理由

上記のメリット以外にも、資産管理会社に相続対策となるメリットがあります。その理由を解説します。

理由1:早めの現金相続

個人の所有財産を生前贈与すると、最高で55%の税率が課される可能性があります。しかし、資産管理会社から役員報酬や給与という形で親族にお金を支払れば、金額にもよりますが、低い税率の所得税・住民税しかかからなくすることが可能です。

早めに親族に財産を渡してしまうことのデメリットもありますが、親族に移転した資産は、相続税の納税資金ともなることから、相続時に自宅や他の資産を物納して手放すような事態を避けるためにも役立ちます。

親族への報酬は、資産管理会社の経費として計上できますので、資産管理会社の法人税を安く抑える効果もあります。

理由2:遺産分割の簡易化

個人が不動産を保有している場合、相続が発生すると、その不動産をどのように分割して相続するかの問題が発生します。一部の相続人は不動産で、一部の相続人は現金でということになれば、評価方法ももめる原因となります。

しかし、資産管理会社で保有していれば、その株式を相続することになるので、相続手続きが簡単になり、相続時の争いが起きにくくなります。

理由3:相続税評価

資産管理会社は、同族の非上場会社であり、その株式の相続税評価方法は、3種類の方法があります。1つ目は類似業種比準価額方式、2つ目は純資産価額方式、3つ目は1と2の折衷方式です。

保有資産の内容などにもよりますが、場合によっては、個人が現物資産で相続するよりも、低い評価となる場合もあります。

その逆もあり得ますが、法人化することで、個人よりも相続対策のバリュエーションは増えますので、税理士などの専門家のアドバイスのもと、時間をかけて対策することができます。

資産管理会社のデメリット

これまで資産管理会社のメリットを解説してきましたが、当然、デメリットもあります。メリットとデメリットを比較したうえで、資産管理会社を設立するか判断すべきでしょう。

デメリット1:資産管理会社設立・維持にはコストがかかる

資産管理会社の設立、維持に関するコストについては、以下で詳細に解説しますが、設立で15~30万円、維持で年間10~30万円かかります。しかも、法人税の均等割は赤字あっても課税されます。

デメリット2:融資を受けるのに時間がかかる

投資用の不動産を購入する場合、個人であれば、融資が借りられる状態であっても、新設した法人ですと融資が受けにくい場合があります。金融機関によっては、決算書3期分揃ってからということもありますので、不動産購入でローンを考えている方は、事前に金融機関にローンの利用について相談するべきでしょう。

デメリット3:資産管理会社から資金を受け取るには税金がかかる

資産管理会社の資金を個人で受け取る場合は、役員報酬や配当として支払う必要があります。受け取ると総合課税となります。また、会社側も配当であれば、税引き後からの支払いです。

デメリット4:廃業するにもコストがかかる

やっぱり資産管理会社は自分に合わないということで、廃業を選択する場合、会社をそのままにしておくことはできません。会社を清算するには、税務申告手続きが2回、登記が2回必要となり、設立よりも経費がかかります。

資産管理会社設立・維持に関するコスト

資産管理会社の設立と維持には、それなりのコストがかかります。ここでは、それぞれに分けて解説して行きます。

コスト1:設立コスト

会社設立には、自分でその手続き行えば、登録免許税などで済みますが、司法書士に全てをお任せする方が多いでしょう。司法書士報酬も含めたコストですが、15万円~30万円程度が必要になります。司法書士によって報酬も違いますし、資本金の額や会社の形式(合同会社・株式会社など)によって、コストも変わって来ます。

コスト2:維持コスト

管理会社は、設立後に税務署への届け出をする必要がある他、毎年、決算を締めて法人として確定申告をして納税する必要があります。そのほか、取引内容によっては、源泉税や消費税を納付するなど、税に関する諸手続きは、思いのほか発生します。

これらの手続きを全て税理士にお任せすれば、最低でも年間10万円程度は必要になります。全て自分で手続きする方もいらっしゃいますが、税務上のことで間違えがあるといけないので、税理士に任せる方が無難です。

さ法人であれば、住民税の均等割は赤字であっても課税されます。地域、資本金、従業員数によって金額は異なりますが、東京都であれば、最低約7万円は納付する必要があります。

更に、住所変更、会社の目的の変更、役員の再任(最低でも10年に一度は行う必要があります)など登記事項に変更があり、司法書士に変更登記を依頼すれば、2~3万円は必要になります。

資産管理会社の本社は、わざわざ外に事務所を借りずに、自宅と同一にし、事務所家賃を発生させない方も多くいらっしゃいます。しかし、自宅が賃貸物件の場合は、オーナーさんや管理会社に前もって了解を得る方が良いでしょう。

税務手続きを自分で済ませるか、税理士に任せるかで金額は異なりますが、住民税の均等割もありますので、資産管理会社の年間維持コストは10万円~30万円とみておく方が良いでしょう

資産管理会社の設立・運営の流れ

資産管理会社の設立手順ですが、これは一般の会社設立と同じ手続きを取ります。資産管理会社だからといって特殊な手続きがある訳ではありません。

会社設立については、自分でもできないことはないですが、司法書士に依頼して任せるのが良いでしょう。任せるにしても、自分で決めなければならないことは、いろいろとあります。

社名

まずは、会社を「株式会社」か「合同会社」にするか決めなければなりません。それほど違いはありませんが、設立費用は合同会社の方が安く済みます。ただ、あまり馴染みがないので、見栄えを気にするのであれば、株式会社でしょう。

社名については、他社の商標権を侵害していたり、他と間違えやすいものは避けて、自由につけることができます。資産管理会社ですと、イニシャルなどが良く見られます。

社名が決まりましたら、実印などの印鑑を作りましょう。設立のための書類には、印鑑の押印が必要です。実印一種類だけでも良いですし、実印と銀行印の2種類を作る方もいます。

本社所在地

だいたいの方が自宅にしています。自宅が賃貸の場合は、オーナーさんや管理会社に前もって了解を得る方が良いでしょう。会社宛の郵便物が税務署などから届きますので、ポストに会社名を表示しておく方が間違いはありません。

資本金

資本金は1円から設定可能です。あまり少ないとすぐに債務超過になってしまいますので、金融機関からの融資を受けることを考えている場合は、300万円~500万円くらいからスタートするのが良いでしょう。あまり大きな金額になると住民税の均等割が高くなるので、注意が必要です。

資本金の額が決まったら、資産管理会社が口座を開設する銀行を決めて、資本金払い込みのための口座開設の手続きを店頭窓口で行います。

出資者

出資者は自分だけの方もいますし、家族を入れる方もいます。資産管理会社ですので、外部の方は入れない方が良いでしょう。

会社の目的

会社の目的については、司法書士に資産管理会社を作りたいと言えば、「有価証券の取得・運用」など適当なものを提案してくれます。

役員

役員は自分だけでも構いません。もし、家族に給与(役員報酬)を支払うのであれば、役員に入れることもできます。ただし、役員報酬を支払うことができるのは、一般的に18歳以上と言われていますので、その年齢未満のお子さんは役員にしない方が良いでしょう。

また、年間100万円を超えて報酬が発生すると、住民税が発生したり、更に金額が上がれば、配偶者控除が適用外になったり、更に、社会保険への加入義務が発生しますので、注意が必要です。

決算月

決算月はいつでも設定できます。通常は12ヶ月のうちの月末とします。ここで決算を締めて、その2ヶ月以内に申告と納税を行います(3ヶ月に延長可能です)。1~3月を決算月にする会社も多く、更に、2~3月は個人の確定申告の手続きもあり、税理士・税務署とも繁忙期となるため、この時期を避けるという手もあります。

会社設立が完了したら

会社設立には、だいたい2~3週間はかかります。

設立が完了したら、まずは、法人設立届出書を設立から2ケ月以内に、税務署に提出する必要があります。自分で提出することもできますが、この時点で確定申告を依頼する税理士を決めて、税理士に全てお任せするのがお勧めです。

ファンドマネージャーからのアドバイス

では、サラリーマンであっても、どれくらいの所得があれば、資産管理会社を設立するのが良いのでしょうか?

法人と個人の所得税が同じ率になる所得が損益分岐点とはなりますが、総納税額は、資産額や経費の内訳など、さまざまな要素が絡み合って決まりますので、個人の課税所得が700万円を超えたぐらい、つまり課税所得が700万円ですので、給与所得では、もう少し多い1,000万円ぐらいになってきたら検討するのが良いでしょう。

また、投資用不動産を複数保有しようと計画していたり、株式や債券などの運用資産が2,000万円を超えそうであれば、検討の余地はあると思います。

資産管理会社は設立と廃業で100万円近くの経費はかかりますので、税理士などと相談して慎重に進めるようにしてください。

しかし、これからの時代、サラリーマンが副業するのが当たり前になってくれば、ある程度の年収や資産がある方、また、それに近い方は、資産管理以外の目的にも、自分の会社を持つ時代がやって来るかも知れません。

まとめ

資産管理会社を活用することで、節税や相続税対策などのメリットを得ることができます。その反面、経費もそれなりにかかりますので、年収1,000万円を超えてきたら、自分の収入や資産の状況について、今後の予測も合わせて、税理士などの専門家に法人化について、一度相談してみることをお勧めします。

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